Vol.3 No.1 2010
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研究論文:臨床情報学のための野外科学的方法(木下ほか)−46−Synthesiology Vol.3 No.1(2010)けているという指摘がありました。もしそうだとすると、本格研究では研究として何をすべきか、というW字の左V字部分が既定のものとなっているとも考えられます。しかし、そのような状況は限られており、実際には研究者が社会や企業に出かけていって状況を観察する左V字のプロセスが必要でしょう。ただ、フィールドワークとの違いは、フィールドワークでは左右のV字が常にシリアルに連結し何回もW字のプロセスを回すのに対して、本格研究では、左のV字はそう多くは行わず、ほとんどが右のV字のプロセスを回すことにより研究を推進する「左右V字の非対称性」が実態なのではないでしょうか。回答(木下 佳樹・高井 利憲)私達は、「研究として何をすべきかが決まっている」ということを言いたいのではなく、「研究として何をすべきか、を決める過程についての議論が欠けていた」と言いたいのです。したがって、「しかし、そのような状況は限られており、実際には研究者が社会や企業に出かけていって状況を観察する左V字のプロセスが必要でしょう。」というのはまったくそのとおりだと思います。ちなみに、本格研究と今回のモデルの違いは、左のV字を行う回数というよりも、上記のように、左のV字の存在の認識と、左のV字遂行の方法論の有無だと思います。本格研究に限らず、あらゆる活動において左のV字は存在しているわけですが、そこに目を向けるかどうかが問題だと思うわけです。質問(小林 直人)川喜田氏の「W型解決モデル」では、特に最初のV字部分(「探検」「野外観察」「発想と統合」)が重要だと思われます。数理的技法の適用の過程では、「『社会の一定の場所に役立つのではないかという漠然とした期待』のもとにその場所に出かけ、様子を観察する」という記述があります。しかし実際には企業(クライアント)が明確な課題を抱えていて、それに対応する為に技術移転の適用を行うということではないでしょうか?あるいは、クライアントの要求は明確であるが、実際には何をすべきかが初めは漠然としているということでしょうか。もう少しその 「漠然性」を説明していただけるとよいと思います。回答(木下 佳樹・高井 利憲)このような場合、現場では明確な課題を抱えていると考えている場合もありますが、当事者が問題点の本質を理解しているとは限らず、実際には別の解決すべきもっと重要な課題があって、それを解決すると、現場で抱えていると考えている課題も自動的に解決する、という場合も多いのです。したがって、研究者としてはまず、虚心坦懐に現場を「探検」し、観察すべきであろうと考えています。
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