Vol.3 No.2 2010
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研究論文:学問分野を超えた「システムデザイン・マネジメント学」の大学院教育の構築(神武ほか)−121−Synthesiology Vol.3 No.2(2010)得られる仕事をしたい若者のニーズを満たし、かつ、持続可能なビジネスモデルを構築したことがこの提案の強みである。この提案を導き出すために、このチームは、ALPSで得た手法や知識を基に、市場調査、ステークホルダーへのアンケート、インタビュー、テストプラントによるプロトタイピングを経て実現性の検証を行った。その結果、東京都および東京都中小企業振興公社主催の「学生起業家選手権」で優秀賞および日刊工業新聞社主催の「キャンパスベンチャーグランプリ」で関東経済産業局長賞を受賞した。現在、チームメンバーに数名の学生を加え、事業化に向けての検討と自治体や関係企業との調整を進めている。SDM研究科の教育によって、実社会からの要求を抽出し、システムの構想から運用、廃棄までのライフサイクルを考慮したデザインを行う能力を獲得した一例である。また、ALPS以外の多くの講義においても、グループ学習やグループ討議を重視するSDM研究科のコンセプトが有効であることを確認した。すなわち、多様なバックグラウンドを持つ学生同士が相互にそのバックグラウンドを理解し合うとともに、講義で得た知識を共有化するための議論がなされ、その上で、協調して課題に取り組むトレーニングを頻繁に行い、高い教育効果を得た。4.2 複数のディシプリンの連携による教育教員同士の連携による単一のディシプリンの枠を超えた講義を様々な形で実現すると共に、受講する学生からのフィードバックを得た。一例としては、社会科学系の専門性を持つ教員を中心とする研究グループが扱っている「コールトリアージ用語7緊急救急システム」に対し、技術系の専門性を持つ教員が連携して「システムのシミュレーション技法」の講義を行い、シミュレーション技法を用いたシステム設計や検証を実施している。その上で、技術的、社会科学的な側面において、このシステムの改善について分析、検討を行っている。例えば、技術的に最適な解決方法を実現する場合に課題となる法的な制約や、現状の法的な制約の中で技術的に解決できることの限界について、従来よりも具体的、専門的な議論が可能になった。従来関係することが少なかったディシプリンの連携によって効果的な教育を行なうことができていると言える。また、「システム生命論」では、生物の環境適応性に学ぶシステムデザイン手法の教育を行い、従来のシステムズエンジニアリングでは解決できなかった、予期せぬ事態を考慮した設計論の講義と演習を行った。システムデザイン・マネジメント学がシステムズエンジニアリングを超えた社会・人間システムデザインに適用できることの一例である。4.3 修士研究および博士研究サービスやプロダクトのデザインのみならず、マネジメントのデザインや政策の提言等も含めた様々なシステムのデザインとマネジメントを対象にした特徴ある研究が修士課程および博士課程で行われている。特に、環境共生、安全・安心、社会協生等の複合的な価値と関係する研究テーマが数多く進められている。2009年度に実施された修士研究テーマの一部を表4に示す。対象とするシステムは技海上を利用した宇宙往還機のビジネスモデルの検討および実証試験計画 -日本独自の有人機実現に向けて-電子書籍の将来展望と活字メディア産業における構造変化に関する研究住宅内超高速プラスチック光ファイバネットワークの中国展開戦略に関する研究主観的幸福における社会的なつながりの価値の明確化若手技術者のモチベーションに関する研究-多大学共同微小重力実験プロジェクトを例にして-地方自治体職員のモチベーションに関する調査研究-活力ある組織風土の構築に向けて-製造業における企業パフォーマンスと組織風土・文化の関連性の調査研究国際海運システムの安定化のためのグローバルな海上安全保障政策の作新セミアクティブニーボルスターを用いた乗員下肢の保護制御システムデザインプロジェクト記述言語によるソフトウェア開発プロジェクトのリスクマネジメント大規模化学プラントにおける安全管理システムの提案リサイクルを考慮した国内銅資源供給の持続可能性評価バイオマスエネルギー技術を中核とした都市農村共生社会のシステムデザインクリーンエナジービークル普及のためのLCAを用いた炭素税設計太陽光発電に併設する蓄電池共有によるCO2削減効果の推定研究テーマ図12 ALPSでの提案の事例(六本木ベジ&フルーツ)表4 2009年度修士研究テーマの例
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