Vol.3 No.1 2010
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研究論文:臨床情報学のための野外科学的方法(木下ほか)−45−Synthesiology Vol.3 No.1(2010)執筆者略歴木下 佳樹(きのした よしき)1989年東京大学大学院理学系研究科博士課程情報科学専攻修了。理学博士(情報科学)。テキサスインスツルメンツ、電子技術総合研究所を経て、現在、産総研システム検証研究センター長。本論文では、すべての章において、木下および高井が議論しながら両者で執筆した。高井 利憲(たかい としのり)1996年九州工業大学情報工学部知能情報工学科卒業。2001年奈良先端科学技術大学院大学博士後期課程単位取得認定退学。科学技術振興機構CREST研究員などを経て、現在産総研システム検証研究センター研究員。博士(工学)。本論文では、すべての章において、木下および高井が議論しながら両者で執筆した。査読者との議論 議論1 「臨床情報学」という名称質問(中島 秀之:公立はこだて未来大学、小林 直人:早稲田大学研究戦略センター)「臨床情報学」の意味は、本文を読めば非常によく分かるのですが、題名だけを見るとどうしても「臨床(医学)のための情報学」と理解されてしまう可能性が高いと思われます。「臨場情報学」というのはいかがでしょうか?回答(木下 佳樹・高井 利憲)医学以外でも、臨床心理学という語は、すでに広くいきわたっていますが、ご指摘のような誤解を避けるために当該箇所を書き直しました。臨床情報学は、システムのための医療という言い方も可能なように思います。議論2 技術移転theory: Strategies for qualitative research, Aldine Publishing, Chicago (1967).システム検証研究センター: 4日で学ぶモデル検査初級編, エヌ・ティー・エス, 東京 (2006). (ナノオプトメディア社から再版予定).高井利憲, 古橋隆宏, 尾崎弘幸, 大崎人士: 環境ドライバを用いたモデル検査による検証事例, 第4回システム検証の科学技術シンポジウム, 日本ソフトウェア科学会, 名古屋 (2007).崔銀恵, 河本貴則, 渡邊宏: 画面遷移仕様のモデル検査, コンピュータソフトウェア, 22 (3), 146-153 (2005).N. E. Fenton and S. L. Pfleeger: Software metrics - a rigorous and practical approach, PWS Publishing, Boston (1997). 井上克郎, 松本健一, 鶴保征城, 鳥居宏次: 実証的ソフトウェア工学環境への取り組み, 情報処理, 45 (7), 722-728 (2004). 荒木啓二郞: フォーマルメソッドの過去・現在・未来―適用の実践に向けて, 情報処理, 49 (5), 493-498 (2008).A. Avizienis, J.-C. Laprie, B. Randell, and C. Landwehr: Basic concepts and taxonomy of dependable and secure computing, IEEE Transactions on Dependable and Secure Computing, 1 (1), 11-33 (2004).井村裕夫: 臨床研究イノベーション, 中山書店, 東京 (2006).[12][13][14][15][16][17][18][19]質問(小林 直人)本論文では、臨床医学との類比から、①状況の分析(診断)、②改善(治療)、③改善方針の決定と遂行(技術移転)の活動を臨床情報学と位置づけていますが、②の改善と③の技術移転の関係は、時間的にどちらが先だと考えればよいのでしょうか?通常は、③が行われてから②の改善が行われるのかと思いますが、改善は研究者側が行ってしまい、その後、徐々に(あるいは改善と並行して)技術移転をしていくのでしょうか?両者の時間関係が述べられているとよいと思います。なお、「技術移転は臨床医学の外にある」との表現がありますが、医者と患者の間では治療や予防のアドバイスはあっても、治療技術の移転はそもそもありえない(法律で制限)と思いますが、そのような理解でよいでしょうか。臨床医学におけるフィールドを看護師まで含めれば、技術移転はあるかもしれませんが。回答(木下 佳樹・高井 利憲)②は①の後ということになりますが、③は、①および②の技術を一般技術者(一般の医師)によって使うことができる形に仕上げて(改善方針の決定)、伝える(遂行)、ということですので、レベルが一段違う話だと考えております。時間的関係は特にありません。私達が例に考えている技術移転は、研究所から一般医師への技術移転であって、患者に対するものではありません。医師免許を持つものに対する技術移転ですので、法律による制限も特にないと考えられます。箇条書きに少々説明を追加して、以下のようにしてみました。1.状況の分析(医療での診断に相当する)2.改善(医療での治療に相当する)3.改善方針の決定と遂行(技術移転医療の場合には研究成果を一般の医師が使える形にして、医師会などを通じて広めることに相当する。工学では技術移転に相当しよう。)質問(小林 直人)上記括弧内の説明はよく分かるのですが、「2.改善」の後に、「3.改善方針の決定と遂行」という言葉がくるのはやはり変な気がします。医者が患者を治療してから治療方針を決定するというのはおかしいと思います。「3.一般的改善方針の決定と遂行」あるいは「汎用改善方針の決定と遂行」などが適当でしょうか?回答(木下 佳樹・高井 利憲)ご指摘を受けて再考した結果、状況の分析や改善、技術移転などは、臨床情報学研究の「対象」であって、これらの活動が臨床情報学研究そのものというわけではないことをもっと強調すべきとの結論に達しましたので、問題の個所を書き換えました。議論3 「W型解決モデル」質問(中島 秀之)3節にW型とV型の対比が書かれています。W型はV型のループとは考えられませんか?(参考:中島秀之「構成的研究の方法論と学問体系」シンセシオロジー1巻4号)吉川モデルが間違っているというよりはその繰り返しだというのが当たっている気がするのですが。回答(木下 佳樹・高井 利憲)左のV字は理論をたてる発想abductionの段階なのに対して、右はたてた理論に基づいて演繹や帰納をやる、というわけですのでループではありません。そのことを書き足しました。吉川モデルが間違っているのではなく、発想段階の方法論などについてあまり議論されなかった、もっと言えば不十分だったというのが主張です。質問(小林 直人)吉川氏の提唱した本格研究の枠組みでは、W字の左側のV字が欠

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