Vol.2 No.4 2009
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研究論文:バイオ燃料を木材からナノテクで生産する(遠藤)−312−Synthesiology Vol.2 No.4(2009)受ける。実際の酵素糖化は、単一の酵素ではなくヘミセルロースの糖化酵素も含めた複数の酵素の混合系が用いられている。しかし、酵素糖化にも課題はある。酵素糖化反応は酸糖化と比べると極めて長時間を必要とする。また、セルラーゼは食品や繊維分野などで工業的にも利用されているが、現状はそれほど安価ではない。前述のようにセルロースの構造により酵素反応が影響を受け、大量の酵素を必要とする場合もある。3.2 酵素糖化のための前処理技術木材は未処理のままではほとんど酵素と反応しないため、酵素糖化を進行させるには、木材やセルロースの反応性を高める前処理が重要である。過去の研究開発などからまとめられた前処理の経験則は、木材の微細化による表面積増大、結晶性の高いセルロースの非晶化による反応性向上、酵素活性を阻害すると考えられる異質なリグニン成分の分解・除去が前処理のポイントとされてきた。これらに則った前処理技術としては、粉砕処理、蒸煮処理、爆砕処理などが知られている[3]が、いずれの方法も課題がある(図2下段の表)。粉砕処理では、ボールミルなどの粉砕機が用いられ、操作も単純で前処理物の酵素糖化性も高い。しかし、電力消費が大きく、また、多くの場合バッチ処理であるために処理効率が低くコスト高になる課題があった。蒸煮処理は、薬品と水を用いて木材中のリグニンやヘミセルロースを分解・除去する方法であり、製紙におけるパルプ化方法と類似である。処理物の糖化性は高いが、廃液処理や樹種への依存性が課題としてあった。爆砕処理は、原料を高温高圧の蒸気中に一定時間保持した後、一気に大気圧に開放して、蒸気の急激な体積増大により木材を繊維状にほぐす方法であるが、高耐圧の設備や熱回収、樹種への依存性が課題となっていた。近年は、100 ℃以上の加圧熱水を用いる水熱処理も注目されている。この方法は、加圧熱水の加水分解作用を利用しているが、200 ℃以上の高温では、酸糖化と同様の過分解が起こりやすい。そこで我々は、単純な操作であるが効果の高い粉砕処理について再実験を行い、木材化学やセルロース化学の観点から糖化性の向上機構について解析・評価を行った。さらに、得られた知見を基にして複数の技術を組み合わせることによって、最適な前処理技術の開発を目指した。4 メカノケミカル処理技術我々はこれまで、粉砕時の生成粒子の凝集を抑制(水素結合の形成抑制)してパルプ等のセルロース系物質を微粒子化する技術やパルプや木粉を樹脂と複合化する技術について研究開発を行ってきた[4]-[7]。粉砕処理により物質が微細になっていく過程では、かならず化学結合の切断などの反応が起こっている。また、粉砕時の圧力やせん断力は結合を形成させて新物質を合成することもできる。このように、粉砕処理は機械的処理で化学的反応を起こすことから、メカノケミカル処理ともいわれている。我々は水素結合や疎水結合(分子間力)等の弱い結合までを広く含めた結合の形成や切断をメカノケミカル処理と捉えている。メカノケミカル処理は、元々無機物や金属の複合化やアロイ化技×理論的に容易ではない×耐酸性設備×基質(セルロース等)の特性による影響大◎高収率各前処理の特徴過分解の発生樹種依存性 有高耐圧設備、熱回収樹種依存性 高薬品回収樹種依存性 有消費電力高課題使用媒体は水のみ単糖化も可能比較的単純処理パルプ化技術の応用単純処理樹種依存性 低利点中高~中高~中高糖化率水熱処理爆砕処理蒸煮処理粉砕処理前処理方法×長時間反応◎短時間反応◎副反応なし×副反応(過分解)の発生酵素により選択に加水分解酸触媒反応によりランダムに加水分解(リグニンは重縮合)・粉砕処理・蒸煮処理・爆砕処理・水熱処理前処理発酵糖化酵素糖化酸糖化バイオエタノール単糖類木材主要成分・セルロース・ヘミセルロース・リグニン図2 酸糖化法および酵素糖化法の特徴

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