Vol.3 No.2 2010
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研究論文:サービス工学としてのサイバーアシスト(中島ほか)−109−Synthesiology Vol.3 No.2(2010)コメント(赤松 幹之:産業技術総合研究所ヒューマンライフテクノロジー研究部門)この論文の主題は、サイバーアシスト研究センターという構成学的手段が、いかにして「サイバーアシスト構想」に構成学的に取り組んだかという方法と成果、考察を述べることだと理解しています。そこで、例えば、ストーリーの主題を「位置に基づく通信」に絞りこむ等、主張が明確に読者に分かるようにしていただきたいと思います。回答(中島 秀之)客観的なコメントをありがとうございました。CARCの設計に関して自分では当然だと思っていることが、実はそんなに自明のことではないということが良くわかりました。センターの構成等も売りの一つなのですが、伝わっていないようです。これ以外の部分も含めて全面的に加筆・修正しました。サイバーアシストのような、人間支援という概念を全面に出したサービス工学あるいは純粋なサービス提供という行為はストーリーの絞り込みが困難だと考えています。つまり、特定の機器や特定の機能の提供ではなく、それを含む広範囲の些細なことの積み重ねが必要であり、だからこそ従来そのような研究開発が行われてこなかったのだと思います。その点を強調するよう加筆しました。議論2 タイトルにある「サービス工学」の定義質問(赤松 幹之)サイバーアシストはサービス工学である、という視点がタイトルとして表現されており、その一方でサービス工学に対して独自の定義をされています。6.1節においてサービス工学についての記述がありますが、初稿においては著者らにとってのサービス工学の定義があまり明確に記述されていないようです。「提供する」という意味でのサービスの工学ということでしょうか。回答(中島 秀之)一般的に言って「実用に供するシステムをデザインしたり構築したりする学問体系」には、そのシステムを「実用に供する」部分が含まれます。ここが「サービス」だと考えています。そうすると「サービス工学」とは、サービス産業のための工学という(狭い)定義ではなく、工学のうちシステムを実用に供する部分、あるいはシステムを実用に供することを中心に再構成した工学分野ということになります。6.1節に定義を含めて加筆しました。議論3 サブタイトルコメント(赤松 幹之)サブタイトルに「10年早すぎた」とありますが、なぜ10年早すぎたのかが初稿には述べられていないように思います。もし、これが本論文の重要な観点であれば、早すぎてうまく行かなかった原因や考えられる対処法、また、現在ならうまくいくであろうと判断した論拠等記述が望まれます。質問(小林 直人)サブタイトルで「10年早すぎた?プロジェクト」とありますが、これはCARCが活動を始めた10年前には世の中がまだサイバーアシストの中心概念である「人間中心の状況依存型知的情報サービス」の重要性を理解するのには早すぎ、それを認知させるには3年という時間が短すぎたという解釈でよいでしょうか。あるいはCARCの活動に関係なく、世の中は10年後の今やっとその重要性に気づき始めたと考えればよいでしょうか。回答(中島 秀之)例えば、今ならサービス工学をやりますと言えば済んだことが、色々と説明が必要でした。世の中より10年進んでいたとの自負でもあります(当時の当該研究ユニットの外部評価委員がそのように言ってくれました)。CARCだけが先駆だとは言いませんが、時代がそうなる執筆者略歴中島 秀之(なかしま ひでゆき)1983年、東京大学大学院情報工学専門課程修了(工学博士)。人工知能を状況依存性の観点から研究。マルチエージェントならびに複雑系の情報処理とその応用に興味を持っている。公立はこだて未来大学理事長・学長。認知科学会元会長、ソフトウエア科学会元理事、人工知能学会元理事、情報処理学会元副会長。マルチエージェントシステム国際財団元理事。主要編著書:Handbook of Ambient Intelligence and Smart Environments (Springer)、知能の謎(講談社ブルーバックス)、AI辞典第2版(共立出版)、知的エージェントのための集合と論理(共立出版)、思考(岩波講座認知科学8)、記号の世界(岩波書店)、Prolog(産業図書)。本論文で記述したプロジェクトの立案ならびに初代センター長としてプロジェクトの遂行を受け持った。橋田 浩一(はしだ こういち)1981年東京大学理学部情報科学科卒業。1986年同大学院理学系研究科博士課程修了。理学博士。1986年電子技術総合研究所入所。1988年から1992年まで(財)新世代コンピュータ技術開発機構に出向。2001年より産業技術総合研究所サイバーアシスト研究センター副研究センター長、2004年に同研究センター長。その後、情報技術研究部門研究部門長等を経て現在は社会知能技術研究ラボ長。専門は自然言語処理、人工知能、認知科学。最近は、セマンティックコンピューティング、制約に基づく社会的相互作用(サービス)の計算モデル等に興味を持つ。日本認知科学会会長、言語処理学会会長、情報処理学会「次世代情報処理ハンドブック」編纂委員長、ソフトウエア科学会理事。著書・編著書に、知のエンジニアリング:複雑性の地平(ジャストシステム)、言語(岩波講座認知科学7)、言語の数理(岩波講座言語の科学8)、Topics in Constraint-Based Grammar of Japanese (Kluwer)等。本論文で記述したプロジェクトの立案ならびにインテリジェントコンテンツ研究を担当。また二代目センター長としてプロジェクトを継続、特に愛・地球博実施を担当した。査読者との議論 議論1 全体コメント(小林 直人:早稲田大学研究戦略センター)本論文は、産総研に2001年に設置された「サイバーアシスト研究センター(CARC)」の活動を振り返り、発足当時の同研究センターが目指したものの意味と現在の状況を比較し、その活動を再構成して、現在でも(あるいは現在だからこそ)通じるその高い意義を確認することを目標とするもの、と理解しました。しかし、シンセシオロジーが第2種基礎研究をベースにおいた研究の学術論文誌であることに鑑みると、再構成を行うことだけでは論文としての価値は発揮できないと思います。そこで、シンセシオロジーの論文の眼目である(1)研究目標、(2)そこに至るシナリオ、(3)要素技術、(4)要素技術の構成方法、(5)結論、のそれぞれに対応して記述していただけませんでしょうか。産業技術総合研究所サイバーアシスト研究センター, デジタルヒューマン研究ラボ(編): デジタル・サイバー・リアル−人間中心の情報技術−, 丸善 (2003).安西祐一郎 他: 知的社会基盤工学技術の調査研究報告書, 新エネルギー・産業技術総合開発機構 (1998).ユーザビリティ研究会報告書, 通商産業省 (1999).[27][28][29]
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