Vol.3 No.1 2010
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研究論文:1550 ℃に至る高温度の計測の信頼性向上(新井ほか)−5−Synthesiology Vol.3 No.1(2010)た縦型電気炉を使用し、960 ℃付近で9時間にわたり±25 mK以内の高い温度安定性と、高さ14 cmにわたり±6 mK以内の良好な温度均一性とを実現した。定点セルは、銀に加わる気体の圧力を測定できるオープン型とし、公称純度99.9999 %の銀を黒鉛製のるつぼの中に1390 g封入した。凝固点の温度は±10 mKの範囲で5時間持続することが可能であり、再現性は14回測定して標準偏差が3.8 mKであった[2]。この装置を使用することにより、銀点において0.09 ℃の拡張不確かさ(約95 %の信頼の水準)で熱電対を校正できると評価した。4.1.2 銅点実現装置銅点実現装置の概念断面図を図4に示す。この装置は前述の銀点実現装置と同様、ヒーターと制御系から成る「定点炉」、および定点物質を含む「定点セル」から構成される。定点炉は縦型とし、高さ方向に3分割したゾーンのそれぞれに発熱体を独立に設置して温度制御する電気炉とした。発熱体には無誘導巻のカンタル線を使用し、制御用熱電対としてR熱電対を各ゾーンの中央部に設置した。定点炉の設計において、従来の一般的な3ゾーン電気炉と比べて異なるのは、制御用熱電対と発熱体の熱接触を良くした点、断熱材を厚くして炉の保温性を向上させた点である。制御用熱電対はアルミナ管を介して発熱体と接触させて応答性を良くし、炉の温度制御性を向上させた。また、発熱体の周りの断熱材には高温用耐火繊維(セラミックファイバー)を用い、150 mm以上の厚さにして炉の保温性を向上させた。これにより、消費電力は1 kW以下に抑えることができた。定点セルは、銀点と同様のオープン型とし、公称純度99.9999 %の銅を黒鉛製のるつぼ中に1450 g封入した。図5は銅が凝固する時の定点セル内の温度の時間変化を示したものである。凝固点の温度は±2 mKの範囲で8時間持続した。融解・凝固を26回繰り返して測定した凝固点の温度の再現性は標準偏差で11.7 mKであり[3]、この装置を使用することにより、銅点において0.11 ℃の拡張不確かさ(約95 %の信頼の水準)で熱電対を校正できると評価した。4.1.3 コバルト-炭素共晶点実現装置るつぼ法で1100 ℃以上の温度定点がこれまで実用化されなかった大きな理由には、融解点・凝固点測定のために純金属を黒鉛製のるつぼで保持した場合、るつぼの構成元素である炭素が高温下で純金属中に溶け出し、純金属を炭素で汚染して融解点を降下させてしまうことが挙げられる。この問題を解決する方法として、金属と炭素をあらかじめ共晶合金の組成の比率で混合して黒鉛製のるつぼ中に保持することが発案された。これにより、るつぼ法で再現性の良い融解温度が実現でき、温度定点として利用可能になった[4]。金属-炭素共晶点は高温領域の新しい温度定点として世界の先進的な国立標準研究所で現在研究が進められている。この技術を用いて熱電対を校正するためのコバルト-炭素共晶点実現装置を開発し、それまで作製が困難であった大型のコバルト-炭素共晶点セルの作製に世界に先駆けて成功し、熱電対の校正に使用できることを実証した[5]。装置の設計においては、銅点実現装置の技術を応用した。ただし、銅点実現装置ではるつぼを保持するのに石英管を使用したが、コバルト-炭素共晶点の温度では石英の失透もしくは軟化が起こるため、石英管の代わりにアルミナ管を使用した。図6はコバルト-炭素共晶点の融解・凝固曲線を示したものである。不確かさ評価の結果、コバルト-炭素共晶点において0.53 ℃の拡張不確かさ(約95 %の信頼の水準)ガスポート石英管黒鉛ディスク温度計ウェル黒鉛るつぼヒーター金属の液相金属の固相フランジ熱電対定点セル定点炉98065550400過冷却/ mintΔ / mKT固相と液相が共存して一定の温度を示す(この領域で熱電対の校正を行う)0010020030040050020-20-40-60図4 銅点実現装置の模式図図5 銅点での凝固曲線

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