Vol.2 No.4 2009
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研究論文:最先端の地質研究と国土の基礎情報(斎藤)−323−Synthesiology Vol.2 No.4(2009)がある。ジュラ紀付加体とそれ以外の蛇紋岩などの地層・岩石との関係や区分には諸説があり、ジュラ紀付加体以外の部分を黒瀬川構造体と呼んだり、ジュラ紀付加体も含めて位置関係だけから秩父帯南帯、中帯、北帯と呼んだりと研究者によって区分が異なり混乱していた。さらに1990年代前半になると、四国においてジュラ紀付加体の上に蛇紋岩や変成岩からなる地層(いわゆる“黒瀬川帯”の構成岩類の一部)が低角な構造で覆っていることが提唱された[2][3]。「砥用」地域には、蛇紋岩や変成岩、シルル紀〜デボン紀の堆積物、ペルム紀〜白亜紀の浅海成の地層が広く分布し、また、ジュラ紀付加体も広く分布することから、これらの相互関係を広域的に検証し、ジュラ紀付加体とそれ以外の地層・岩石との区分を明確にし、日本列島の形成史の大きな問題点を広域に地質を検討することによって明らかにするという目標も設定した。この他にも、白亜紀の浅海成の地層の地質構造や、白亜紀の変成岩とその周囲との関係、白亜紀の高温型変成岩の形成史など、興味あるテーマが数多くあった。これらの課題を明らかにすることによって「砥用」図幅が、周囲を含めた広域的な地質を判別するための基準になることを目指した。3 地質図幅の社会的価値5万分の1地質図幅を初めとする地質図幅の社会的価値については、既に産総研でも論じられている[4]。また、米国地質調査所(USGS)でも地質図の社会的価値について論じられている[5][6]。地質図幅の場合、その用途は次のようなものである。1)土木、建設(道路、ダム、発電所、ビル、橋などの建設、住宅地の購入など)2)防災(活断層、火山噴火、河川の氾濫、地盤沈下、地すべり、軟弱地盤など)3)資源開発(石油、天然ガス、石炭などのエネルギー資源、地熱資源、温泉開発、地下水資源、金属、粘土などの鉱物資源、石材、骨材などの資源、観光資源など)4)地球環境対策(地下水の流動、放射性廃棄物・有害廃棄物の地層処分など)5)当該地域の形成史等の検討のための学術情報(日本列島の成り立ちの解明、地球環境の変遷の解明、シームレス(継ぎ目のない)地質図の編纂など)6)当該地域及び周辺地域の地質を検討する上での基準日本では1800年代後半から地質図が作成されてきたが、当初は国内資源の開発が主たる目的であった。1950〜60年代の高度成長期にはセメント向けの石灰岩の賦存地域が優先的に作られた。現在でも資源開発は骨材、温泉等で重要であるが、地質図幅の利用はそれ以外の多岐にわたる社会の基礎情報として使われるようになり、活断層や火山噴火等の災害の軽減や軟弱地盤対策、原子力発電所を初めとする産業立地、廃棄物の地層処分などの基礎的な情報として、多くの場合地質コンサルタントを経由して(地質コンサルタント会社が特定地域の地質を明らかにするときの基礎資料として)使われている。近年では一般の人々が訪れて興味ある地質を見学できるジオパークが全国的に指定されるようになり、その見学スポットであるジオサイトにおいて地質情報を観光資源に利用したり、企業の災害時の事業継続(Business Continuity Plan: BCP)の地質図幅・ 基本地質図・ テーマ図効率的なインフラ整備災害に強い産業立地効率的なインフラ整備安心で安全な社会企業・国・自治体土木・建設企業(農水省関連)土木・建設企業(国交省関連)地質コンサルタント電力会社国民・社会国民・社会企業・社会企業文化庁国・自治体保険会社販売・情報資源の安全確保国民の文化向上災害に強い安全な社会環境負荷の低減・廃棄物地層処理地の選定・工場、住宅の立地計画の策定・地すべり対策取水位置決定・農道の建設、農業用水の・道路敷設ルートの決定・ダム建設の地質情報・トンネルルート決定・電源立地・産業界作成 地質の信頼 性の根拠・対象地域の 地質の標準・資源開発(石灰石、砕石、天然ガス等)の基礎資料・天然物指定(地質・鉱物)・地震ハザードマップ・火山避難勧告・プラント立地の地震保険料率決定・住宅の地震保険料率の決定(期待)図2 地質図幅からアウトカム出現に至るプロセス[4]

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