Vol.3 No.1 2010
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研究論文:石油流量国家標準の確立とわが国の標準供給体制(嶋田ほか)−32−Synthesiology Vol.3 No.1(2010)パス側へ転流させる計測終了時に転流羽根を自由噴流に対して同一方向に等速度で移動させるものであり、アメリカやフランスの国家標準(水流量)、国内の校正機関(水流量)でも採用され、液体の校正設備では世界標準となりつつある。そのままでは、安全性の観点から石油流量校正設備への適用は困難であったが、転流器内の自由噴流の出口面積を制御することにより、噴流流速の増大に伴う静電気の発生を抑制することに成功し、流量計の校正の不確かさに対する流入時間の不確かさの寄与を著しく低減させることに成功した。また、自由噴流で発生する試験液の蒸気や液滴が測定室内へ流出することを防ぐために、転流器内が大気圧に対して微負圧になるように制御し、蒸気などを室外へ強制排出させ、油蒸気および液滴は凝縮、廃油として回収する構造とした。この蒸気および液滴の強制排気により灯油ラインでの校正の不確かさは悪化し、灯油ラインにおける一部の流量範囲では支配的な要因となることがわかった。なお、軽油ラインでは灯油ラインと比較すると蒸気および液滴の影響は小さい。さらに、転流器を利用した校正方法の採用により大量に発生する気泡を除去するために、43 m3の貯蔵タンクおよび回収タンク内に多段スクリーンメッシュを設置し、気泡が十分に除去できることを確認した。校正対象とする流量計は、内径が50 ~150 mmである試験管路に設置される。流量計上流部で理想的な流れを形成させるために、被校正流量計の上流側に内径の100倍(15 m)以上の直管が設置されている。ポンプによる脈動を低減させるために、同一性能である3台の遠心ポンプを並列に運転させ、さらに、秤量タンク取込時の流量変動を低減させる方法[5]を開発した。秤量計が設置されている秤量タンク室では、防爆型の空気調和設備により年間を通じて室温20±5 ℃以内の温度管理および静電気対策のために湿度30 %以上に湿度管理されており、秤量システムの不確かさの低減に寄与している。10 t秤量計には1000 kg校正用分銅を10枚、1 t秤量計には200 kg校正用分銅を5枚吊り下げ、試験前に秤量計を校正することにより、秤量計の経年変化の影響を最小限にしている[7]。また、同じ建屋内にポンプなど多数の振動源を設置することから、極微少な振動と密接に関連する秤量計の不確かさを向上させるために杭基礎工事で十分な防振対策を施した。試験液の温度膨脹による不確かさを低減させるためには、試験液の温度を安定させることが必要である。防爆型の空気調和設備により室温も安定に保ち、さらに試験液の温度制御を行う熱交換器を通過する流量を一定にし、熱交換器にかかる負荷の時間変動を小さくする工夫の結果、十分な試験液の温度安定性(±0.05 ℃以下)が得られた。これらの技術開発の結果、表2中の「5)流量計内の試験液密度測定」および「2)接続管路の質量変化量」による不確かさを最小化することができた[6]。実施される校正技術の妥当性を確認する目的で、再現性に優れたサーボ式容積流量計を開発[9]し、灯油および軽油用の試験ラインに3台常設した。このサーボ式容積流量計を被校正流量計の校正時にあわせて校正し、過去の校正値との比較を行うことで、校正の妥当性を常に確認することができた。校正の前提として、管路内に気体残存がないことの確認と分岐管にあるバルブからの試験液の漏れがないことの確認を、日常の校正作業に取り入れている。以上の安全対策と不確かさ低減のための要素技術を組み入れることにより、体積流量基準の校正の不確かさは目標値とした0.04 %よりも優れた0.03 %、質量流量基準では世界最高精度である0.02 %を達成した[5]。5.2 開発された流量標準の妥当性の検証開発した石油大流量校正設備は計量法において石油流量の特定標準器に指定されており、校正される石油流量の絶対値と値に付随する不確かさの妥当性を検証し、その国際同等性を確認することは、我が国の石油流量計の信頼性を担保する上で非常に重要である。まず、あらかじめSP(スウェーデン標準研究所)(表1参照)との2国間国際比較を実施した結果、NMIJとSPの校正設備での校正値が双方の不確かさの範囲内で一致した[5]。さらに、英国(NEL)が幹事国となり、メートル条約の協力の下で実施される石油流量の国際比較実験[10]に参加した。当初の参加国はヨーロッパ5カ国、アジア2カ国(台湾を含む)および北米2カ国の計9カ国であった。再現性および流量特性の優れた国際比較のための流量計が輸送の途中で破損したため、2005年から2007年までの2年間の長きにわたって実施された。参加したすべての国々での流量計の校正値を図5に示す。今回の比較実験図4 石油大流量校正設備の概略図ポンプ試験管路熱交換器熱交換器転流器・秤量タンク・秤量計貯蔵タンク(灯油:43 m3)貯蔵タンク(軽油:43 m3)SVPサーボ式容積流量計軽油ライン灯油ライン

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