Vol.2 No.4 2009
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研究論文:実時間全焦点顕微鏡の開発・製品化(大場)−267−Synthesiology Vol.2 No.4(2009)ら始めた。この期では、単純な処理をパソコンの持つメモリ容量と処理能力内で行うために、メモリ効率を上げるための逐次処理アルゴリズムと、処理能力を上げるための並列処理アルゴリズムの開発を行った。3.1 理論的構成(Depth from Focus 法)光学顕微鏡画像の場合、被写界深度の浅さ問題は操作性に大きな問題を与えることを前述したが、これは同時に物体の三次元計測手法[5]の一つであるDepth from Focus 法[6][7]を実現するためには大きな利点であると言える。つまり、全焦点カメラは被写界深度の浅さ問題を解決するためのものであると同時に、この問題を逆手に用いることにより、どこでもピントの合った全焦点画像が獲得できるだけではなく、Depth from Focus 法を用いることにより単眼であるにもかかわらず、物体の三次元形状を獲得することが可能となる。図3にDepth from Focus 法の概念図を示す。奥行きの異なる物体を観測する場合、撮像面までの距離(ピント)を振りながら画像各点で画像の濃淡データの局所周波数を計測しピークを検出する。一度、ピントの合った撮像面までの距離が得られれば、ガウスのレンズ法則を用いることで、物体までの距離が算出できる。ピントが合っているかどうかは、焦点距離:f、物体距離:l 、もしくは画像距離:l′を動かしながら撮像した画像の観測点周りの局所空間周波数分析を行い、空間周波数が最大のところがピントの合ったところであるといえる。この方法は、オートフォーカス機構としても多く使われている手法であり、直感的にボケ部分は周波数が低く、ピントが合った部分は周波数が高いことがわかる。基本的には可変焦点機構でレンズのピントを動かしながら画像を1枚1枚取りこみ、それぞれの画像全ての画素点周辺での局所空間周波数分析を行い、周波数のピ-クの部分、つまり焦点が合った部分をピクセル単位で各画像からピックアップし、1枚の画像として張り合わせていけば全焦点画像が得られる。また各点での焦点距離と画像距離からその三次元デ-タも得られる。画像のピントの合い具合の評価手法には、焦点距離を変えながら画像の明るさの変化をみる方法など、さまざまな方法があるが、本論文では、最終的な製品化を視野に入れ、画像処理のアルゴリズムをハードウエア的に実装しやすいなどの理由から、各画素の局所空間周波数分析は画像濃淡値の空間的な分散で評価するものとし、次式のImage Quality Measure (IQM)を定義する。このIQM値は、本来、画像の鮮明度を示す指標の一つとして定義されているものであり、ピントが合っているか否かを判定するためのものではないが、画像をデジタル化し、その画像をデジタル処理することを前提に、処理アルゴリズムが将来的に高速化することが容易なこのIQM値をここでは用いることとした。IQM = ΣΣ{ΣΣ I(x , y) -I(x+p , y+q)} x=xixfD1y=yiyfp=Lcq=LrLcLrここで(−Le , −Lr)−(Le , Lr)と(xi , yi)−(xf , yf) はそれぞれ、分散評価と平滑化を行うための小領域である。また、Dは画素単位で正規化するための評価を行うすべての画素数である。焦点距離を動かしながらIQMの値のそれぞれ画素毎もしくは領域毎に評価し、IQM値のピ-クを検出し、その時に焦点距離:fと画像距離:l′から算出した物体距離:lを、それぞれの画素位置に対するマトリックス要素にそれぞれ代入することで、対象物の三次元データを作成する。3.2 逐次処理による構成(メモリの軽減のため)前述のように全焦点画像と奥行き画像を理論的に同時に獲得するのは、Depth from Focus法を使うことで可能であるが、実際に開発を始めた2000年当時、前節に述べたIQM値を計算するアルゴリズムを構築すると、256画素×256画素、30枚程度の画像から1枚の全焦点画像と奥行き画像をそれぞれ実時間で獲得するためには、2 Mbyte程度の画像メモリと、1秒間に30枚×30フレーム=900枚の画像の獲得と処理能力(2000年当時のパソコンで3分程度)が必要とされた。そのためには、まず、全焦点画像および奥行き画像を30フレーム毎秒で獲得するためにN枚の異なる奥行きの画像を必要とする場合には、30×Nフレーム毎秒での画像を撮像する高いダイナミックレンジの撮像素子が必要とされ、さらにはそれだけの画像データを処理・表示するための高速処理システムが必要とされる。物体レンズボケボケ焦点距離合ビン合ビン結像面局所周波数図3 Depth from Focus法

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