Vol.2 No.4 2009
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研究論文:バイオ燃料を木材からナノテクで生産する(遠藤)−313−Synthesiology Vol.2 No.4(2009)術として発展している。有機物についても、エステル化反応などの共有結合形成を起こすことができる。ただし、粉砕で起こる物質の変化には「しきい値」があり、化学反応を起こせるだけの粉砕エネルギーが印加されなければ、長時間粉砕しても微細化や複合化は進行しない。これまで述べてきたように、前処理方法の中でメカノケミカル処理は比較的単純な機械的処理であるが、古くからセルロース等の酵素糖化性を大きく向上できることが知られている[8]。そのポイントとしては、木材等を乾式でボールミルなどを用いて十分に粉砕し、微細な木粉を製造するとともにセルロースの結晶構造を破壊(非晶化)することが重要とされてきた。このようなメカノケミカル処理による糖化性向上機構についてサイズの観点から考えると次のようになる。セルラーゼによるセルロースの糖化反応は、長さ1 nm以下のグルコース同士の間の結合が、タンパク質であるセルラーゼの活性部位によって切断されることであるが、最初のステップとしてセルラーゼはセルロースに吸着する必要がある。つまり、セルロースの本質はミクロフィブリルであるため、セルラーゼは最初にミクロフィブリルに吸着することになる。セルラーゼは球に換算すれば5 nm程度であるが、乾式粉砕によって得られる木粉は遙かに大きい。一般的な乾式メカノケミカル処理で得られる木粉は、処理条件を最適化しても10μm程度であり、長時間処理してもサブミクロンあるいはナノサイズの木粉はほとんど生成しない[9]。この理由は、メカノケミカル処理により木材が微細になると同時に生成した粒子の凝集が起こるためであり、原料などによっては逆に粒子径が大きくなる場合もある。もう一つのサイズの観点としてセルロースの結晶性がある。その評価は粉末X線回折により行われる場合が多いが、前項2.1で述べたようにセルロースの結晶本体はミクロフィブリルであるため、セルロースの非晶化は、3~5 nm以下の領域での長さ1 nm以下の水素結合の乱れを見ているに過ぎない。セルロースの結晶から非晶への変化はセルラーゼのサイズから見ると、より小さい領域の変化である。セルロースの酵素糖化については、これまで多くの報告がなされているが、セルロースとセルラーゼのサイズ的観点からの反応機構については明確にされていなかった。図3に従来から行われている前処理技術のポイントをサイズの観点からまとめた。これまでの認識では、図に示すように数10μmレベルでの木材組織の破壊や繊維化、ヘミセルロースやリグニンの分解・除去による組成変化およびナノレベルでの結晶性の変化などが重要とされてきた。しかし、酵素糖化反応の最初の段階(セルラーゼのセルロースミクロフィブリルへの吸着)である数nmの領域での議論はほとんどなされておらず、ミクロフィブリルからの視点は希薄であった。以上のことから、メカノケミカル処理によって、木材の酵素糖化性が向上する要因について、ミクロフィブリルレベルからの解析を含めて種々の観点から詳細に分析すれば、最適な前処理技術を構築するための指針が得られると考えられた。4.1 古典技術の再検証 木材のメカノケミカル処理については遊星型ボールミルを古典的メカノケミカル処理サイズ1 m1 mm100 μm100 nm1 nmグルコース木材木材組織木粉の粒径セルロース分子原料視点が薄いミクロフィブリルのセルロースの結晶性酸糖化木質成分の分解・除去(組成変化)酸加水分解水熱糖化水熱処理木質成分の分解・除去(組成変化)酵素糖化蒸煮処理 、爆砕処理繊維化、木材成分の分解・除去(組成変化)酵素糖化酵素糖化目標木材繊維セルロースミクロフィブリル一次壁細胞間層二次壁S3層S2層S1層20~500 μm0.5 nm2~60 μmヘミセルロースリグニン~100 nm~10 μm~3~5 nm6本6本図3 酵素糖化のための前処理技術(従来技術)のサイズイメージ

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