Vol.3 No.2 2010
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研究論文:学問分野を超えた「システムデザイン・マネジメント学」の大学院教育の構築(神武ほか)−125−Synthesiology Vol.3 No.2(2010)査読者との議論 議論1 全体コメント・質問(小林 直人:早稲田大学研究戦略センター)本稿は、2008年度慶應義塾大学に新たに開設されたシステムデザイン・マネジメント研究科(SDM研究科)について、その創設のための基本コンセプトやその仕組み、カリキュラム構成など他には見られないユニークな特徴を紹介しています。また、この取り組みは社会的な問題解決のために従来のディシプリンを越えて複数ディシプリンを統合するとともに、それについて実践的な教育を行うという新たな魅力的な試みの例であり、本稿は社会的にも・教育的にも非常に有意義な報告となっています。しかし、その一方で、初稿を研究論文としてみた場合、いくつかの不足している点があります。まず、この度のSDM研究科開設の経緯等はよく理解できますが、この論文の著者がそのプロセスの中で何を果たしたのかが不明です。大学自体や新たな研究科(あるいはその準備組織)が行ったことは概ね理解できますが、その中で具体的に著者が実施したことが、SDM全体の設計や構築なのか、あるいはより部分的な活動たとえば「5.2 学生による評価」、「5.3.3 実業界や海外機関との連携」などなのか、明確にしていただければと思います。また、その上で、本論文で論考し主張すべき内容を、整理して記述することが必要だと思います。そこで、本稿をシンセシオロジーの研究論文とするためには、①まずSDM研究科開設にあたって著者は何を行ったのかを明らかにし、②(執筆要件にも書かれているように、)、本研究の研究目標、シナリオ、要素の選択とそれらの構成・統合、結果の評価と将来展開、などを記述し論考を完結していただきたく思います。研究論文とするには、たとえば以下のことが考えられます。(例1)複数のディシプリンを統合した新たなSDM研究科の構成方法に主眼を置く考えかた(この場合は著者が研究科開設の中心的役割を果たしたことが必要です。)1. 研究目標:「新たに開設したSDM研究科の構成方法の発展」など。2. シナリオ:これまでのSDM研究科・SDM学の構成方法の論考を行うことにより、今後のカリキュラム改編などを通して、真のSDM学と教育の構築に向けたシナリオを記述。3. 要素の選択とそれらの構成・統合:SDM研究科開設にあたって、SDM学が必要とする複数のディシプリン(要素)を何故選択し、それらを全体として統合する方法をどのように作り上げて行ったか、を記述。4. 結果の評価と将来展開:上記判断を基に「木を見て森も見る」SDM研究科の教育・研究コンセプトは徹底されたかどうかの検証を述べる。もし、所期の成果が未達成の場合はその達成のための改善策を提示し、達成された部分はさらなる発展のための課題を記す。(例2)SDM研究科の理念・実践の検証に主眼を置く考えかた(この場合は著者が検証・評価の中心的役割を果たしたことが必要です。) コメント・質問(赤松 幹之:産総研ヒューマライフテクノロジー研究部門)初稿では、全体として研究科の紹介の印象が強く、論文としての主張点が明確になっていないようです。構成学として伝えたいことを明確にして、それに関係しない部分は省略するなどして、ポイントが読者に伝わるように工夫していただきたいと思います。シンセシオロジーの論文としては、事実の列挙に留まることなく、全体の取り組みをシナリオとして記述していただきたく思います。例えば、システムデザイン・マネジメント研究科のカリキュラム作り、実際の学生教育、その教育の成果、という全体のプロセスを、どのような狙いや意図に基づいて、どのように具体化していったのか、さらに、学生達による具体的な成果を見て、それによって何を学生が獲得したと判断したのか、といった狙いと事実とその解釈を明確にして記述していだくことが、読者への多くの有益な情報提供になると思います。回答(神武 直彦)狼がこのSDM研究科設立の提案者であり、設立のおよそ10年前から国際調査や設立準備を行ってきました。また、前野、西村は、設立当時からの教員であり、前野はSDM研究科開設の全体構想と主にソーシャルスキル系科目の教育研究カリキュラム、西村は主に技術系科目の教育研究カリキュラム構築の中心的役割を果たしました。最後に、神武は、産業界からの立場として開設前から関係があり、設立1年後にSDM研究科に加わった教員です。本研究においては、新たにSDM研究科に加わった立場で、SDM研究科におけるインタラクティブな講義の遂行や国際連携、SDM研究科における教育成果の分析や検証、考察を行っています。 そのため、研究論文とするために、(例1)のような流れでの論文として、本研究の研究目標、シナリオ、要素の選択とそれらの構成・統合、結果の評価と将来展開について、記述しました。新たに作成した図1がそのシナリオであり、我々の取り組みに特に関係のある利害関係者(ステイクホルダー)との関係を明記することで、我々の取り組みと社会との関係を説明しました。その上で、そのシナリオをどのように具体化し、現状どのような成果が出ており、今後解決すべき課題はどのようなものか、などについてその事実と解釈を記述しています。論文全体の記述を大幅に変更しました。議論2 タイトル、サブタイトルコメント・質問(赤松 幹之)初稿のメインタイトルが「学問分野を超えた「システムデザイン・マネジメント学」の大学院教育」となっていますが、構成学の論文タイトルらしさが足りないと思います。SDM自体が構成学であるとともに、教育システムを作ることも構成学だと思いますので、例えばタイトルは「...大学院教育の構築」として、サブタイトルは「大規模・複雑システムの構成と運用ができるリーダーの育成を目指して」など、両方の観点で構成学の論文であることを明示できるタイトルをご検討ください。回答(神武 直彦)ご提案下さいましてありがとうございます。本論文の具体的な内容が推察できるように、タイトルおよびサブタイトルを以下のようにしました。学問分野を超えた「システムデザイン・マネジメント学」の大学院教育の構築-大規模・複雑システムの構築と運用をリードする人材の育成を目指して-議論3 システムデザイン・マネジメントのカリキュラムの狙い、ポイントコメント・質問(赤松 幹之)表1で示された大学・大学院への期待に対応して、獲得すべき能力としてA)からC)にリストで示された能力を設定したとありますが、これらのポイントを説明いただけませんでしょうか。また、同様に表2に能力と科目とのマトリックスがありますが、カリキュラムの選定の考え方、講義におけるポイント、教材の選定など、システムデザイン・マネジメント学を学ばせるための工夫がどういったところにあったのかを明記いただきたいと思います。回答(神武 直彦)表1および、4.1項A)からC)で記述しましたリスト、表2の関係について不明瞭な点、冗長な点がありましたので、その関係を明確にするとともに、学生が獲得すべき能力および知識についてそれぞれの関係を含め記述を追加修正しました。なお、学生が獲得すべき能力および知識は、修正後の論文における3項のA)からF)にあたります。表1に記述した日本経団連教育問題委員会によるデータのみならず、SDM研究科開設前に実施した社会・産業界100社以上へのインタビューで得られた知見も踏まえ、設定しました。

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