Vol.2 No.4 2009
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研究論文:最先端の地質研究と国土の基礎情報(斎藤)−330−Synthesiology Vol.2 No.4(2009)参考文献地質調査所: 100万分の1日本地質図第3版, 地質調査所 (1992).磯﨑行雄, 板谷徹丸: 四国中西部秩父累帯北帯の先ジュラ系クリッペ−黒瀬川内帯起源説の提唱−, 地質学雑誌, 97, 431-450 (1991).磯﨑行雄, 橋口孝泰, 板谷徹丸: 黒瀬川クリッペの検証, 地質学雑誌, 98, 917-941 (1992). 産総研技術情報部門: 産業技術総合研究所におけるアウトカム事例調査(2)−ライフサイクルアセスメント(LCA)−, −地質図幅−, −シリコン半導体−, 産総研技術情報部門調査報告書 (2004).R. L. Bernknopf, D. S. Brookshire, D. R. Soller, M. J. McKee, J. F. Sutter, J. C. Matti and R. H. Campbell: Societal value of geologic maps, U.S Geological Survey Circular 1111 (1993).小笠原正継, 大井健太(編): 地質図の社会的価値−−米国地質調査所サーキュラー1111(日本語翻訳版)および米国における地質図の経済学的評価の動向−−, 地質調査総合センター研究速報, 37 (2006).産総研技術情報部門: 産総研におけるアウトカム事例調査【7】地質図幅, 産総研TODAY, 5 (5), 40-41 (2005).斎藤 眞: 横山地域の地質図の変遷, 地質ニュース, 561, 4-4 (2001).M. Miyamura: Stratigraphy and geological structure of the Permian formations of Mt. Ibuki and its vicinity, central Japan, Geol. Surv. Japan Report, 224 (1967).岐阜県: 土地分類基本調査「横山」, 岐阜県 (1995).斎藤 眞, 沢田順弘: 横山地域の地質, 地域地質研究報告(5万分の1地質図幅), 地質調査所 (2000).斎藤 眞, 宮崎一博, 利光誠一, 星住英夫: 砥用地域の地質, 地域地質研究報告(5万分の1地質図幅), 産総研地質調査総合センター (2005).[1][2][3][4][5][6][7][8][9][10][11][12]執筆者略歴斎藤 眞(さいとう まこと)1989年名古屋大学理学研究科博士前期課程地球科学専攻修了。1990年同博士後期課程中退。同年通商産業省工業技術院地質調査所入所。2001年産総研地球科学情報研究部門主任研究員。2009年より地質情報研究部門シームレス地質情報研究グループ長。専門は地質学。付加体を中心に九州〜南西諸島北部の地質の研究を行っている。これまで5万分の1地質図幅筆頭4編、20万分の1地質図幅筆頭4編、非筆頭2編作成。博士(理学)。地質情報の普及活動も得意。査読者との議論議論1 他の機関が取得した地質データの活用質問・コメント(小野 晃:産業技術総合研究所)5万分の1地質図幅が、地質学の最新の成果に基づいて、また社会での利活用を想定しつつ、多角的な視点から調査・検討されて作成されることが分野外からも理解でき、構成・内容ともに優れた第2種基礎研究の論文となっていると思います。ところで地質図の作成は、この論文でも述べられているように、わずかな数の地表に出ている露頭の地質データから、広大な地下空間の3次元構造を予測するという、ある意味大変野心的な作業であるとの印象を持ちました。たぶん数はもっと少ないでしょうがその地域にボーリングデータがあった場合、それはどのように利用されるのでしょうか。地質図を作成するための基礎データとして利用されるのでしょうか、あるいは作成した地質図の正確さを検証するためのデータとして使われるのでしょうか。またその地域の自治体や民間企業も、それぞれの必要性から独自に地質調査を行う場合があると思います。そのようなデータは、産総研による地質図幅の作成に当たって活用されるのでしょうか。回答(斎藤 眞)1)査読者はわずかな数の地表にでている露頭の地質データから予河野知治, 田中 均, 高橋 努, 利光誠一, 森 大輔: 熊本県秩父帯下部白亜系砥用層の層序と構造, 御所浦白亜紀資料館報, 3, 11-22 (2002).斎藤 眞, 利光誠一: 九州中部に分布する下部白亜系砥用層の基盤から産出したペルム紀放散虫化石, 地質学雑誌, 109, 71-74 (2003).斎藤 眞, 斎木健一, 利光誠一: 九州中部, 熊本県砥用町の黒瀬川帯の整然層から産出した後期デボン紀Leptophloeum, 地質学雑誌, 109, 293-298 (2003).K. Miyazaki: Low-P-high-T metamorphism and the role of heat transport by melt migration in the Higo Metamorphic Complex, Kyushu, Japan, J. Metamorphic Geol., 22, 793-809 (2004).斎藤 眞, 宮崎一博, 塚本 斉: 九州中部, 熊本県泉村-砥用町地域の“黒瀬川帯”蛇紋岩メランジュ中の単斜輝石岩, 地質調査研究報告, 55, 171-179 (2004).斎藤 眞, 宮崎一博: 九州中部, 熊本県八代市泉町の“黒瀬川帯”蛇紋岩メランジュ中の含ひすい輝石変班れい岩, 地質調査研究報告, 57, 169-176 (2006).斎藤 眞, 宝田晋治, 利光誠一, 水野清秀, 宮崎一博, 星住英夫, 濱崎聡志, 阪口圭一, 大野哲二, 村田泰章: 20万分の1地質図幅「八代及び野母崎の一部」, 産総研地質調査総合センター (2010). 印刷中斎藤 眞, 木村克己, 内藤一樹, 酒井 彰: 椎葉村地域の地質, 地域地質研究報告 (5万分の1地質図幅), 地質調査所 (1996).[13][14][15][16][17][18][19][20]発されることが期待できる。新たな活用方法として期待される観光を初めとする地域振興に対する活用については、これまで知られている鍾乳洞やこの地域特有の約9万年前の阿蘇−4火砕流堆積物の溶結凝灰岩を使った石橋等については研究報告書に記述した。「砥用」図幅内では、これまで知られている白亜紀アンモナイト等の大型化石の産出のほか、新たにデボン紀のシダ植物化石[15]、巨大結晶からなる輝岩[17]、ひすい輝石の発見[18]等、天然記念物やジオパークの見学スポットであるジオサイトにできる要素も見つかった。また、国体の山岳競技に使われた山や、地元の特徴的な景観をなす山々の地質が明確になったことから、地域の自然の成り立ちを語る資料としても活用できる。以上のように、地質図幅はその作成後、長期にわたって様々な形で活用されることが予想される。また、これまでの地質図の使われ方を考慮すると、現在想定していない活用方法が今後社会情勢の変化や、災害等で発生することも充分考えられる。そして、これからの社会が持続的発展をするためには人間が自分の周囲の自然環境を科学的に理解していくことが必要であり、地質図幅はそのために重要な役割を果たすであろう。
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