Vol.3 No.1 2010
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−82−Synthesiology Vol.3 No.1(2010)座談会:シンセシオロジー創刊2周年を迎えて吉川 それがイノベーションスクールの最大の目標だったわけですね。凝り固まった専門至上主義みたいなものを壊して実際のものを作る、社会との接点を幅広く持つこと、それが学べたのは大変いいですね。小野 ポスドクの人たちを企業に数カ月送り出して企業でのOJTを経験してもらっていますが、我々と企業との間の新しい対話のチャンネルにもなっていて、我々にとっても非常に貴重な経験です。受講生を受け入れていただいた企業の方々に、OJTの評価とコメントをつけてもらっているのですが、大変好意的です。普通ですと企業も若い博士研究員と接する機会が少なく、「こんなにいい人がいたのか」という驚きやチャンスと捉えているようです。吉川 企業も勉強になっているという、それはいい話ですね。イノベーションスクールは仕事をしながら伸びることができるという一つのモデルです。受講生は、『シンセシオロジー』によって「狭い分野にこだわってはいけない」ことや、一方でシンセシスとは何なのかということも感じ取っているでしょう。そして、新しい仕事をするというのは「思考」なのだということもわかるわけですね。今後の期待・展望小野 シンセシオロジーに対する今後の期待、展望についていかがでしょうか。赤松 イノベーションスクールの受講生から「今は査読者のクオリティが高いからいい論文になっているのではないか。いいジャーナルとして持続するためには、シンセシオロジーとは何かということを考えながら査読できる良い査読者を作っていかないといけない」というコメントがあって、それは大事なことだなと思いました。査読者はある種の目利きとして動いているわけです。論文の背後にある「構成」を見出そうとするのは査読者がやっていることなのだけれども、我々が世代交代をしたときにそれができなくなると困るので、将来の課題だと思います。小林 私も全く同じことを考えていまして、2年経って我々自身も成長したと思いますが、構成学としてのシンセシオロジーを共有する人たちをもっと増やさないといけない、と感じています。そのためにはシンポジウムやワークショップを増やして、口で伝えていくことも大切です。また査読者を増やす努力、特に産総研外の人をどのように巻き込んでいくかということと、『シンセシオロジー』の認知度を高めていくことも必要です。内藤 私は、査読する過程で著者といろいろ議論するのはすごく楽しいなと思っているのですが、こういうダイアログを通じて投稿者と編集委員の両方の質が上がってきていると思います。投稿者と編集委員との間のダイアログをどんどん増す仕組みを作り、外部の人と積極的にこういうダイアログをやっていくことができれば、もっと投稿が増えていくのかなと。その一環として、シンポジウムやセミナー、講演会みたいなものも位置付けていけば、両方がいろいろなことを学ぶことができると思います。小野 皆さんの意見とほとんど同じです。査読をすることによって、査読する側も新たな発見や触発があったりして楽しいし、他の研究分野の価値観がこんなによくわかるのかと驚いています。吉川 日本は人口が少ないからGNPの比率が小さくなり、今は9 %国家と言っているけれども、2050年には3 %国家になり、プレゼンスがない国になってしまう。それを防ぐにはどうすればいいかというと、やはり研究者を増やすしかない。同じ人口の中で研究者の数が多くなれば、少なくともサイエンスという意味ではプレゼンスが出てくるわけでしょう。私は「研究者倍増説」と言っているのですが、閉鎖的・縦割りの研究者を倍に増やしてもしようがないので、まさに技報にものを出すような開発者まで含めて拡大解釈した研究者をもっと作りたいですね。同時に、閉鎖的研究者から企業開発者までの間の職業的な連続性を生み、そこで人が流動する社会的な一種のパスが必要です。そういったことをやるためにこのシンセシオロジーが強力なツールになるでしょうし、そういう一種の社会的運動という面も持っているという気がします。小野 今日は非常に幅広いお話をありがとうございました。

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