Vol.3 No.2 2010
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研究論文:学問分野を超えた「システムデザイン・マネジメント学」の大学院教育の構築(神武ほか)−115−Synthesiology Vol.3 No.2(2010)るとともに、得られた知見の活用と関連する教育研究機関、国際機関、学会との連携によってSDM学をさらに発展させるための研究拠点を整備する。(5)学生募集多様な人材の交流に基づく学びを可能にするために、理工系、社会科学系、人文科学系等の何らかのディシプリンでの専門性を具備した人材を中心に募集する(いわゆる理科系と文科系の専門性を有する人材の割合を1:1、実務経験学生と新卒学生の割合を2:1程度にする)。また、国内学生の国際性の向上と、日本語を母国語としない学生へのSDM学の普及を目的として留学生を積極的に募集する。(6)教育実施社会における未解決課題を主な対象にし、実体験型教育、グループ型教育を中心にSDM学の教育を実施する。それに加え、学生としての受け入れではなく産業界の実務者を対象にSDM学に関連したセミナーや講習会を積極的に実施し、大規模・複雑システムに携わるリーダーの育成を行うと共に、社会での課題や大学院教育へのニーズを抽出する。また、各教員の教育能力を向上させるためのファカルティ・ディベロップメント用語1の機会を定期的に数多く設ける。(7)成果公表・課題抽出大学院教育によって学生が得た能力や、教員が得た知見等を成果として各ステークホルダーに提示し、評価を受ける。また、SDM研究科に在籍する学生からの評価も受け、それらの評価を分析することで課題を抽出し、その結果に基づいて教育改善を行う。上記のシナリオは、1サイクルで終わるのではなく、(7)の成果公表・課題抽出の結果を基に、(1)~(6)のそれぞれにおいて、SDM学の更なる発展と大学院教育の改善を定期的に実施し、目標の実現を目指すというスパイラルアップ型用語2のシナリオである。3 大学院の開設SDM研究科を開設するにあたって実施した国内や海外の産業界100社以上へのインタビューを基に産業界での課題や大学院教育に対するニーズを抽出した。その結果、大規模・複雑システムを扱うために学生が身につけるべき能力および知識を図2に示すように六つに分類した。横軸が関連するディシプリンの範囲、縦軸が対象とするシステムの規模や複雑さを示す。つまり、大規模・複雑システムを扱うリーダーには、システムデザイン能力、システムマネジメント能力が必要であり、その能力を身につけるためには、基盤となる能力としてシステム思考能力、コミュニケーション能力が必要であることを意味している。また、ある分野の専門知識とその専門知識に関連した他領域の基礎知識を予め身につけていることが必要であることも意味している。それぞれの能力、知識の定義を以下に示す。 A)システムデザイン能力:利用者、顧客、社会、環境等の多様なステークホルダーの真の課題や需要を把握し、システムの構想から開発、運用、廃棄までのライフサイクルの各段階において全体の整合性を考慮しながら創造的に課題の解決策を提案できる能力(デザインには、技術システムのデザイン、意匠デザイン、組織のデザイン、社会のデザイン、経営や政策のグランドデザインまで、あらゆるシステムにおける構想提言、ソリューション提言を含む)B)システムマネジメント能力:プロジェクトの進行やライフサイクルの進捗に伴う環境の変化に対応し、利用者や顧客等のステークホルダーの要求を満たすシステムデザインの実現やシステム管理・運用を整合的に進めることのできる能力C)システム思考能力:独立した個々の事象のみならず、各事象関の相互依存性や相互関連性に着目し、システムの全体像や課題の本質を横断的、俯瞰的、体系的に捉えることのできる能力D)コミュニケーション能力:自分の考えを相手に伝え、相手の考えを理解し、多様な人材とチームを組んで課題を解決することのできる能力E)専門知識:技術系もしくは社会科学系での何らかの分野における深い知識(複数あることがより好ましい)F)基礎知識:専門知識に関連する他領域の基礎的な知識目標を実現するために選択した要素群およびそれらの要素の統合によって開設した大学院の教育について以下に述ディシプリンの範囲コミュニケーション能力システム思考能力システムマネジメント能力システムデザイン能力基礎知識専門知識基礎知識大 対象システムの規模や複雑さ 小図2 学生が身につけるべき能力および知識
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