Vol.3 No.1 2010
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研究論文:マイクロチップを用いたバイオマーカー解析コア技術の開発(片岡ほか)−24−Synthesiology Vol.3 No.1(2010)査読者との議論 議論1 実用化質問(中村 和憲:産業技術総合研究所評価部)筆者は、「さらにこれをPOCTデバイスとして臨床の現場で実際に用いるには多くの課題が残されている」と述べているように、実際の利用にはまだまだ距離のある技術と考えます。その点が読者に理解されるように、論文タイトルおよび論文の導入部での工夫が望まれます。そして、多くの残された課題の解析と、解決方法の整理、具体的な取り組みと今後の方向について取りまとめてください。また、実際に臨床検査機器、方法として認可されるまでには、定量性や信頼性のみならずコストも含めて厚生省の認可が必要となります。認可に当たっては保険点数が決まることから、既存の方法に比べてコスト面での優位性を確保することが重要となりますが、この点についての見解はいかがでしょうか。回答(片岡 正俊)今後の課題を第4章に記載しました。技術的内容として①血球分離システムのオンチップ化、②マイクロポンプによる送液系の構築、③マイクロ流路設計があり、その後医療用検査機器として試作機作製後、臨床検査装置としての有用性を証明する。さらに薬事法による医療用検査機器の認証の必要性などを記載しました。具体的なコストの問題は、保険点数も含め現状の検査費用と比較して十分な採算性が見込めることを記載しました。タイトルについてはコア技術の開発を強調するように変更しました。議論2 既存技術との比較コメント(中村 和憲)血糖やアミラーゼ活性の測定に応用していますが、特に血糖に関しては、既に患者が日常的に使用できる血糖センサーが広く利用されています。したがって、既存の方法の問題点の整理、それを解決するために行ったことなどを明記してください。また、本研究で開発された方法が既存の臨床検査法と同等の性能を有していると述べられていますが、既存の臨床検査にとって代わる方法となり得るのか、さらにはPOCTデバイスとして普及する可能性があるのか、コスト面も含めた実用化への道筋など、今後の展開についての記述が望まれます。回答(片岡 正俊)ご指摘のようにPOCTデバイスとして既に血糖値センサーが市販されていますが、hexokinase-G-6-P-dehydrogenase法による血糖値測定法では、二糖のマルトースを単糖のグルコースとして認識し実際よりも高血糖と表示してしまいます。これはマルトースを含む輸液を受けている場合、大きな問題となります(実際、低血糖のため死亡例があります)。このような際には、電気泳動による単糖と二糖を泳動時間で識別することは臨床的に大きな利点になります。アミラーゼ測定については、定量性・易操作性・省サンプル・デバイスのコンパクト性・チップがオートクレーブできるなど、POCTデバイスとして必要とされる条件を具備していることを明示しました。コスト面については、マイクロチップ電気泳動装置の各種実験操作への汎用性の高さから結果的に泳動装置としてのコストが安くなること、さらに臨床検査においては血糖やアミラーゼ測定では保険での検査費用が安いため、これら単体の検査としてはコスト的に無理があるが、他の検査項目と組み合わせたマルチ解析チップとして実用化することで十分なコスト面での競争性が確保されることを記載しました。議論3 個々の技術の性能コメント(中村 和憲)現在用いられている、サンドイッチELISAの問題点は指摘されていますが、骨粗鬆症という長期疾患の診断に、開発手法の測定時間の短縮がどの程度有効であるのか必ずしも明確になっていません。反応時間が従来法の3時間から30分に短縮できるとしていますが、測定原理が抗原抗体反応と酵素反応を利用した手法であり、基本的に同じ原理を利用しているにもかかわらず短縮できることの説明が不十分です。コメント(赤松 幹之:産業技術総合研究所人間福祉医工学研究部門)従来のアガロース電気泳動と比べてマイクロチップ電気泳動では少サンプルで済んで、検出感度が高い理由を簡単で結構ですので記述してください。回答(片岡 正俊)抗原抗体反応系を構築する場合、抗体の抗原認識能の高さが問題になります。我々は、生活習慣病として罹患患者が多く社会的に問題になっている疾患(骨粗鬆症による骨折は寝たきり老人の原因になることが多い)で、さらに特異性の高い抗体が手に入りやすい(抗体単独で市販されている)、その他として健常人でも一定の血中濃度が測定可能なマーカー(血液サンプルから必ずデータが取れること、炎症性サイトカインなどでは健常人で測定限界以下が多くデータ解析が困難→実験系が成り立ちにくい)ということでPICPを選択しました。この点について記載しました。抗原抗体反応の原理は基本的に対象とするマーカーの種類に限らず同じため、PICPであろうが他のマーカーであろうが基本は同じです。このためにも、特異性の高い抗体が市販されている骨粗鬆症のマーカーであるPICPを対象に選択しました。3時間から30分への時間短縮は、POCTに要求される診察室などでの30分での解析に応用可能となります。抗原抗体反応は、抗体と抗原の空間内での衝突により特異的結合が始まりますが、マイクロ空間では分子拡散効果により拡散時間が短縮され結果的に抗原抗体反応時間の短縮が起こったと考えられ、これについても記載しました。電気泳動については、「従来の電気泳動法と比較してマイクロ流路を用いることで省サンプル化、流路内の体積に比較して表面積が大きくなり電気泳動時の熱発生の放出効率の上昇が可能になるため、高電圧の印加による高い分離能を有する。さらにLED励起の蛍光検出系を利用することなどによる高感度化が認められる」と記載しました。議論4 臨床経験に基づいたアプローチコメント(赤松 幹之)臨床経験を持つ生物系研究の立場からのアプローチは、大変有益なことと理解していますが、どの点が臨床経験に基づいた視点なのかが明記されていません。例えば、処理時間やサイズなどは臨床経験に基づかなくても解決すべき課題であることは容易に分かると思います。したがって、臨床の立場からみたときのポイントを明記されることを期待します。回答(片岡 正俊)家庭などでの個人レベルの健康モニタリングシステムの構築にあたり、日常生活で利用可能な血中バイオマーカーデバイスの構築に向けて、まずPOCTデバイスの開発からアプローチを考えています。このため、既存技術であるマイクロチップ基板を用いてできるだけ早い実現を目指しています。さらに臨床の立場からの緊急の外科処置が必要な場合などで、患者の感染症や全身疾患の有無あるいはその病態の把握など、処置方法を決定するのに有用な情報がその場で獲得可能になるとの意見を加えました。議論5 既存技術の組み合せというアプローチコメント(赤松 幹之)個別の技術はオリジナルではなく、その組合せ技術に本研究のオリジナリティがあると理解していますが、組合せ技術のオリジナリティを主張する時には、他の(採用しなかった)要素技術をなぜ選択しなかったのか、といった議論が論文に記載されていることを期待します。全体として、結果として採用した技術を用いて行なったことが書

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