Vol.3 No.1 2010
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研究論文:1550 ℃に至る高温度の計測の信頼性向上(新井ほか)−9−Synthesiology Vol.3 No.1(2010)のロットを選択すれば、ドリフトと不均質を大幅に減少させることができることを示唆する。ただし、TC-dで使用されているような素線を常に得ることは容易ではない。そのため、TC-a、TC-b、TC-cで使用されているような比較的取得しやすい素線を用いて、ドリフト、不均質を小さくする手法を調べた。炉中での熱処理は、熱電対が実際の使用前に受ける熱履歴の最後の工程であることから、熱電対の特性に深く関わることが予想される。そこで、素線の歪み除去のため炉中で1100 ℃で3時間の熱処理を行った後に、 450 ℃から1080 ℃までの温度範囲の1点の温度で最終熱処理を施すことにより、最終熱処理温度が異なる合計11本の熱電対を作製した。これらの熱電対のパラジウム素線には最も大きなドリフトを示したTC-aと同じロットのものを用いた。また、図11での白金パラジウム熱電対の熱起電力が100時間でほぼ安定していることから、最終熱処理の時間は100時間を選んだ。図15は、上述のように作製した11本の白金パラジウム熱電対に対して、銅点実現装置を用いて1085 ℃へ曝露した場合の熱起電力のドリフトを示し、図16は同じくその不均質を示す。図中に記す温度は最終熱処理温度である。参考のため、450 ℃で10時間熱処理した熱電対の結果も黒丸でプロットしてある。どの熱電対も1085 ℃への曝露開始後100時間程で熱起電力は安定した。最終熱処理温度が730 ℃のとき、熱起電力は100時間で約4 µV(約0.2 Kに相当)と最大の変化を示した。ここで注目すべきは、850 ℃または1030 ℃で100時間最終熱処理を行ったものはドリフトと不均質がともに非常に小さくなっている点である。熱起電力の変化は150時間にわたって0.5 µV(24 mKに相当)以下となっており、この結果は、適切な熱処理を行うことによって、白金パラジウム熱電対のドリフトと不均質を抑えることができることを明らかにした[12]。銀点実現装置を用いた962 ℃への曝露についても同様なドリフトと不均質の測定を行った結果、850 ℃での最終熱処理の効果は素線のロットが異なっても有効であることがわかった[15]。また、コバルト-炭素共晶点を用いた1324 ℃への曝露についても同様の測定を行った結果、1030 ℃での最終熱処理はコバルト-炭素共晶点でのドリフトの低減に有効であることがわかった[16]。銀点より低い温度への曝露では白金パラジウム熱電対のドリフトと不均質は急速に小さくなった[17]。以上の結果は、適切な素線と作製法、熱処理法を選択することによって、1330 ℃までの温度で白金パラジウム熱電対のドリフトと不均質を非常に小さくできることを意味する[16]。これにより、銀点、銅点、およびコバルト-炭素共晶点の各温度でドリフトと不均質を小さくし安定化させる手法を見い出すことができた。4.2.4 白金パラジウム熱電対とR熱電対との比較R熱電対の場合、1085 ℃への曝露では熱起電力は単調に減少し続けていく傾向を示し、300時間曝露し続けた場合0.2 ℃程度ドリフトした [9][14]。それに対して、図15で示されたように、適切な最終熱処理を行った白金パラジウム熱電対では、1085 ℃の曝露を150時間行ってもドリフト450 ℃550 ℃600 ℃660 ℃730 ℃800 ℃850 ℃900 ℃960 ℃1030 ℃1080 ℃0050100150200250時間 / h-112345熱起電力変化 / µV50 mk450 ℃550 ℃600 ℃660 ℃730 ℃800 ℃850 ℃900 ℃960 ℃1030 ℃1080 ℃0050100150200250時間 / h-112350 mk(熱起電力8 cm-熱起電力0 cm) / µV図15 異なる最終熱処理温度に対する白金パラジウム熱電対のドリフト図16 異なる最終熱処理温度に対する白金パラジウム熱電対の不均質

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