Vol.3 No.2 2010
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研究論文:学問分野を超えた「システムデザイン・マネジメント学」の大学院教育の構築(神武ほか)−120−Synthesiology Vol.3 No.2(2010)形での教育形式としている。また、専門知識が豊富で実務経験のある学生が多いため、産業界における特定の課題解決のための方策を講義の中で導き出す形式やSDM学の一部を体系化するための議論を主題にする形式の講義を数多く設置している。例えば、「社会システムに対する検証方法にはどのようなものがあるか?それぞれの方法の利点欠点は何か?」というテーマを金融システムの実務経験者である教員が学生に提示し、議論を講義毎に深化させていくという講義を行っている。それに加え、学生の主体性を重視し、学生が主催する講義の時間を用意し、学生自らがそれぞれのニーズに応じて専門性を持った学生もしくは外部の講師を招いて講義を実施することも奨励している。それぞれの教員の能力や知識の向上を目的として、月に数回の頻度で教員によるファカルティ・ディベロップメントの機会を設けている。各教員が教育経験によって得た知見や課題を提示し、その知見の共有や教育・研究向上のための議論を定期的に行っている。平日の昼間に通学することが困難な社会人学生にも学びの機会を提供するため、共通コア科目の日本語での講義は土曜日もしくは平日夜(19:00-20:30)に実施している。一方、海外からの学生はほぼ全員が仕事を持たないフルタイムの学生であるため、共通コア科目の英語での講義は平日昼間に実施している。また、学生としての受け入れではない産業界の実務者を対象に、SDM学に関係する対外セミナーや講習会を実施し、大規模・複雑システムのデザインやマネジメントに携わるリーダーの育成に貢献している。このことは、産業界での課題や大学院教育へのニーズ抽出にも役立っている。3.7 成果公表・課題抽出教育の成果は積極的に公表し、主に産業界からの評価を得る機会やその成果の産業界での適用の機会を設けた。たとえば、ALPSでは、最終講義において、各チームが与えられたテーマに対するサービスもしくはプロダクトの提案を行うが、その際に、10名程度の起業家、企業関係者、研究機関関係者に参加していただき、各提案を社会への適用の観点から審査して頂く機会を設けている。授業の評価としては、講義科目毎に講義最終回時に受講生にアンケートを行い評価を受けるようにした。各講義科目の評価は担当教員および関係者のみが確認することができ、大学院教育全般に関する受講生からの評価については全教員で共有し、適宜課題を抽出して次年度の講義に反映している。また、大規模・複雑システムの開発や運用に従事されている産業界の方5名に外部評価委員に就任していただき、SDM研究科での大学院教育に対する外部評価を定期的に実施していただく仕組みを構築した。4 現在までの成果と今後の課題SDM研究科を開設してから2年が経過し、2010年3月に修了者を輩出する現時点までの成果と評価、そして、それらを踏まえた今後の課題を以下に述べる。4.1 多様な人材によるグループ学習の成果ALPSでは、チーム毎に年間を通してグループプロジェクトを行い、多くの学生はシステマチックに社会要求を明確化すると共にアイディアを創出し具現化するための様々な考え方や手法を実践を通じて身につけることができた。具体的な事例として、あるチームによって創出されたアイディアとその成果について紹介する。このチームは、2009年度のALPSのテーマ“Sustainable Community”に対し、少子化による廃校増加、農業の後継者不足、改善しない若者失業率といった課題を同時に解決する方法として、都心の廃校を利用した水耕栽培システムを提案した。図12にこのチーム(六本木ベジ&フルーツ)が作成した提案資料の一部を示す。新鮮で、安心、安全な食材を求める消費者のニーズと、都会で安定した収入を創薬0.9創薬0.9食品0.9食品0.9翻訳0.9翻訳0.9スポーツ0.9スポーツ0.9公務員1.9公務員1.9デザイン1.9デザイン1.9素材1.9素材1.9教員1.9教員1.9教育1.9教育1.9物流1.9物流1.9法曹1.9法曹1.9マスコミ・出版1.9マスコミ・出版1.9医療1.9医療1.9システム2.8システム2.8エネルギー3.7エネルギー3.7建築3.7建築3.7官公庁3.7官公庁3.7不動産3.7不動産3.7金融4.7金融4.7航空・宇宙6.5航空・宇宙6.5情報9.3情報9.3コンサルティング10.3コンサルティング10.3通信11.2通信11.2製造19.6製造19.6(%)新卒学生5(11 %)新卒学生46(34 %)実務経験学生89(66 %)実務経験学生41(89 %)博士課程修士課程図10 新卒学生および実務経験学生の人数比率図11 実務経験学生の職種分布

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