Vol.2 No.4 2009
72/92
シンセシオロジー インタビュー−332−Synthesiology Vol.2 No.4(2009)インタビューシンセシオロジー編集委員会日本工学アカデミーは工学に関するさまざまな事項を高い見地から検討・議論し提言をまとめていますが、その中の「工学の克復研究会」は現代における工学のあり方をさまざまな角度から検討しています。工学のあり方はシンセシオロジーの理念とも深く関係していますので、研究会メンバーのお一人である長井寿さんに本誌小野編集委員長がインタビューして「工学の克復」に関する考えを伺い、シンセシオロジーとの関係を話し合いました。工学の克復とシンセシオロジー今なぜ、工学「克復」研究会なのか小野 日本工学アカデミーの「工学の克復研究会」は、私たちのシンセシオロジーと同じ思いがあるのではないかと思っています。困難な状況を乗り越えるという“克服”ではなく、あえて元の状態に戻すという“克復”にされた意図は何でしょうか。長井 昨今、「理科離れ」とか「さらば工学部」といわれますが、工学というのは非常に大事な分野なのに、なぜ若い人たちから見捨てられていくのか、おかしいではないかと思っていました。それともう一つ、日本工学アカデミーの会員は日本を代表する方々ですが、高齢化しています。日本の伝統ある学会は総じて会員数は増えず、高年齢化している。「このままで本当にいいのだろうか?」という意味で、オーバーカムの“克服”ではなく、病気になって、そして元の健康体を取り戻すという意味の“克復”を使っているわけです。もう一度健全な形に戻らないといけないのではないかという意味で、若い人たちにきちんと評価され、工学の価値が広まるきっかけをつくりたいという問題意識を持っています。イノベーションの本質を研究者はもう一度考えるべき小野 今、世界的にイノベーションに高い関心が持たれていますが、「工学の克復」はイノベーションとつながるところがあると思うのです。日本の産業界や社会・国民にとってのイノベーションをどのように捉えていらっしゃいますか。長井 技術のブレークスルーは大事なことですが、日本ではある種のブレークスルーをイノベーションと同義語と捉え過ぎるという面があります。産業界の方々は、手持ちの指導原理というか、科学の原理原則の限界が見えてきて、2020年~2030年くらいに全部利用し尽くしてしまうといっています。世界の変化や新しいニーズに対応するために手持ちのものでは限界だということがわかっているので、本格的なイノベーションを起こす手だてを求めています。社会・国民にとっては、昨年のような資源・エネルギー価格の高騰はアメリカの経済破綻で何となく鎮静化しましたが、この流れは変わらないだろうという、むしろ確信が強まっています。資源・エネルギー、地球環境の社会的制約条件をどのように克服して、安心して暮らせる豊かな社会をつくるのかということが社会・国民からいわれているイノ長井 寿:日本工学アカデミー工学克復研究会 物質・材料研究機構小野 晃:シンセシオロジー編集委員長 産業技術総合研究所小野 晃 氏(左)と長井 寿 氏(右)
元のページ