Vol.2 No.4 2009
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研究論文:実時間全焦点顕微鏡の開発・製品化(大場)−265−Synthesiology Vol.2 No.4(2009)異なる焦点距離で何枚かの画像を取り、画像処理を使って製品検査しているという例が多く見受けられる。そこで我々は、この光学的なスケール効果による問題をバーチャルに軽減することを目的として、光学顕微鏡など倍率の高い光学システムにおける微細作業において、光学的なスケール効果を“実時間”で解決する新しい微細視覚システム「実時間全焦点顕微鏡」の構成を技術的課題とした[1]-[4]。2 紆余曲折の歴史ここでは、当初科学的な興味からスタートしたアイデアを、幾つかのFS(Feasibility Study)期を乗り越えて製品化した経緯を、順を追って紹介する。最初の新規性のあるアイデアは通常の論文に、製品となってからは製品紹介記事として幾つか公開してきたが、シンセシオロジーの論文としては、アイデア段階期から幾つかのFS期を乗り越え、製品化に至った過程を紹介したい。このFS期の過程においては、幾つかの構成要素の取捨選択、その構成要素に特化したアルゴリズム開発、さらにはそれを実現するためのパートナーとの出会いなど、構成学として記されている「戦略的深化・選択型構成法」とも言うべき手法に相当するものと、それとは言い難い“幸運な偶然”に大きく左右されてきたことも、敢えて書き加えたい。というのも、暗中模索しながら迷路を彷徨し、ゴールに到達した後で、ここが大きな分岐点であったと後付けで理由はつけられるものの、当の本人は彷徨っている最中は夢中で、恥ずかしながら決して戦略的な決定をしていたとは、当時を回想しても思えないためである。さらには、万が一この紆余曲折を理論づけしたとしても、次の暗中模索の機会では、そのシチュエーションなどが大きく異なり、その経験が生かされたと思うことが少なかったためである。そのため、この紆余曲折の歴史の部分(図2)は、論文の体裁にとらわれない、一つの製品化の過程を記した読み物として紹介させていただき、後述の節では、それぞれの期を技術的に紹介させていただきたい。(a)アイデア段階期人間が目で物を見る時、近い物体も遠い物体もピントが合っている様に感じる。これは目の焦点調整によるものである。それに対し、普通、カメラなどにおいてレンズを通して物を見るためには、レンズのピントを合わせる必要がある。オ-トフォ-カス・カメラは自動的にピントを合わせることができるが、あくまで一定の距離だけにピントを合わせることができるものである。微視的環境下において、倍率が低い場合の一眼レフカメラや実体顕微鏡などでは、絞りを絞ることで被写界深度を深くすることが可能であるが、光学原理から倍率が高くなると、全ての範囲をカバーすることは不可能になる。また、微視的物体の場合、被写界深度の深い画像では、物体の奥行き感は得られないという問題が生じる。そこで我々は被写界深度の浅いことを逆手にとって、微細環境下での作業効率を上げることを考えた。理論可変焦点レンズ焦点距離移動機構(市販品)高速撮像素子FPGALVDSビジョンチップ並列処理逐次処理アプリケーションの絞り込みアプリケーションの絞り込みアイデア段階期製品段階期第1次FS期第2次FS期第3次FS期(株)フォトロンとの出会いマイクロマシン展での(株)デンソーとの出会いデルフトハイテック(株)、川鉄テクノリサーチ(株)との出会い・デジカメ・眼鏡などを想定・顕微鏡に特化・工業用途・生物用途【高速化】・ビジョンチップ開発企業探し・ビジョンチップ→FPGA+LVDS【高精細化】・顕微鏡対応のアクチュエータ探し【ビジネス化】・販路の構築など(フォトロン(株))1つ目の難関2つ目の難関3つ目の難関情報的構成システム的構成構成品試作一号機試作二号機顕微鏡システム製品システム高速可変焦点機構高速度撮像機構・高速度画像処理演算回路高速通信19971998200020012003製品化第1種基礎研究第2種基礎研究図2 構成の紆余曲折
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