Vol.3 No.1 2010
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研究論文:マイクロチップを用いたバイオマーカー解析コア技術の開発(片岡ほか)−21−Synthesiology Vol.3 No.1(2010)状のマイクロ流路の設計が必要になるなどの問題があることから、我々は、直接マイクロ流路表面への抗体固定法を選択した。図5Cに示すように精製PICPの濃度に依存して化学発光強度の増加を認めたが、同一流路内での発光の不均一性が認められており、定量性が確保されていないことが分かる。これは、1)流路表面での不均一な一次抗体の固定や、2)ブロッキング、各段階での不十分な洗浄あるいは標識二次抗体の部分的な残留の可能性などが考えられる。今回用いたY字形の流路(図5C)では特にマイクロ流路分岐部において化学発光の増強傾向が認められ、より洗浄が容易な流路設計の必要性が認められた。そこで、1)についてはインクジェットを用いたマイクロ流路上で特定部分への一次抗体の固定、2)については流路設計変更による洗浄効率を高めることで、定量性の改善を試みた。 3.2.2 微細化インクジェットによるマイクロ流路表面への抗体固定の応用一定量の抗体をマイクロ流路上の任意の部分に一定面積で固定するため、プログラムによりpl単位の極微量の溶液の任意部分への吐出が可能な微細化インクジェットの利用を行った。微細化インクジェットは、ピエゾ駆動であるクラスターテクノロジー社製のパルスインジェクターを用いた(図6)。このインクジェッターからは、65 plの希釈した抗PICP一次抗体が1液滴容量として吐出が可能である。これを用いて100液滴の一次抗体を吐出・固定すると、ほぼ流路幅に相当する液滴直径となり、これによって抗PICP一次抗体の固定化を行った(図6)。前述のように分岐部を有するマイクロ流路設計では、分岐部分で強く化学発光が求められるなどの洗浄などの問題から非特異的化学発光用語2が認められ、定量性の確保が困難であった。そこで容易にマイクロ流路の洗浄が行える直線状マイクロ流路4本を1枚のCOCマイクロチップ上に形成して(図7A)、定量的検出系の構築を行った。マイクロ流路表面へ一次抗体のインクジェットによる吐出・固定の後、①から②の方向にブロッキング、洗浄を行うことで抗体の非特異的吸着や残留を防止し、30分間の抗原抗体反応の後に化学発光をCCDカメラで検出した(図7B)。この反応系では1本のマイクロ流路あたり必要な血漿量は1.8 µlで、抗原抗体反応は30分であり、従来法の96穴プレート法と比較してそれぞれ1/10以下と1/6になり、省サンプル・高感度な検出系が構築された。ネガティブコントロールとしてPICPを認識しない心筋梗塞マーカーHeart type Fatty Acid Binding Protein (H-FABP)に対する抗体をインクジェットにてマイクロ流路表面へ吐出固定を行ったが、非特異的な発光は認めず、0〜600 ng/mlの濃度範囲で良好な定量性が認められる(図7B、 C)。血漿サンプルを用いた場合は、既存の96穴プレートによるサンドイッチELISA法と同答に正確な測定が可能で、迅速・省サンプルで正確な検出系が構築された。このように、マイクロ流路上で抗原抗体反応を行うことで、POCT技術への適用可能な血中タンパク質検出技術を構築することができた。微細化インクジェットを用いて抗体をマイクロ流路上に吐出・固定する方法では、任意の部分に任意の量の抗体を吐出・固定化が可能になる(図7D)。サンドイッチELISA法による血中タンパク質の検出の原理は、バイオマーカーの種類にかかわらず基本的には同じであり、抗体溶液を含む駆動回路COC基板流路表面に固定された抗体微細化インクジェット300 µm D.C.B.A.発光強度PICP ng/ml0R2 = 0.9958y = 2167.5x + 808326003001500PICP(ng/ml)H-FABP抗体PICP抗体30060012 D.C.B.A.発光強度PICP ng/ml0R2 = 0.9958y = 2167.5x + 808326003001500PICP(ng/ml)H-FABP抗体PICP抗体30060012図7 マイクロ流路を有するマイクロチップ基板の模式図(A)と、これを用いたPICP検出像(B)。検量線(C)と各流路へ任意量の抗体固定を行った際の化学発光像(D)。図6 微細化インクジェットによるマイクロ流路上への抗体固定の模式図と流路表面に固定された抗体。

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