Vol.2 No.4 2009
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研究論文:バイオ燃料を木材からナノテクで生産する(遠藤)−314−Synthesiology Vol.2 No.4(2009)用いて基盤的な実験を行い、生成物の物性と糖化性の関係について調べた[10]。まず、粗粉砕した広葉樹木粉(ユーカリ、<0.2 mm)を原料としてメカノケミカル処理を行った結果、原料木粉の微細化は進行したが1時間以上粉砕しても生成物の平均粒径は20μm程度から変化しなくなった。このことは、微細化と生成粒子の凝集による平衡値が20μm程度ということを示している。得られた生成物の酵素糖化性を調べたところ、未処理原料は0.2 mm以下の微細な粉末にもかかわらず、その糖化性は極めて低かった。しかし、メカノケミカル処理時間が長くなるのに従って糖化性は向上し、粒径の変化がなくなった1時間以降も処理時間とともに糖化性は向上した。4時間後では、その糖化性は原料と比較して20倍以上となった。針葉樹である米松についても同様の傾向であった。しかし、比較実験として精製木材パルプ (繊維状、幅20μm-長さ200μm程度)を原料としてメカノケミカル処理を行ったところ、結果には大きな違いがみられた。パルプの場合、未処理試料でも糖化性は高く、メカノケミカル処理の効果はわずかであった(図4)。これらのことから、試料サイズのみから酵素糖化性は評価できないことが分かった。次にX線回折によりセルロースの結晶性と糖化性との関連について調べた。その結果、木材の場合、メカノケミカル処理とともに結晶性は急激に低下したが、糖化性はゆるやかに上昇した。一方、パルプの場合、原料は高結晶性にもかかわらず糖化性は高く、木材と同様にメカノケミカル処理により結晶性は急激に低下したが、結晶性と糖化性との関連性は低かった(図5)。ユーカリなどの木材を原料として行ったメカノケミカル処理試験の結果は、従来からいわれているセルロースの非晶化が酵素糖化のために重要という認識と大きな矛盾はない。しかし、パルプを原料とした場合は、高結晶性試料でも高糖化性であり、矛盾している。メカノケミカル処理により非晶化したセルロースをさらに長時間処理すると、非晶にもかかわらず次第に酵素糖化性が低下してくる現象も従来から知られている。以上のことから、メカノケミカル処理による生成物の粒径やセルロースの結晶性のみからでは酵素糖化性を十分に説明できないことが示された。上記の実験では、メカノケミカル処理物の精製等は行わずに酵素糖化試験を行っているが、酵素糖化性は高い。つまり、酵素反応を阻害するといわれているリグニンなどの木材成分がそのまま残存した状態でも酵素糖化は進行している。さらに他の実験から、メカノケミカル処理後でもリグニン成分は未処理の木材中の構造と同様の高分子量体であることも分かった。また、固体NMR(核磁気共鳴)測定や赤外分光分析測定から、メカノケミカル処理では酸化などによる木材成分の変質もほとんど起こっていないことも確認された。4.2 高分子化学のテクニックを応用前述の実験結果は、従来技術の経験則である木材の微細化、セルロースの非晶化、リグニンの分離が木材の酵素糖化性を向上させるための重要ポイントではないということを示したものであることから、新しい視点からの解析が必要となった。酵素糖化時間 (時間)セールロース糖化率(%)精製木材パルプユーカリ0204002040010100304050607080902001030405060708020粉砕時間: 原料, 15分, 30分,1時間, 2時間, 3時間, 4時間粉砕時間 (時間)セールロース糖化率(%)セールロース結晶化率(%)精製木材パルプユーカリ0123401030405060702001030405060702001234010100304050607080902001030405060708020図4 粉砕時間による酵素糖化率の変化図5 結晶化度と酵素糖化率の関係
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