Vol.3 No.2 2010
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研究論文:サービス工学としてのサイバーアシスト(中島ほか)−103−Synthesiology Vol.3 No.2(2010)は放送電波で使われている方式と同様に赤外線の周波数帯を変えることによる方式である。万博計画時当初はアジア圏の言語を含む5ヶ国語を目標としたが、その後の実験で十分な帯域が確保できないことがわかり、実施は日英の2ヶ国語のみとなった。研究上の理論的な可能性と実用のギャップを痛感した。今後のサービス工学研究における課題である。音声による情報提供の他、内臓のタグを天井のセンサーで検出することにより、訪問者の動線データを獲得した。これは以後のイベント会場設計における重要なデータとなる。Show & Walk:これはパフォーマンスアーティストのローリーアンダーソンが企画したイベントで、日本庭園内の各所にオブジェや音源を隠しておき、その場に行った人だけが体験できるという概念のものである(図10)。位置に基づく通信の理念に近いものであり、CARCにとっても新しい応用分野を示唆するものであった。我々は音の部分だけを担当することとし、企画時にアメリカの彼女の事務所に研究者が出向いて先方スタッフと共にさまざまな可能性を検討した。当初はステレオ方式により空間中に音像を定位させることを狙ったのであるが、これは挫折し、結局は他のCoBITやAimulet GHと同等の方式とならざるを得なかった。こちらの端末(図11)(Laulie Andersonの頭文字をとってAimulet™ LAと命名した)は安価で入場券の代わりに配布できることを目指した。博物館等で貸し出した端末を漏れなく回収するのに苦労していること、特に出入り口の多い日本庭園のような屋外環境での回収の困難さを考えればこの安価な端末は強力な武器になると考えた。同時に愛・地球博のテーマであるエコロジーをデザインに採り入れ、省資源で安価な竹の皮でケーシングを作り、回収せず来場者がお土産として持ち帰れるようにした。図11はAimulet LAを受光部側(屋外での太陽光干渉を避けるため下に向けて使うよう設計)から見たものであるが、球形の太陽電池を使用している。これは指向性を鈍感にすると共に受光面積を増すのに役立っている。なお、Aimulet LAは竹と太陽電池の使用が評価され、2006年のグッドデザイン経済産業大臣賞エコロジーデザイン賞注10を受賞することができた。なお、Aimulet GHならびにLAは太陽電池を電源としていることにより、会期中に電池交換が不要というメリットを持つ。数百から数千単位の端末の電池入れ替え(あるいは充電)作業は大きな負担で、これを必要としないメンテナンスフリー端末は長期間イベントでは大きな武器となろう。6 サービス工学と環境知能最後に最近の動向から振り返ったサイバーアシストの位置付けについて考察したい。CARCの活動は「Cyber-physical system」のドメインで「環境知能」を実現し、「サービス工学」を実践してきたものだと言えよう。6.1 サービス工学まずはここでいう「サービス工学」の意味を明確にしておく必要があろう。「サービス工学」という用語は最初に東京大学人工物工学研究センターにおいて使用された([21][22]p.134)。ここでは「サービス」は提供者が、対価を伴って受容者が望む変化を引き起こす行為と定義されている。英和辞典で「service」という項目を引くと20以上のエントリーが並んでいる注11。勤務、(神に)仕えること、兵役、点検、テニスのサーブ、種付け等が並ぶ。これはservice図9 Aimulet™ GH図10 Show & Walk におけるAimulet LAの利用場面(左はLaulie本人)

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