Vol.3 No.1 2010
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研究論文:1550 ℃に至る高温度の計測の信頼性向上(新井ほか)−12−Synthesiology Vol.3 No.1(2010)温度定点定点の温度値/ ℃校正の拡張不確かさ/℃(約95 %の信頼の水準)銀点銅点コバルト-炭素共晶点パラジウム-炭素共晶点961.780.091084.620.111324.00.31491.90.3校正事業者がJCSSに登録されるためには、技術的要求事項適用指針に適合することが要件になっている。この指針は、校正事業者に対する国際規格であるISO/IEC 17025に規定されている技術的要求事項を明確化し、解釈を示すものであり、独立行政法人製品評価技術基盤機構が発行して公開している技術文書である。またこれは校正事業者において校正が行われる際の技術能力を第三者が認定するための技術基準ともなっている。この中の特定二次標準器又は常用参照標準が具備すべき条件などは、上記の共同実験の結果を踏まえて規定した。不均質の取り扱いについての注意事項も多く記載された[26]。6 標準整備の効果と今後の課題6.1 熱電対のトレーサビリティ体系の整備による効果熱電対のトレーサビリティ体系を構築したことによる現実の効果として、我が国のJCSS校正事業の温度範囲が拡大し、さらには登録校正事業者が発行するJCSS校正証明書の件数が増加したことが挙げられる。JCSS校正証明書の発行件数は2002年度には約2000件[27]であったが、2008年度には約10000件[28]と6年間で約5倍となった。温度計の製造事業者や校正事業者が出す規格適合証明や校正値が、社会で広く使われている温度計の信頼性を確保することに寄与している。6.2 白金パラジウム熱電対の産業界への普及本研究では、仲介標準器として開発した白金パラジウム熱電対が、熱処理などを適切に行うことにより、極めて高い性能をもつことを示した。この熱電対は当初産総研から研究開発品として有料で頒布したが、頒布先は産総研に校正を依頼する校正事業者のみに限定されていた。こうした校正事業者以外のユーザーも広くこの白金パラジウム熱電対を使えるように、この熱電対の作製法を民間企業へ技術移転することを進めてきた。開発された白金パラジウム熱電対は、作製方法の技術移転を行った株式会社チノーから2006年4月に販売が開始された[29]。また、白金パラジウム熱電対は仲介標準器としてだけでなく、一般の温度計測用熱電対としての使用も期待される。広く工業的な利用を促進させるため、産総研はIECでの標準化にも取り組み、2008年にIEC 62460として規格化された[30]。6.3 パラジウム-炭素共晶点の開発3章で述べたように、将来的には四つの温度定点(銀点、銅点、コバルト-炭素共晶点、パラジウム-炭素共晶点)の標準値を、白金パラジウム熱電対を仲介標準器として供給することを目指している。そのために現在パラジウム-炭素共晶点の開発とその評価を精力的に進めている[5]。コバルト-炭素共晶点と同様に共同プロジェクト(Euromet Project 857)に参加して欧州の代表的な国立標準研究所PTB(独)、NPL(英)、LNE(仏)とパラジウム-炭素共晶点の温度値の国際比較も行っており、熱電対を仲介標準器とした標準供給の準備を着実に進めているところである。表2に、パラジウム-炭素共晶点を含む各温度定点での校正値の不確かさが、将来どの程度小さくなるか予想を示す。現在、金属-炭素共晶点は1990年国際温度目盛(ITS-90)用語5の定義定点には採用されていない。そのために、熱電対用に製作したコバルト-炭素共晶点セルの温度値は、ITS-90に基づいて校正された放射温度計によって測定され、決められている。表1に示したコバルト-炭素共晶点における熱電対の校正の不確かさの要因には「定点実現装置の不確かさ」があり、0.26 ℃と最も大きな不確かさの要因となっている。そしてこの不確かさの要因の中には、上述の放射温度計による測定の不確かさが含まれている[6]。今後、放射温度計による測定の不確かさがより小さくなる見込みであり、その結果、コバルト-炭素共晶点とパラジウム-炭素共晶点での熱電対校正の拡張不確かさ(約95 %の信頼の水準)は0.3 ℃程度になると予想される。これが達成されると、白金パラジウム熱電対を仲介標準器として、1500 ℃までの温度域でより小さな不確かさで標準供給が可能になる。7 おわりに-標準整備計画の意義1990年代後半から、我が国の社会ニーズに基づいた標準整備計画を策定し、それを基盤にしたトレーサビリティ体系を整備してきたが、それらは当然のことながら、産業界の動向と密接な関わりをもって実施されてきた。2001年に開始した10年間の標準整備計画の実行は、現在終着点が見えた段階にあるが、この間産総研がいつまでに、どの計量標準を整備し供給するかを、校正事業者を始めとして品質管理を重視する企業に明示して、我が国に最も適した計量標準の体系を議論しながら構築してきた。すなわち、それまで産業界が作り上げてきた信頼性確保のための技術基盤と計量トレーサビリティを融合させる必要性を双方が意識して活動してきた。温度標準の場合は、産総研が供給する国家計量標準の表2 今後予想される各温度定点における白金パラジウム熱電対の校正の不確かさ

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