Vol.3 No.1 2010
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研究論文:マイクロチップを用いたバイオマーカー解析コア技術の開発(片岡ほか)−20−Synthesiology Vol.3 No.1(2010)よび解析装置がコンパクトであること、プラスチック基板はオートクレーブなどでの滅菌が可能であることなどを総合すると、血糖値やアミラーゼなどのマーカー解析へのマイクロチップ電気泳動のポテンシャルの高さを示している。ただし、血糖値やアミラーゼ測定は保険での検査費用が110円と比較的安価であり、マイクロチップ電気泳動を用いた単一項目としての検査適応では経済的メリットは低い。しかしながら、後述する各種血中タンパク質の検出など複数の項目検査と組合せた疾患別チップの1項目として測定することで十分な採算性が見込める。3.2 マイクロチップ基板上での抗原抗体反応系構築3.2.1 マイクロ流路上でのサンドイッチELISA法の構築血中に存在するバイオマーカーの多くが各種代謝産物やタンパク質であり、夾雑物が多数存在する血液の中であっても特異的検出が可能で、電気泳動による分子ふるいの必要がない抗原抗体反応系を用いた検査法が既存の臨床検査法では汎用されている。既存の臨床検査では96穴プレートを用いた抗原抗体反応が一般的であるが、その反応時間としては1時間以上必要であり、サンプル量としても数十µlを要する。そこでマイクロ空間の利用による分子拡散効果による抗原抗体反応時間の短縮、さらに省サンプル化を期待して、マイクロチップ基板上に形成したマイクロ流路上での抗原抗体反応系の構築を試みた。この際、バイオマーカー検出に広く利用され定量性に優れたSandwiches Enzyme-linked ImmunoSorbent Assay法(サンドイッチELISA法、図5A)の検討を行った。測定モデルとして、特異性の高い抗体が市販されている骨粗鬆症や癌転移のバイオマーカーである血中I型プロコラーゲンC末端プロペプチド(PICP)を選択した。サンドイッチELISA法では、一次抗体を固相に固定を行う[13]。固相としては、従来の検査法では96穴プレート(図5B)が主に用いられているが、これに対して、ここではマイクロチップ基板(図5C)を固相として用いた。抗体の固定をしてから、ブロッキング用語1を行った後、血漿サンプルあるいは既知濃度の精製PICPとペルオキシダーゼ標識二次抗体を加え、標識二次抗体に結合したPICPの一次抗体への結合を介して固相への固定を行う。抗原と結合していない標識二次抗体を洗浄後、ペルオキシダーゼの基質を加え化学発光をCCDカメラで検出する。POCTデバイスとして利用する場合は、ユーザーはブロッキング操作以降の操作を行う。従来法である96穴プレートでは、20 µlの血漿を用いた抗原抗体反応時間としては3時間が必要になる。マイクロチップ基板としては1枚のマイクロチップ上にマイクロ流路3本を有して、表面にタンパク質固定用の表面処理が施された環状ポリオフィン(COC、住友ベークライト社製)基板を使用した。以降の操作で、マイクロ流路へのµl単位の各溶液導入はピペットマンを用いて行った。サンプルウェル①から②の方向に一次抗体を導入して固定した後にブロッキングを行い、③から②の方向に抗原およびペルオキシダーゼ標識二次抗体を導入する。抗原抗体反応後に洗浄し、①から②の方向に酵素基質を加えて化学発光を検出している。1本のマイクロ流路あたりに必要な血漿量は1 µl以下で、抗原抗体反応時間は30分であり、従来法に比べ大幅な検出時間の短縮と省サンプル化が実現された。マイクロ空間での抗原抗体反応としては、直径数µmのマイクロビーズ表面に抗体を固定して、ビーズをマイクロ流路に導入・固定する方法が既に報告されている。ビーズ法では、ビーズをマイクロ流路内に保持するための複雑な形化学発光の測定酵素基質洗浄血漿サンプル+ペルオキシダーゼ標識二次抗体ブロッキング一次抗体の固定CBA長さ 480 mm深さ 50 µm幅 300 µm321321321PICP conc.(ng/ml)64032080160400標識二次抗体プレート表面抗原一次抗体図5 サンドイッチELISA法による抗原抗体反応。サンドイッチELISA法の原理と実験手順(A)、96穴マイクロプレート(B)、マイクロ流路上でのPICP検出(C)。

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