Vol.3 No.1 2010
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研究論文:マイクロチップを用いたバイオマーカー解析コア技術の開発(片岡ほか)−19−Synthesiology Vol.3 No.1(2010)用することで、特異的に血中グルコースが検出可能なことを報告した(図4A)[8]。そして、種々雑多なタンパク質などが存在する血漿サンプル中で、蛍光標識されたグルコースの電気泳動による分離・分析が可能なことが明らかになった。この検出法では検出限界は0.92 µM、1〜300 µMの範囲で定量的検出が可能で、従来の臨床検査で得られる血糖値と全く遜色なく正確に血中グルコースの検出が可能であった。さらに同日再現性および日間再現性においても高い再現性を有しており、マイクロチップ電気泳動による血糖値測定の実用化の可能性が認められた。一方、既存の臨床検査で用いられるhexokinase-G-6-P-dehydrogenase法では、輸液に含まれる2糖のマルトースの存在により実際より高血糖に測定されるという大きな問題があるが、マイクロチップ電気泳動を用いることで泳動時間の違いから容易に単糖のグルコースと2糖のマルトースの識別が可能になる[11]。その結果、マルトース含有輸液等投与患者での血糖測定における偽高値表示によって実際には低血糖になってしまう危険が防止される。3.1.3 マイクロチップ電気泳動による血中アミラーゼ活性の測定血中アミラーゼは膵炎や唾液腺炎などの診断に用いられるバイオマーカーであるが、アミラーゼはグリコシド結合を加水分解することで、デンプンをグルコース、マルトースおよびオリゴ糖に変換する。既存の臨床検査ではオリゴ糖を酵素基質として利用し、比色法で定量的測定が行われている[12]。アミラーゼはオリゴ糖であるマルトヘキサオース(G6)をマルトトリオース(G3)に加水分解することが既に知られていることから、血糖測定で明らかになったマイクロチップ電気泳動による蛍光標識されたグルコースの高い分離分析能に注目して、8-aminopyrene-1,3,6-trisulfonic acid (APTS)で蛍光標識したAPTS-G6を基質として利用し、分解産物APTS-G3をマイクロチップ電気泳動で分離して、アミラーゼ活性を定量的に測定した(図4B)[10]。ここでは、血糖分離と同様に、泳動用緩衝液としてホウ酸緩衝液を用いてドライビングフォースとした。本法では、検出限界4.38 U/Lで、5〜500 U/Lの範囲で血中アミラーゼ活性の定量的検出が可能になる。血中アミラーゼとして膵臓および唾液腺由来の2種類のアイソザイムが存在するが、膵臓疾患の鑑別診断では抗唾液腺由来アミラーゼ抗体で血漿の前処理を行うことで、特異的に膵臓由来アミラーゼ活性の測定が可能になった。血漿サンプルを用いた場合、高い再現性をもって既存の臨床検査法と同等に正確なアミラーゼ活性測定が可能であることが示され、マイクロチップ電気泳動によるアミラーゼ活性測定への実用化の可能性が認められた。上述した血糖およびアミラーゼ測定では血中グルコースの標識やAPTS-G6の酵素処理に1時間程度必要で、POCTへ応用するには処理時間の短縮が必要である。したがって、蛍光物質あるいは検出系を変更することで高感度化による検出時間の短縮が必要になる。しかし、市販のマイクロチップ電気泳動装置と付属の泳動用チップを用いて血漿を蛍光標識して泳動した後、あるいは蛍光標識オリゴ糖を血漿と混ぜて泳動した後に、付属のDNA鎖長解析ソフトをそのまま使用して血糖や血中アミラーゼ活性が測定される。このように極めて簡単に定量的検出が行える点に大きなメリットがあり、さらに既存の臨床検査法と同等な正確性と再現性を有する。そしてµl単位の血漿を使用するだけで解析ができる省サンプルであること、本体お B.A.APTS-G6+アミラーゼAPTS-G6+血漿APTS-G6G6G3907050血漿蛍光強度蛍光強度泳動時間(秒)泳動時間(秒)グルコース標品160800160800図4 マイクロチップ電気泳動を用いた血中グルコース(A)とアミラーゼ活性測定(B)。(A)グルコース標品と同じ移動時間に血漿中グルコースのピークを認める。既知濃度のグルコース標品の蛍光強度から検量線を作製し、血中グルコース濃度(血糖値)を測定した。(B)APTS-G6単独の電気泳動で、単一ピークを認める。APTS-G6を、精製アミラーゼと反応させることで、APTS-G6とその分解産物であるAPTS-G3の単一ピークを認める。APTS-G6を血漿と反応させることで、血漿中アミラーゼによりAPTS-G3に分解される。既知濃度のアミラーゼとAPTS-G6を反応させ、APTS-G3に相当する蛍光強度から検量線を作成することで、血中アミラーゼ活性が測定される。

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