Vol.3 No.1 2010
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研究論文:1550 ℃に至る高温度の計測の信頼性向上(新井ほか)−14−Synthesiology Vol.3 No.1(2010)新井 優: 温度の標準供給, AIST Today, 3 (4), 34 (2003).独立行政法人 製品評価技術基盤機構: ホームページhttp://www.iajapan.nite.go.jp/jcss/lab/index.htmlR熱電対のPd点校正を含む共同実験報告, 日本学術振興会産業計測第36委員会温度計測分科会 (2005).M.Izuchi, S.Masuyama, H.Ogura and M.Arai: Inhomogeneity evaluation of Type R thermocouples at the palladium melting point, Proc. SICE 2005, 1499-1502 (2005).T.Hamada, J.Ode and S.Miyashita: An uncertainty estimation of Type R thermocouples exposed at Pd fixed point, Proc. SICE 2005, 1090-1095 (2005).独立行政法人 製品評価技術基盤機構: 文書番号JCT21306 技術的要求事項適用指針(接触式温度計(熱電対)).独立行政法人 製品評価技術基盤機構: H14~16年度 JCSS校正証明書発行件数の推移http://www.iajapan.nite.go.jp/jcss/pdf/H14-16.pdf独立行政法人 製品評価技術基盤機構: H18~20年度 JCSS校正証明書発行件数の推移http://www.iajapan.nite.go.jp/jcss/pdf/H18-20.pdf産総研プレスリリース: 産総研開発の校正用熱電対が民間企業により実用化, 2006年3月27日.http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2006/pr20060327/pr20060327.htmlIEC 62460, Temperature – Electromotive force (EMF) tables for pure-element thermocouple combinations. International Electrotechnical Commission (2008).社団法人日本電気計測器工業会: JCSSの知識 -温度計の校正を例として-, 日本工業出版株式会社, 東京 (2006).[21][22][23][24][25][26][27][28][29][30][31]執筆者略歴新井 優(あらい まさる)1984年工業技術院計量研究所入所。2001年産業技術総合研究所計測標準研究部門温度湿度科高温標準研究室長に就任。現在、計測標準研究部門副研究部門長、温度湿度科科長を兼務。高温用の白金抵抗温度計の研究を行うとともに、抵抗温度計、熱電対のための計量標準の開発と国際同等性確認の活動に従事。国際度量衡委員会の測温諮問委員会への日本代表。1998年市村学術賞受賞。日本電気計測器工業会を始め関連工業会や日本学術振興会などで温度標準と計量トレーサビリティの普及活動に取り組んでいる。本論文では、温度定点装置の開発と研究全体の統括を担当した。小倉 秀樹(おぐら ひでき)2000年工業技術院計量研究所入所。2001年産業技術総合研究所計測標準研究部門温度湿度科高温標準研究室に配属。2007年から1年4ヶ月間、フランスの国家計量標準機関であるLNEに客員研究員として滞在し、高温用熱電対、および熱電対用共晶点の研究を行った。現在まで、熱電対、及び熱電対用温度定点の研究開発に従事。日本学術振興会産業計測第36委員会温度計測分科会の作業部会にて、現在、副主査として熱電対校正技術の検討、および信頼性の検証を校正事業者と協力して行っている。本論文では、熱電対の安定性の研究と共晶点の開発を担当した。井土 正也(いづち まさや)1980年工業技術院計量研究所入所。2001年産業技術総合研究所計測標準研究部門温度湿度科高温標準研究室に配属。熱電対の温度標準の研究開発・校正業務に従事。トレーサビリティの信頼性確保のため、技術委員会分科会委員及び技術アドバイザーとしてJCSSの運営・審査に協力している。本論文では、不確かさ評価と熱電対校正の品質システムの確立を担当した。査読者との議論 議論1 研究の動機コメント・質問(小野 晃:産業技術総合研究所)本論文は、我が国における熱電対のトレーサビリティ体系を俯瞰的に設計し、新たな要素技術を開発しつつさまざまな要素技術を統合し、国際的な動きとも連動させながら社会に受け入れられるトレーサビリティ体系を構成していった、優れた第2種基礎研究・製品化研究と思います。身近なところで大量に使われている熱電対だけに、それによる温度測定の信頼性が向上することの社会的・産業的な効果は非常に大きいと思います。ところで熱電対は高温域では信頼性に問題無きにしもあらずという指摘が、従来鉄鋼業を中心とした技術者からしばしば出されていましたが、一方では、熱電対は古くから使われている汎用の温度計であり、先進的な研究を行う余地はもはやないのではないかという見方もあって、日本では長く研究が下火になっていました。このような状況の中で著者らが、熱電対に新たな研究要素を見出し、従来よりも格段に優れた信頼性で熱電対のトレーサビリティ体系を構築したことを、ある種驚きをもって受け止めています。本研究を開始するに当たっての著者らの動機はどのようなものだったのでしょうか。また本研究の成功の要因は何だったと考えますか。研究の当事者としての経験に基づいてお聞かせ下さい。回答(新井 優、小倉 秀樹、井土 正也)熱電対の不均質の問題を正面からとらえることを決意したことが最大の動機付けであったと思います。本文中で述べましたが、熱電対は不均質が原因で、温度分布による影響を受けてしまいます。このため、海外の標準機関においては熱電対の校正に対して、この値は熱電対が試験された時と同じ状況で使用される場合にのみ適用される、という限定を付けている場合もあります。しかし、これでは、熱電対の校正を受けたユーザーは、その値をそのまま利用することができないことになってしまいます。取り組んですぐに、不均質が、ばらつきではなく、かたよりを生じさせることと、高温にさらされた時間の経過とともに増大することを、どのように不確かさ評価として扱うかという課題に直面しました。これを私たちは、①熱電対の不均質そのものを小さくする、②不均質を適切に評価する、③校正を受けるユーザーに事前にユーザーの保有する装置の温度分布のデータを提出してもらい、評価法の妥当性を確認する、という手順で解決を図りました。成功した理由は、月並みな言葉ですが、「あきらめず徹底的に追求したこと」につきるのではないかと思います。不均質の増大を時間的に追跡することは、根気のいる作業ですが、高精度な校正装置を開発し、これらの装置を利用して効率的で精密な熱電対の評価方法を確立できたことが成功の要因の一つであったと思います。今回私たちが行った詳細なレベルまで精密に評価することは、時間と手間がかかるため、なかなか行われていませんでした。効率良く評価ができるようになったため、さまざまな条件で実験を行えるようになりました。これらの結果、従来よりも格段に優れた信頼性で熱電対のトレーサビリティ体系を構築できたのだと思います。
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