Vol.2 No.4 2009
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研究論文:最先端の地質研究と国土の基礎情報(斎藤)−322−Synthesiology Vol.2 No.4(2009)幅が社会で活用されるための方策について考察する。2 「砥用」調査開始時の研究目標5万分の1地質図幅の作成は、最先端の地質学的知見を用いて野外調査を行って作成することから、個々の地層・岩石に対する研究において新たな知見を得ることを目的としている。それとは別にその地質図幅全体として広域的な地質を解明したり、当該地域周辺の地質図幅を作成する時の基準となることも目的とする。それとともに日本の国土全体の実体を解明するために重点地域を設定しながら、順次5万分の1の地質図幅を整備していくという計画が立てられている。個々の地層・岩石に対する新たな研究成果がなくとも、地質図幅としてその地域の地質の全体像を明らかにすることは重要な研究成果であり、またその結果を地質図幅として出版することには大きな社会的意義がある。本論文で例とした5万分の1地質図幅「砥用」は、九州中央部熊本県の五木の子守歌で知られる五木村より更に上流の平家の落人の村とされる泉村(現八代市)五家荘を含む山岳地域を対象としているため、現地調査に困難がともなう地域であるとともに、多種多様な地層・岩石が複雑に分布し地質の解明が困難な地域とされてきた(図1)。すなわちこの地域には、次のような特徴的な地層・岩石が存在する。1)海洋プレートの沈み込みに伴って海洋プレート上の地層・岩石が、大陸プレートの縁辺に付加されてできた付加体、2)古生代の岩石を含む蛇じゃもんがん紋岩類、3)高い温度や圧力を受けて元の岩石から変化した変成岩、4)SiO2に富むマグマが冷え固まった花崗岩、5)大陸棚でたまった地層、6)阿蘇火山の噴火による火砕流堆積物 など。これ以外の地層・岩石を含めると日本列島に露出する地層・岩石の種類のかなりの部分が、東西23.5 km、南北18.5 kmの地域(面積約435 km2)に分布し、極めて複雑な地質構造になっていることが予想された。このため、専門分野別に4名で研究グループを作り調査研究を行うこととし、それぞれが担当する地層で研究成果をあげることを目指した。この地域ではプレートテクトニクスの知見を導入した地質図はまだ作られていなかったことから、プレートテクトニクスに基づく地質図(例えば付加体を認定した地質図)を作ることを最低限の目標とした。また、西南日本外帯と呼ばれる九州から関東山地の太平洋側の地域では、ジュラ紀(2億年前〜1億4500万年前)に海洋プレートの沈み込みでできた付加体と蛇紋岩や変成岩、シルル紀〜デボン紀(4億4000万年〜3億6000万年前)の地層、ペルム紀〜白亜紀(3億年〜6500万年前)の浅海成(一部陸成層)の地層などが複雑に分布する部分5分の1地質図幅「砥用」20万分の1地質図幅「八代及び野母崎の一部」図1 5万分の1地質図幅「砥用」の位置とそれを基に作成中の20万分の1地質図幅「八代及び野母崎の一部」の位置。基図は100万分の1地質図第3版[1]。
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