Vol.3 No.1 2010
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研究論文:石油流量国家標準の確立とわが国の標準供給体制(嶋田ほか)−33−Synthesiology Vol.3 No.1(2010)からは途中から取り下げられたが、体積管を用いた校正装置(Small Volume Prover)もしくは体積タンクを外部機関の施設(例えば、石油会社)に持ち込むことにより校正作業を行った2カ国(メキシコ、カナダ)の校正値は他の国々での値から大きく乖離していた。このことは、すでに述べたように体積タンクなどの個々の測定機器に対してトレーサビリティを確保することだけでは高精度の流量標準を組み立てることは技術的に難しく、校正環境を含めた校正装置全体の不確かさ要因を低減する必要性があることを示唆している。一方、我が国の国家標準値は、図5からもわかるように、全体の校正値結果の中心部分に分布している。さらに統計的な解析から得られた国際的な合意値と不確かさの範囲内で一致していることが確認された[10]。6 効率的なトレーサビリティ体系(JCSS)の構築の取り組み多種多様な石油類、広い流量範囲で流量計を使用する産業界のニーズに対応するためには、国家標準から、JCSS(校正事業者登録制度)を通じて流量範囲および液種を拡張する必要がある。このために、政府支援の研究プロジェクト[11]により、液体の粘度に依存する流量計の特性に高度な解析を加えることによって異なる液種へ容易な拡張を可能とする技術、流量計の並列化で流量範囲を拡大する技術開発を行った[11][12]。これらの新校正技術の妥当性を検証するために、国内校正機関(校正事業者)の校正能力を調査した一例を図6に示す。2005年実施の結果が示すように、従来国家標準値から−0.05 %~+0.10 %の偏差があった校正設備は、国家標準で校正された流量計で国内校正機関の校正設備を校正することにより、国家標準と±0.03 %以内で一致するまで校正能力が著しく向上したことがわかる。さらに、産総研の国家標準の校正範囲外である重油での値は外国校正機関での値と±0.03 %以内で一致しており、プロジェクトで開発した液種を拡張する方法が妥当であることを示唆していると言える。この他、国家標準から供給を受けた校正事業者の能力を担保するためにこれを認定する製品評価技術基盤機構(NITE)を技術的に支援すべく技術的要求事項適用指針[13]の策定を主導した。その結果として、認定登録校正事業が新たな事業としてその数が拡大しつつある。また、液種の拡張技術を応用して、流量計のもつ粘度特性を要因とする不確かさの低減や作業効率の向上を図るべく流量計メーカーと共同で高精度流量計の開発を継続的に実施している。さらに、JCSS体制下の校正事業者との間で役割分担することで国家標準は限定的な範囲ではあるが、世界最高レベルの高精度な設備となっており、計量器産業の流量計開発プラットフォームとして、重要な役割を果たしつつある。7 まとめ本報では、石油流量標準における国家標準の位置づけを社会的な合理性を追求する観点から議論するとともに、石油流量の国家標準における校正方法の選択過程および不確かさ削減のための要素技術とそれに伴う安全性の確保について報告した。さらに、国家標準の妥当性とユーザーが利用できるトレーサビリティ体系の構築について報告した。現場で使用される流量計の精度管理の効率化に向けて、現在は、JCSS登録事業者を希望する校正事業者への技術支援を行っている。環境問題などにより脱石油が推進されているが、近年の原油価格の高騰で見られるように石油製品の高価格化に伴い、さらなる高精度の計量が求図5 石油流量の国際比較の測定結果NMIJ:日本、NEL:英国、SP:スウェーデン、CMI:チェコ、NMi:オランダ、Force:デンマーク、CMS:台湾、CENAM:メキシコ、MC:カナダ。国際比較報告書[10]の図2中のデータを読み取り、再プロットした。図6 国家標準値(NMIJ)からの偏差2005年と2007年で使用された流量計が異なるため、横軸のRe数は一致しない。また、国家標準の校正範囲は参考である。流量 (L/s)0510152025303516.8416.8316.8216.8116.800.1 %16.7616.7716.7816.79流量計の校正値 K-Factor(P/L)NEL May 2005SP Jun 2005CMI Jul 2005NMi Sep 2005Force Jan 2006CMS Mar 2006NMIJ Apr 2006CENAM Jun 2006MC Aug 2006NEL Nov 2006NMi Feb 2007Force Feb 2007SP Mar 2007NEL Jul 2007これまで(2005年実施)国家標準を用いた方法(2007年実施)外国校正機関:ノルウェー(2007年実施)灯油軽油灯油軽油重油灯油軽油重油国家標準の校正範囲国家標準の不確かさ国家標準値(NMIJ)からの偏差 (%)1,00010,000100,0001,000,000-0.100.050.100.150.20-0.050.00-0.15-0.20Re (-)国内校正機関
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