Vol.3 No.2 2010
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研究論文:学問分野を超えた「システムデザイン・マネジメント学」の大学院教育の構築(神武ほか)−117−Synthesiology Vol.3 No.2(2010)下、CSEP)、プロジェクトマネジメントに関する国際資格Project Management Professional(以下、PMP)に準拠した四つの書籍を採用した。共通コア科目全てに利用する書籍[9]と、プロジェクトマネジメントを除く3科目で利用する書籍[4]、プロジェクトマネジメントで利用する書籍[10]、ALPSで用いる書籍[11]である。大規模・複雑システムの実務経験があり、その分野での知見や能力を持った教員が多いため、多くの講義では、その実務経験を講義に反映する形での教育形式としている。例えば、共通コア科目の「システムインテグレーション」では、システムズエンジニアリングの分野で体系化されつつあるそのプロセスや関係する手法について教科書を用いて紹介し、その上で、自動車および人工衛星の開発に携わったそれぞれの教員が実務上での課題解決事例の紹介や理論と実務間のギャップの説明、ある事例を題材にした演習等を行う。これによって、学生は、大量生産品の自動車と一品生産の人工衛星におけるシステムインテグレーションの違いや、日本で発展してきたデザイン手法等を学ぶことができる。3.1.1 システムズエンジニアリング序論システム開発プロセスにおけるVモデル用語3に沿った戦略的システムズエンジニアリングの基礎を講義する。つまり、システム思考、要求分析、機能物理分解、アーキテクティング用語4等についての講義と実習を行い、社会の多様な要請に応えるシステムデザイン・マネジメント体系の基本を学ぶ。実習では、学生が数名でチームを組み、「利用者が自宅不在時に遠隔から操作可能な自動掃除システム」といった具体的なシステムの実現を最終ゴールとする開発も体験する。複数の教員が講義を担当し、学生は顧客役の教員にヒアリングを行い、課題やニーズの抽出から始め、システムの要求抽出から納入までの各開発プロセスにおける仕様書を作成し、開発プロセスに沿ってシステム開発を行う。それぞれのチームは競合他社という設定で、システムの実現を目指す。あるチームが実現した遠隔自動掃除システムを図4に示す。左図は遠隔地から操作を行うためのwebによるサービス提供画面、右図がiRobot社製Roomba577を基に開発された掃除システムであり、主な構成を示す。3.1.2 システムアーキテクティングとデザイン社会の要求に応じた多視点からの可視化と問題解決構造・詳細構造のアーキテクティングとデザインについて講義する。また、各学生の研究テーマのアーキテクティングとデザインについてグループ討議を行う。3.1.3 システムインテグレーション要素に分解する過程とそれらをシステムとして確実に統合するための学問体系を講義する。つまり、システムの要求仕様作成、分析、設計、動作検証、要求仕様の妥当性確認についての講義を行う。また、実践的なグループ演習を行い、その上で討議を行う。3.1.4 プロジェクトマネジメントプロジェクトマネジメントの基礎の講義を行う。具体的には、大規模・複雑システムのマネジメント、ロジスティクス(人事や調達)の基礎と実践、クロス・マネジメントおよびプロジェクトマネジメントの技法についての講義と演習を行う。演習の一例として、紙を利用したタワー建築のプロジェクト演習の様子を図5に示す。学生が数名でチームを組み、プロジェクトマネージャーを中心とした役割分担を決め、PMPに準拠したマネジメントプロセスに従ってタワー建築のための準備を実際に行う。紙の単価や学生1時間あたりの作業時間の単価も設定し、限られた費用、スケジュールの中で、より安定し、高さの高いタワーの建築をチーム毎に競い、その後に各チームのプロジェクトマネジメントの成果を評価する演習である。3.1.5 デザインプロジェクトALPSスタンフォード大学およびマサチューセッツ工科大学との国際連携グループプロジェクト科目であり英語で行われる。“Enhancing Senior Life in Japan” (2008年度)“Sustainable Community” (2009年度)といった全体テーマのもと、年間を通して4、5回のワークショップ(各2Roomba577掃除モニタ用カメラ無線LANアンテナ照明用ライト図4 自動掃除システム図5 紙タワー建築プロジェクト演習
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