Vol.3 No.2 2010
15/88
研究論文:サービス工学としてのサイバーアシスト(中島ほか)−107−Synthesiology Vol.3 No.2(2010)て再編成された際にサイバーアシスト研究センターが設立され、サイバーアシスト研究の中心となった。以下は設立時に記述されたCARCの目標である。 誰でもどこでも安心して高度な情報支援が受けられる社会を実現するため、情報洪水を解消し、情報弱者を支援し、またプライバシーを保証する、現実世界の状況に基づいた情報サービス(状況依存型知的情報サービス)の技術を開発し、その普及を図る。そのための基盤として下記のような技術を研究開発する。• 状況依存通信ソフトウエア技術と位置に基づく通信を用いた携帯端末・インフラ技術• コンテンツの意味構造化とその利用技術• 有用な情報をユーザーの状況に応じて提供する技術以下はCARCにまつわる代表的イベントのリストである。1998/3 知的社会基盤工学技術調査研究報告書1999/3 ユーザビリティ研究会報告書2001/2 第1回サイバーアシスト国際シンポジウム開催2001/4 産総研サイバーアシスト研究センター(CARC)設立 (2004/7まで)2001/4 情報処理学会知的都市基盤研究グループ設立 (2003/3まで)2001/9 サイバーアシストコンソーシアム設立2002/10 第2回サイバーアシスト国際シンポジウム開催2003/4 情報処理学会ユビキタスコンピューティングシステム 研究会設立2003/4 産総研ベンチャー:(有)サイバーアシスト・ワン設立2004/7 CARCが産総研の他の研究部門と合体し情報技術 研究部門設立2004/11 第3回サイバーアシスト国際シンポジウム開催2005/10 第4回サイバーアシスト(国内)シンポジウム2007/3 サイバーアシストコンソーシアム終結2)世界のトップクラスを集めたアドバイザリボードCARCでは独自のアドバイザリボードを組織し、関連分野の世界的権威を集めた。メンバーは以下のとおり(敬称略。肩書は当時):甘利俊一(理化学研究所ディレクター)、安西祐一郎(慶應義塾大学塾長)、Rodney Brooks(マサチューセッツ工科大学教授)、William Mark(SRIインターナショナルAI担当副社長)、二木厚吉(北陸先端科学技術大学院大学教授)、大星公二(NTTドコモ相談役)、Stanley Peters(スタンフォード大学教授)、竹内郁雄(電気通信大学教授)、田中芳夫(日本IBM理事)、辻井潤一(東京大学教授)、Wolfgang Wahlster(ドイツ人工知能研究センター所長)、Steven Willmott(カタルーニャ工科大学客員研究員)、米澤明憲(東京大学教授)。3)産総研初のコンソーシアム結成CARC立ち上げ直前からサイバーアシストシンポジウムを国内と国際を隔年で開催し、それを通じてサイバーアシストコンソーシアムへの参加を勧誘した。センターの立ち上げ後約半年で産総研コンソーシアムの規約をまとめるとともに産総研初のコンソーシアムを組織した注14。通常のコンソーシアムは同業種による連合を基本とするが、本コンソーシアムではバザール方式と呼ぶ異業種連合を目指した。たとえばデバイス製造業者とサービス提供業者が組むことにより技術が世に出ることを願ったからである。4)産総研初のゼロからのベンチャー立ち上げ産総研ではベンチャー起業を推奨していたが、我々としてはCARC設立時にはベンチャー立ち上げの構想は持っていなかった。しかしながら、研究開発の出口として社会応用までを射程に入れた注15ことで、すぐに装置の製造や設置を担う企業が必要となった。当然のことながら、そのようなことを一貫して扱う企業は存在しておらず自分たちでベンチャーを立ち上げるのが最適と考えるに至った。株式会社として最低限必要な一千万円の資金を出し合っての設立となった。メンバーの半数がCARC研究員である。しかしながら、我々の想定するベンチャーの形態と産総研のそれとは必ずしも一致していなかった。特に障害となったのは利益相反の問題であった。CARCのメンバーがベンチャーの出資者であり、その役員を兼ねていたため、利益相反の可能性があるというだけでベンチャーの入札参加が拒否されたため、初期の目的であったベンチャーを通じての応用の実施は困難を極めた。また、ベンチャーの運営についても齟齬があった。我々は研究者として永久にベンチャーにかかわる予定はなく、ある程度軌道に乗った時点で売却して運営を移譲することを想定していた。しかしながら、知的所有権の独占使用権が5年間ベンチャーに貸与された後に産総研に戻されるという方針であったため、売却もかなわなかった。2009年度現在、我々のボランティア的活動で支えているが、今後の展開の目途は立っていない。5)学会活動サイバーアシスト計画には学会での研究グループの育成も含まれていた。情報処理学会では2001年より知的都市基盤研究グループを組織し、IT社会応用を中心とした研究活動を行った。この研究グループは情報家電研究グループと合体し、2003年度より情報処理学会ユビキタス・コンピューティング・システム研究会となり、現在に至っている。関連分野の研究者とともにユビキタス情報研究会という任意団体にもセンター長の中島(筆者)が積極的に参加した。これは学会に属する研究会ではなく、むしろこの研究会の参加者が各学会で研究会運営に携わりながら、それらを統括する組織として機能していた。この研究会の主たる成果としてSmall Stories 2008注16というビデオ創りが挙げられる。Microsoft、 Hewlett Packard、NTT DoCoMo、 Nokia等がさまざまな未来予測/研究プロモーションビデオを作成する中で、研究者が技術的可能性を担保した上で描く未来像として制作した。CARCで試作したCoBITやマイボタンの概念を反映した情報ルーペ等が登場する。
元のページ