Vol.3 No.1 2010
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論説:“社会のための科学”と研究開発評価(大谷)−76−Synthesiology Vol.3 No.1(2010)のための評価は何のために行うかというと、「より良くする・なる」ためであったわけですが(その意味でまさに“進化のための評価”という理念になるわけですが)、「より良くする・なる」の主体は誰かといえば、その行為を行う当事者に他なりません。“社会のための科学”研究でいえば、研究実施者であり、それは他者に強要されるものではなく、自らが主体となって行うものだと考えられます。以上のことから、多少なじみの薄い言葉ではありますが、“内省評価”という言葉を使いたいと思います。大辞泉によれば、“内省”とは「自分の考えや行動などを深くかえりみること」とあります。よってこの言葉には、“反省”という言葉がもつ倫理的な色彩が少なく、暗黙的に含む“謙虚に”、という意味で「つまびらかにする」ということにも通じ、何よりも実施者自らが行う行為としての意味も含まれていると考えます。多少哲学的で奇異な響きもしますが、それ故に常にその意味に立ち返って考えさせられるメリットもあります。コメント2 価値評価質問(小林 直人)第2章に「価値評価」の説明が出てきます。この「価値評価」の内容について記述をもう少し充実していただけるとよいと思います。平澤先生の資料にあった言葉だと思いますが、実はなかなか重要な言葉です。是非執筆者なりの考えを述べていただくことを期待します。回答(大谷 竜)研究開発評価には、通常の研究開発とは異なる固有の論理体系がありますが、こうした考えに慣れていない評価の現場で時々混乱が見られるように思えます。その中でも、自らの個人的な価値観を(しばし無意識に)援用した評価が行われている場面があるようにも思われます。本文でも説明したように、価値評価は「〜が高く評価される」といった文脈で使われる評価ですが、「高く評価するかどうかは評価者たる自分」であるからには、自分の価値観、極端な場合、その人の人生観を反映したものが色濃く出る場合があります。問題は、こうした価値評価が研究開発の促進と深化の観点から有効かどうかで、それを問おうというのが価値評価という概念を導入した狙いです。その旨を本文に追加しました。コメント3 追跡評価質問(小林 直人)第4章に研究開発直後に行われる事後評価とは異なる「追跡評価」の重要性が述べられています。しかしその内容は、「時間をおいた上でデータに基づいた事後評価」という内容のように見受けられます。内容は結構なのですが、一方、通常NEDOなどで行われている追跡評価とは、プロジェクト終了後1年から5年の間にプロジェクトの成果をどう活かして事業化にもっていったのか、などの波及効果を評価するいわば「アウトカム評価」に近いものと考えられます。そこには、そのプロジェクト以外の促進要素が多く入ってくるのが通常です。本稿でいう追跡評価は評価論で通常いわれているものでしょうか。そうでなければ、別の言葉で述べた方が誤解を招かないと思われますがいかがでしょうか。回答(大谷 竜)2001年に内閣総理大臣決定された“国の研究開発評価に関する大綱的指針”によれば、「研究開発においては、終了後、一定の時間を経過してから、副次的効果を含め顕著な成果が確認されることもまれではない。こうした点を踏まえ、学会などにおける評価や実用化の状況を適時に把握し、必要に応じて、研究開発施策、研究開発課題などについて追跡評価を行い、成果の波及効果や活用状況などを把握するとともに、過去の評価の妥当性を検証し、関連する研究開発制度などの見直しに反映する。」(下線は著者によるもの)とあります。また、NEDOが2004年に定めた“追跡調査・評価の進め方について”にも追跡評価の観点として、「1)成果の説明責任の観点:研究開発の波及効果、売上の発生、市場の形成など、2)運営管理の見直しの観点:各種評価、実施体制、基本計画などの妥当性など、3)技術開発戦略への反映の観点:国としての取り組みの必要性など」(下線は著者によるもの)、を挙げております。以上のことから追跡評価は、“研究開発成果の波及効果の把握”という側面とともに、少なくとも国レベルでは、研究開発の運営(制度)や戦略策定の改善に資することも目的としていると考えられ、本稿でもこの立場を採りたいと思います。本文中でいわゆる事後評価(直後評価)と、追跡評価との区別が分かりにくいという点についてはご指摘を踏まえ、新たに直後評価についての内容の説明を加え、上記のような意味での追跡評価の独自性を浮かび上がらせるように書き直しました。コメント4 ROAMEF質問(小林 直人)第4章に、「評価の局面の位置づけ」として4.1事前・中間・追跡評価の一体化、4.2 ROAMEF、などの、重要な論点が記されています。ここでプログラムの中の戦略が極めて重要であることを指摘したいと思います。特にRationaleで問うWhy?のみでなく、Objectivesを設定するWhatとHowも重要ですね。これをどのように設定するかの記述があるとよいと思います。なお、プログラムの戦略は、いわばプログラム戦略と呼ばれるもので、それはより上位の戦略−いわば政策戦略の中に含まれるという理解でよいでしょうか。回答(大谷 竜)ご指摘のとおり、Objectivesはプログラムのターゲットそのもの(そのプログラムで“何を”実現させたいのか)なので、まさにWhatに相当します。またAppraisal以下の要素は、ターゲットを“如何に”実現させるかという意味でHowそのものになります。その旨分かるよう、書き加えました。後者の質問に答えるには、評価の階層構造に立ち返る必要があります。評価対象が階層構造をもつということは、実は上位階層に対して下位階層が目的−手段の関係として位置づけられる、ということです。プログラムの場合、その上位階層である政策に対して、プログラムがその目的達成の手段になっている、ということに他なりません。したがって、ROAMEFの内部構造と同じように、プログラムは、上位にある政策の目的を境界条件として定められることになります。プログラムの“戦略策定”(RationaleとObjectives)自体はプログラム内部に含まれますが、その根拠は、上位の政策から由来するということです。このように考えると、政策−プログラム−プロジェクトとは全てが連関していて、本来切れ間がないものですが、そこに政策やプログラムなどといった“区分”を設けるのは、“目的−手段”の間で区切ることで評価の重複を避けるとともに、担当者の所掌を明確にすることで、効率的で分かりやすい評価を実現するためです。別の角度から見れば、プログラムを設定する際、できるだけ政策を展開させる際の“一つの単位”となるように設計することが、効果的な評価体系を構築する上でポイントになると考えられます。

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