Vol.3 No.1 2010
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研究論文:1550 ℃に至る高温度の計測の信頼性向上(新井ほか)−11−Synthesiology Vol.3 No.1(2010)従って校正を実施し、記録を保管するようにした。特に、熱電対の校正に特有の不確かさの要因であるドリフトと不均質についての評価方法を詳細に規定し、それらが熱電対の校正値とその不確かさに与える影響を定量的に評価する手順を技術マニュアルで定めた。2006年5月には、独立行政法人製品評価技術基盤機構が運営する認定プログラムのもとで産総研の熱電対の校正業務が国際規格に適合すると認定された。慎重に不確かさの評価を行って熱電対の校正方法を確立し、さらに国際比較によって検証した技術を定常的に継続するために必要な要素が品質システムであり、産総研の行う熱電対の校正の信頼性を国内的・国際的に高めている。5 トレーサビリティ体系の整備5.1 熱電対のトレーサビリティ体系の設計国家計量標準が校正事業者に利用され、産業界が用いる温度計を校正するまでの温度のトレーサビリティの体系を我が国の計量法のJCSS用語4制度に基づき構築した。国家計量標準として、産総研の銀点(2002年)、銅点(2002年)、パラジウム点(2005年)の各定点実現装置を計量法で定める特定標準器に順次指定し、産総研からこれらの3点での校正値を仲介標準器に与えて標準値として校正事業者に供給した[21][8]。校正事業者においては仲介標準器から自らが保有する温度定点装置に標準値を移した上で温度目盛を作る方法を採用した。ただし、パラジウム点については、実用標準熱電対へ比較校正により標準値を移す方法も選択できることとした。産総研が校正を行う仲介標準器は、計量法で定める特定二次標準器に相当し、銀点と銅点では白金パラジウム熱電対、パラジウム点ではR熱電対とした。熱電対を仲介標準器としてパラジウム点の標準値の供給を開始したことにより、図18に示すように、校正事業者は実用標準熱電対に対して1554 ℃までの温度標準を持つことが可能になり、R熱電対を始め各種の熱電対に対して、実用標準を用いた校正ができることになった。現在、産総研では、特定標準器による特定二次標準器の校正を年間10件程度行っており、それらに対して特定標準器による校正の結果であることを示すため計量法に定められた「jcss」の標章を付けた校正証明書を発行している。jcss校正に加えて、産総研では依頼試験としてコバルト-炭素共晶点の標準値の供給を開始(2009年)した[7]。これにより、校正事業者が作った温度目盛のより正確な検証が可能になった。このようにしてJCSSに登録した校正事業者は、例えば、銅点までの各種の定点実現装置の校正、高温域については貴金属熱電対(R、S、B、Pt/Pd)、卑金属熱電対(N、K、E、J、T)および指示計器付温度計の銅点までの定点校正、最高1554 ℃までの温度範囲での温度計の比較校正など、自社の設備に合わせてさまざまな校正事業を柔軟に選択して行えるようになった[22]。5.2 国内校正事業者との共同研究と技術文書の作成標準熱電対としての白金パラジウム熱電対の技術を普及するために、日本学術振興会産業計測第36委員会温度計測分科会の作業部会で2001年6月から2002年3月にかけて、白金パラジウム熱電対の持ち回り試験を行った。銅点における校正作業に伴う熱電対のドリフトを評価することを目的として、同一ロットから取った白金素線とパラジウム素線から4本の白金パラジウム熱電対を同一条件で作製して試験に供した。これらの熱電対を「産総研→4事業者→産総研」と回送し、続いて回復アニールをした後に、再び「産総研→残りの4事業者→産総研」と回送し、各事業者での銅点校正作業によって校正値がどの程度変化するかを調べた。持ち回り試験に先立って、白金パラジウム熱電対を作製するための熱電対素線や絶縁管などの材料仕様条件、素線や絶縁管等の前処理および組み立て後の熱処理などに関する組立条件、ならびに使用条件について、各事業者の熱電対作製用設備および校正用設備、産総研の校正用設備などの仕様をもとに検討を行った。また、同作業部会では2004年に、産総研を含む7事業者で「R熱電対のPd点校正を含む共同実験」として、2種類の共同実験を行った[23]-[25]。Japan Calibration Service Systemユーザ特定二次標準器特定標準器Pd点Cu点Ag点Pd点Cu点Ag点JCSS 0.2 ℃~2 ℃Pt/Pd熱電対Pt/Pd熱電対Pt/Pd熱電対R熱電対R熱電対その他の熱電対等産総研校正事業者jcss 0.09 ℃0.79 ℃0.11 ℃Co-C共晶点Pd-C共晶点Co-C共晶点依頼試験 0.53 ℃RまたはS熱電対図18 高温域における熱電対のトレーサビリティ体系図(2010年2月時点)

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