Vol.2 No.4 2009
46/92
研究論文:循環発展的なプロジェクト構造を生むバイオインフォマティクス戦略(諏訪ほか)−306−Synthesiology Vol.2 No.4(2009)基盤であるが、様々な研究機関に散在しているため利便性が低い。そこで各々のDBを一元的に管理する形で統合する体制作りが国として急速に進められている(例えば、文部科学省や経済産業省の統合DBプロジェクト等)。今後SEVENSもこの流れを意識して設計していく必要がある。すなわち恒久的な維持、管理を行うために更新を完全自動化し、なおかつデータの信頼度を高く保つ方策が必要である。6 議論6.1 研究シナリオ:循環発展的なプロジェクト構造前章までに、本プロジェクトの成果と今後の展開を示した。ライフサイエンス分野の研究の進展は早いので、遠い将来までの“正しい”研究シナリオを書くのは困難であるということを最初に述べたが、振り返ってみると実に効率よく研究が展開していったように思える。2000年からスタートしたプロジェクトは、まずGPCRの網羅的DBの開発から公開までが、最初の段階の本格研究になっている。しかしこの段階は、より大きな研究発展段階の、ホップ段階(第1種基礎研究)として繰り込まれており、これに続く段階として、第2種基礎研究的な共同研究、製品化研究的な共同研究が循環的に発展を続け、今日に至っている(図5(a))。なぜ直線的ではなく、このような発展形態になったのだろうか?次のような理由を考えている。まず、2章で示したとおりバイオインフォマティクス分野では成果に至るまでの時間が短いので、図5(a)の各研究段階は1~2年で決着がつく小プロジェクトに成り易い。それら小段階の研究方向性を小ベクトルと考えると、それらとライフサイエンス全体の方向性の合成ベクトルが全体のプロジェクトの方向を決めるといえる。このような方向の決定は段階ごとになされていく。次に、そもそもライフサイエンス分野の方向性が、飛躍的な技術発展に伴いながら循環発展的な動きをするのでその影響を受けて発展していくことになる。では、この小ベクトルを今日まで途絶えること無く進めてきた駆動力は何だったのだろうか?以下にその要素を示してみたが、これらが図5(b)のように働いて研究方向性が決まってきたと考えている。1)長期熟成のコア技術プロジェクトは8年以上が経過している。通常は5年程度が常識で、研究打ち切りを言われていてもおかしくはない。しかし私たちの場合、コア技術を長期熟成することで、研究のステージが次々と上がってきたことを伝えたい。循環発展的構造が途切れなかった最も本質的な要因は、遺伝子同定パイプラインや、DB、プログラムに対して粘り強く改良を積み重ねることでSEVENS自体が信頼され得るものになったことだと思っている。一旦、完成してしまうと論文を1本書くだけで、後はメンテナンスがなされないDBが多い中、何年経過しても時流に対応して更新し続けて残っていること自体がブランド力となり、共同研究が舞い込んでくるように思う。2)実験研究者との密な連携バイオインフォマティクス技術は大量のデータを短時間で図5 循環的な発展をとげるプロジェクト構造の概念図 (a)プロジェクト開始時のGPCRの網羅的DBの開発から公開までが、小さな意味での本格研究だが、この段階はより大きな研究発展段階の第1種基礎研究的な段階(ホップ、再ホップ)として繰り込まれ、これに続き、第2種基礎研究的な共同研究(ステップ、再ステップ)、製品化研究的(ジャンプ、再ジャンプ)な共同研究が循環的に展開している。これは各ステップの共同研究の方向性と、自身が急速に進展するライフサイエンス分野の方向性の相互作用として発展し続ける形態である。(b)各ステップの共同研究の駆動力となる3要素の関係性。①長期熟成されたコア技術は、②技術インキュベーションを生む研究環境内で、さらに成長、熟成が進む。これをもとにバイオインフォマティクス研究者と実験研究者との③密な連携によるフィードバックがかかった回転運動が共同研究の方向ベクトルを決める。これはコマの回転が軸方向を決めるのに似ている。ライフサイエンス分野の方向再ジャンプ今後の研究展開ステップ2003年第1種基礎研究第2種基礎研究製品化研究GPCR網羅的DBSEVENS要素技術・各種、遺伝子同定・機能解析ツール・GPCR遺伝子特徴の知見・大規模計算機利用技術SEVENS Pipelineホップ2000年ジャンプ2004年再ホップ2006年再ステップ2007年コア技術の構築(a)研究の方向性バイオインフォマティクス研究者からのフィードバック実験研究者との密な連携長期熟成のコア技術実験研究者からのフィードバック技術インキュベーションの場(b)
元のページ