Vol.3 No.1 2010
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研究論文:石油流量国家標準の確立とわが国の標準供給体制(嶋田ほか)−27−Synthesiology Vol.3 No.1(2010)者の有する二次標準の段階で、液種や流量範囲を拡大する技術を開発した。これにより、国内における計量のトレーサビリティ体系が完成し、民間活力を利用した石油流量の標準供給制度(JCSS:計量法校正事業者登録制度)が発足した。2 石油流量標準を作る社会的な目的我が国の年間石油取引はおよそ29兆円に達し[1]、流通額はその数倍と言われている。この数量根拠となる取引証明用の石油流量計は日本国内の石油コンビナートなどでは数万台が稼働し、石油流量計による正確な測定が産業界、社会から要請されている。測定する流量の範囲は1~1000 m3/hがほとんどであり、中でもタンクローリーの出荷場で使用される数百m3/h程度の測定が最も多いと言われている。また、石油の種類は、揮発油(ガソリン)、灯油、軽油、重油、原油など多岐にわたり、流量計の形式としては、容積流量計やタービン流量計が多く使われている。現場で流量計に求められる精度は厳しく、石油流量標準に対して要求される不確かさのレベルは高い。これまでは、産総研が検査(合格もしくは不合格を判定)した基準器と呼ばれる標準器を用いて多くの石油用流量計が検査されてきた。この基準器は、日本国内の一般消費者に不利益を生じさせない、すなわち公平性を担保する目的で、通商用の計量器である小口径の石油用流量計を都道府県の検定所などが検査する機器である。この基準器を用いた制度では公的機関が適切な方法により定められた性能を検査することから、社会全体の計量器の管理費用を大きく削減することができると言える。一方、測定技術の進歩に伴って、自主的な高精度の品質管理を実施するために、この制度の範囲外である高精度の流量測定、多様な液種および広い流量範囲の流量測定に対するニーズが最近高まっている。さらに、経済活動や生産活動の国際化に伴い、我が国の石油製品の国際取引が増大してきており、国家間の流量測定値の整合性を保証することが不可欠となっている。そのため、ユーザーに対して国際的に整合性のある標準を提供し、国際的なシステムに準拠した計量トレーサビリティを確保できる選択肢を与えることが求められているが、これまでは石油流量の国家標準として使用できる校正設備がないため、質量、体積、時間、密度、温度、圧力などの物理量を用いて流量を組み立てる作業は流量計のメーカーやユーザーに委ねられていた。また、計量トレーサビリティの定義が不確かさについて科学的に明確化されたので、不確かさが付随しない従来の制度では計量トレーサビリティを確保できなくなった。さらに、石油製品の国内取引量に対して課税される石油税も年間約6兆円[1]と巨額であり、その計量は社会的に重要な意味をもっている。このため、石油税の数量測定に使用される税務メータ(石油流量計)には、器差(標準値から偏差)が±0.2 %以内という高い精度管理[2]が求められている。この税務メータは、前述のとおり全国の石油コンビナートなどで現在数万台が使用されていると言われ、その精度管理に多大な人的資源やコストを要するため、その合理化が強く求められている。3 石油流量標準を作る技術的な目的石油流量計は石油類の量(体積もしくは質量)を測定するため、校正装置の一部である体積タンク(体積計)もしくは秤量計(質量計)を高精度に校正すれば、容易に流量計を高精度に校正できると一部では誤解されている。体積もしくは質量の不確かさは校正の不確かさの主な要因の一部であるが、温度測定、圧力測定、密度測定、また、校正に用いる接続管路上にある分岐管からの試験液の漏れ、管路内の流速分布および流速変動が流量計の特性に及ぼす影響など、校正の不確かさに大きな影響を及ぼす要因が他にも数多くある。むしろ実際には、これらの要因の方が最終的な校正の不確かさに対して支配的である場合が多く、これらの不確かさ要因を評価することが必要である。さらに、実際の流量計を用いた測定では、その流量計が校正された条件と流量計が使用される条件が異なる場合が多く、流量計に及ぼす管路の形状、使用温度、使用圧力、試験液の物性値などが流量計の特性に与える影響を評価し、実際の測定条件における測定の不確かさを推定することが求められる。これらの評価をすべての測定条件に対して行うことは、費用や時間の関係上、困難であることから、不確かさの要求レベルに応じた不確かさ要因を特定し、効率的な不確かさの推定が求められる。石油類は1 ℃で約0.1 %の体積膨張が生じるが、石油製品の商取引では、測定環境によっては使用温度に応じて本来必要となる補正を行わずに、測定された体積をそのまま用いられることが多い。一方、エネルギー資源である石油類では質量で取引されることが技術的には妥当であると考えられ、新たな国家流量標準に対しては、体積流量に加えて質量流量でも流量標準を供給することが求められる。4 石油流量標準供給を実現する方法の検討4.1 石油流量標準の供給方法石油流量を計測する現場では、少ない資源(コスト、時間など)で可能な限り小さな不確かさで流量を測定し、さらにその信頼性が担保されていることが求められる。一方、標準となる流量は質量、体積、時間、密度、温度、圧力

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