Vol.2 No.4 2009
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研究論文:バイオ燃料を木材からナノテクで生産する(遠藤)−320−Synthesiology Vol.2 No.4(2009)ます。私の所属するバイオマス研究センターには経済性を専門に評価する研究チームがあります。このチームにおいて我々が実際に実験室で行った前処理プロセスと酵素糖化・発酵プロセスのデータを用いて、大規模商業化レベル(原料1,500トン/日)での経済性試算を行った結果では、従来最も低コストとされてきたNEDO濃硫酸法(他の方法は確度の高い経済性試算のデータが十分には公開されていません)よりも最終製品であるバイオエタノールを低価格化できる可能性が示されています。複合処理は多段処理であるため、設備はコスト高になるように思われますが、実際には濃硫酸法と同程度の設備償却費にすることができます。例えば、我々の前処理には水熱処理工程がありますが、温度は150 ℃(0.48 MPa)程度で十分であり、高圧ガス保安法の厳しい規制(1 MPa以上)も受けないため、実プラントを設備した際の維持管理も容易になります。今後、さらにプロセスを最適化すると共に、低コストで環境負荷が小さく、後段の糖化発酵等にも影響しない薬品等の使用による効率化についても検討する予定です。議論2 バイオマスの総合的な利用質問・コメント(水野 光一)本研究では木材を出発原料として、セルロースやヘミセルロースが酵素糖化を経てエタノールへの発酵が示される一方で、リグニンから高分子などの材料製造の道筋が示されました。これは、原油に代わるバイオマスリファイナリーの概念につながるものです。今後、バイオマスの利用を総合的に発展させるためには、どのような研究開発を進めることが最も有効であるかという考え方をお教えください。回答(遠藤 貴士)リグニンの利用技術については長い研究の歴史がありますが、決定的な技術や製品は未だに現れていません。しかし、本技術のようなバイオエタノール製造が商業化されると、従来の製紙プロセスとは異なる新しいリグニンが大量に生み出されることになります。現在の石油化学製品を見た場合、原油はアスファルトからガソリン、プラスチックまで無駄なく使用されています。これからのバイオマスリファイナリーにおいても、木材成分を無駄なく利用できる技術の開発やそれを受け入れられる社会システムの構築が大切だと思っています。それらを達成するためには、石油製品の代替ではない、バイオマス系のみで実現可能な特徴的な製品群の創成を目指すことも大切と思っています。そのためには、前処理により得られるセルロースナノファイバーや残渣リグニンの基本的な特性を機器分析等も駆使することによって正確に把握し、得られた知見や既に解明されている理論や原則に基づいて、革新的な製品化技術の確立を目指すことが重要だと思います。

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