Vol.2 No.4 2009
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研究論文:バイオ燃料を木材からナノテクで生産する(遠藤)−317−Synthesiology Vol.2 No.4(2009)処理とオートクレーブ処理を組み合わせた複合処理方法について検討した結果、粗粉砕した原料木粉を湿式カッターミル処理(1 mm以下)した後、オートクレーブ処理(135 ℃)を行い、最終段階としてディスクミル処理を行うことにより、樹種によらず効率的に前処理できることが分かった。3 mm以下に粗粉砕したユーカリ原料を複合処理した場合の糖化率は、原料としてより微細な0.25 mmの木粉をディスクミル単独で処理した場合と比較しても4倍以上になり、長時間の乾式ボールミル粉砕と同程度の糖化性を発揮させることができた(図8)。6.3 複合湿式メカノケミカル処理による酵素糖化性向上機構前述の複合湿式メカノケミカル処理で酵素糖化性が向上する機構は次のように考えられる(図9)。木材の細胞組織は20-500μmであるが、湿式カッターミルによる強いせん断力で木材組織は破壊され、タガに相当するミクロフィブリルも部分的に切断される。次いでオートクレーブ処理によりミクロフィブリル同士を接着しているヘミセルロースは部分的に加水分解(分解量は全ヘミセルロースの数%)される。オートクレーブ処理物を電子顕微鏡により高倍率で観察するとヘミセルロースが脱離したと考えられる数10 nmの細孔が多数観察された。これらのステップを経て木材組織は脆弱になっているため最終段階のディスクミルにより容易にミクロフィブリルにほぐすことができ、酵素糖化性も大きく向上したと考えられる。以上はセルロース成分の酵素糖化性向上機構を中心に述べたが、バイオエタノール製造では、発酵原料としての糖の収量を増大させるためヘミセルロースの糖化も重要である。木材組織中でヘミセルロースはセルロースミクロフィブリルの表面を覆うように存在しているため、我々が開発したミクロフィブリルをお互いに分離する前処理プロセスでは、セルロースとともに、ヘミセルロースの糖化も容易に進行する。また、我々の前処理では過激な化学反応は起こっていないため、前処理後でもリグニンは未処理の木材中での構造から大きく変化はしていない。酵素糖化後には、そのまま残渣として残ることになる。 7 メカノケミカル処理の利点7.1 酵素糖化の低コスト化前述のようにディスクミル処理は、処理効率が高く比較的低コスト処理ではあるが、単純な熱処理と比較するとモーター等の駆動電力は回収も再利用できないため、劇的酵素糖化時間 (時間)セールロース糖化率(%)0101030304050607080902002040未処理ユーカリ0.2 mmユーカリ0.25 mm,湿式ディスクミルユーカリ3 mm,湿式カッターミル+湿式ディスクミルユーカリ3 mm,オートクレーブ+湿式ディスクミルユーカリ3 mm,湿式カッターミル+オートクレーブ+湿式ディスクミルユーカリ0.2 mm, 乾式粉砕-4時間(比較例)酵素糖化サイズ1 m1 mm100 μm100 nm1 nmグルコース木材組織セルロース分子原料目標木材繊維セルロースミクロフィブリル一次壁細胞間層二次壁S3層S2層S1層20~500 μm0.5 nm2~60 μmヘミセルロースリグニン~100 nm~10 μm~3~5 nm6本6本木材セルロースナノファイバー酵素が容易に接近・糖化進行ヘミセルロース等を部分的に除去接着剤の作用をしているミクロフィブリル層の破壊タガに相当する酵素処理の効率化粗粉砕ミクロフィブリルの分離湿式ディスクミル処理木質成分の部分的分解オートクレーブ処理水の浸透性向上木質組織の破壊湿式カッターミル処理300 nm図8 複合処理によるディスクミル処理の効率化図9 複合湿式メカノケミカル処理のサイズイメージ

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