Vol.3 No.2 2010
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研究論文:学問分野を超えた「システムデザイン・マネジメント学」の大学院教育の構築(神武ほか)−123−Synthesiology Vol.3 No.2(2010)深い知識や高度な専門能力を向上させるための教育も重要であるため、その能力も他の能力と同時に向上させることができるようなカリキュラム作りを更に検討中である。学生毎に専門性が大きく異なるため、講義科目によっては、受講する学生の能力や知識レベルに大きな開きがあることも課題である。現在は、能力や知識レベルの高い学生に合わせた講義を行い、別途、その科目に関する補講を行うことで対処している。4.6 外部評価2008年度末の時点で、外部評価委員5名の方からSDM研究科開設1年経過後の外部評価をしていただいた。その結果、新たな教育に対する高い評価を得た一方、以下のような改善点も指摘された。開設後1年を経たSDM研究科による成果の産業界との更なる連携、講義を既に受講した学生の講義メンターとしての採用といった学生に主体性を持たせる教育の仕組み作り、視野を広く持ちつつ個々の本質も見極める「木を見て森も見る」SDM研究科の教育・研究コンセプトの徹底、等である。それぞれの指摘を踏まえ、既に教育の向上を目指した改善を実施している。産業界との更なる連携については、例えば、ALPSにおいて、チームの提案次第では産業界と連携して実用化できるようにする、といった仕組み作りについて検討と調整を進めている。また、各講義で対象とする課題を産業界における課題と一致させ、その講義を経て創出された提案を課題提供企業にフィードバックする仕組みも検討している。5 まとめ技術システムから社会システムにわたる様々な大規模・複雑システムの構築と運用をリードする人材の育成を目指して開設したSDM研究科は、2010年3月に初めて修了者を出す。学生や外部評価委員の方による評価から、我々が大学院開設時に設定した大規模・複雑システムを扱うために学生が身につけるべき能力および知識を学生に身につけさせていると判断できる。特に、多様な人材によるグループ学習やグループ討議を重視する教育カリキュラムによって、システマチックに社会要求を明確化し、その上でアイディアを創出し、確実に具現化するための考え方や手法を多くの学生が身につけていることを修士研究等の学生の成果物から確認している。一方、学生毎に高度な専門能力を向上させるための教育カリキュラムの拡充や、学生毎に専門分野が大きく異なることに起因する講義科目毎の学生の能力や知識レベルの開きに対する対処は今後の課題であるが、教育カリキュラムの更なる改良や、社会・産業界や関連教育研究機関、大学・大学院との連携の更なる強化が有効であると考えている。また、今後、修了者の卒業後の社会・産業界での成果を追跡調査し、SDM学の大学院教育の成果や課題をより具体的に検証、評価することによって、独自の大学院教育の更なる向上を図ることができると考えている。6 謝辞本研究の一部は文部科学省グローバルCOEプログラム「環境共生・安全システムデザインの先導拠点」の援助により行われ、SDMの教育の一部はグローバルCOEプログラムの若手研究者育成のために利用した。記して謝意を表する。また、創設時よりSDM研究科開設に尽力された浦郷正隆氏、小木哲朗氏、佐々木正一氏、白坂成功氏、高野研一氏、手嶋龍一氏、当麻哲哉氏、中野冠氏、春山真一郎氏、日比谷孟俊氏、保井俊之氏、故石井浩介氏、Olivier de Weck氏に深く感謝する。用語説明ファカルティ・ディベロップメント(faculty development):教員が授業内容やその方法を改善、向上させるための組織的な取り組みのこと。スパイラルアップ(spiral up)型:計画を立て、それを実行し、検証し、改善点をまた次の計画へ盛り込むといったPDCA(Plan-Do-Check-Action)のサイクルを回しながら、目標に向けて活動することにより、直線的ではなく、らせん状の軌跡で目標を達成するやり方のこと。Vモデル:(V-model):要求分析から運用、廃棄までのシステム開発ライフサイクルを記述するための枠組みのこと。V字型に表される概念図の左側は要求が設計によって細分化され、下位の要求になることを示し、右側は試験と組み立てによってシステムが統合されていく様子を示している。アーキテクティング(architecting):コンセプトを具現化し、機能を要素に割り当て、要素の間の関係性(インタフェース)を明確化すること。フリーシーティング(free seating)型:個々の学生に特定の座席は用意されず、先着順もしくは事前予約によって座席や居室を利用する仕組みのこと。コンカレントデザイン(concurrent design):システムの開発において、企画から運用、廃棄にいたるシステムのライフサイクルの全フェーズに関連する部門の担当が集まり、諸問題を討議しながら協調して同時並行的に作業にあたるデザイン手法のこと。コールトリアージ(call triage):救急通報の際、通報者からの伝達情報に基づいて傷病者の緊急度・重症度を判断し、出動の必要性を判断する仕組みのこと。横浜市が2008年10月1日から開始した。用語1:用語2:用語3:用語4:用語5:用語6:用語7:
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