Vol.3 No.1 2010
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研究論文:石油流量国家標準の確立とわが国の標準供給体制(嶋田ほか)−31−Synthesiology Vol.3 No.1(2010)性が高い。そこで、産総研では、世界最高精度の国家標準を実現するために、国家標準設備の校正方法として「転流器による通液式秤量法」を選択し、高精度化に向けた要素技術を開発するとともに、安全性を確保する対策を施すこととした。5 石油流量標準の構築5.1 石油流量校正設備灯油および軽油を大量に保有・使用する設備となるため、安全性を確保する上で、危険物一般取扱所として消防法に準拠した設計であるとともに、保安管理体制を構築することが前提となり、周囲環境に配慮した試験液の屋外漏洩および流出を防止する方策が求められる。さらに、校正方法として選択した「転流器による通液式秤量法」では前章で述べたとおり危険要因が増えるため、十分な安全対策を施すことが必要である。国内では、危険物である石油類を大量に流す大型設備を屋内に設置した例はこれまでほとんどなかったが、国家標準の重要性と特別の安全対策の結果、消防当局から建設が認められた。図3に安全対策と不確かさに関連する要素技術の関係を示す。まず、油の漏洩を防ぐために、施設全体を防油堤で囲み、さらに、建屋周囲にピットと油水分離器を設置した二重の対策が施されている。屋根は、万が一の爆発事故時に、上方へ圧力を逃がすための放爆構造とし、軽量スレート板で構成されているが、室内の温度安定の向上を図るために、断熱材をはさんだ構造とした。石油類が循環する試験ラインが設置される危険区域と制御用コンピュータなどが設置される操作室などの非危険区域とを明確に区分した。また、操作室から試験ラインを監視し、非常時に迅速な対応ができるように、耐火ガラスおよび耐火シャッターを設置した。危険区域では漏洩した油の地下浸透を防ぐために防油床とし、2基の43 m3貯蔵タンクは地下ピット内に、また地下ピットのある部屋に秤量タンクを設置し、万が一の漏洩時にも外部へ流出しない構造とした。石油用流量計の実流校正設備である石油大流量校正設備[5]の概略図を図4に、また不確かさ要因を表2[6][7]に示す。この校正設備は灯油用および軽油用の2つの試験ラインから構成され、流量範囲はともに3~300 m3/hである。灯油用および軽油用の設備は完全に独立しているが、試験液の温度調整用設備を共用するため、両設備の同時運転はできない。本設備では、転流器を用いた通液式秤量法を採用しており、被校正流量計を通過した試験液(灯油もしくは軽油)を転流器により所定時間の間、秤量計の上に配置された秤量タンクへ転流器ノズルから流入させ、秤量計で計測された流入質量を流入時間で除して標準質量流量を得て、さらに質量流量を試験液の密度値で除することで標準体積流量に換算する。これら標準流量と校正対象の流量計の指示値とを比較することにより校正を行う。前章で述べたように転流器を用いた校正方法の特長として、バルブの切り替えによる流れの切り換え方法に比べ計測時の流量変動が少ないことが挙げられる。さらに、転流器には、新たに開発した新形式[8]を採用した。この転流器は秤量タンク側へ流れを転流させる計測開始時とバイ図3 石油大流量標準のために開発された要素技術表2 国家標準における不確かさ要因(灯油試験ライン)注)相対不確かさ:流量計の表示する流量の不確かさを流量値で割った相対量(校正の不確かさ)の内、それぞれの不確かさの要因が原因となっていると考えられている成分を示す。転流器による通液式秤量法を採用 新型転流器の開発室温が安定した理想的な校正環境標準分銅が付属する秤量計高精度温度調節システム:液温安定校正対象の流量計の上流側に設置された長い直管流量安定システムの構築気泡除去:貯蔵タンクおよび回収タンク内の多段スクリーンメッシュ不確かさに関連する要素技術安全対策蒸気排出装置ミスト、蒸気、気泡の発生秤量タンクからの漏油の可能性インターロックによる対策施設全体が防油堤2重防御:建屋周囲にビットを設置地下ピットに貯蔵タンク(43 m3×2)を設置漏油対策防爆空調(オールフレッシュ24時間空調)防爆機器の使用、消火設備(泡消火など)0.008 ~ 0.016 % (簡略化して0.02 %)質量流量基準の校正の不確かさ(相対):1)+2) + 4) + 6)0.016 ~ 0.022 % (簡略化して0.03 %)体積流量基準の校正の不確かさ(相対):1)+2) +3) + 4) + 5) + 6)0.0032 ~ 0.0042 %6) 秤量タンク内への流入時間0.0124 ~ 0.0146 %5) 流量計内の試験液密度測定0.0054 ~ 0.0154 %(0.0030 ~ 0.0146 %)4) 試験液の質量計測 (うち 蒸気及び液滴の影響分)0.0002 %3) 流量・密度変動の影響0.0008 %2) 接続管路内の質量変化量0.0028 %1) 流量計パルス計数時間相対不確かさ不確かさの要因

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