Vol.2 No.4 2009
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研究論文:騒音計測の信頼性をいかに確保するか(堀内)−294−Synthesiology Vol.2 No.4(2009)窓を用いて直接音のみを切り出した後、周波数領域に変換すれば反射音を含まないなめらかな周波数特性が得られる(図7に桃色で表示したグラフとなる)。信号処理技術を用いれば反射音をほぼ除去できるが、パルス波形の周波数帯域幅、反射音を切り出す時間窓の持続時間や中心位置、といった信号処理に用いるパラメータのわずかな違いによる影響は、信号処理にともなう不確かさとして評価した。5 計量標準供給制度による音響測定器のトレーサビリティ体系の整備1章で述べたように、騒音計の検定制度に基づく計量管理体制とは異なる音響標準の新たな供給体系が不可欠となった。新たな供給体系を構築するため、計量法の計量標準供給制度(JCSS:Japan Calibration Service System)に則った[26]。具体的には、産総研が国家標準としてのマイクロホンを校正した場合の不確かさを評価し、それを用いて校正事業者の標準マイクロホンを校正する。校正事業者は後者を基準としてユーザーの音響測定器を校正することにより、国家標準へのトレーサビリティを確保する。体制の整備に当たっては、以下の点に留意した。・校正事業者の主体的な計量管理体制の構築を可能にした。産総研から標準マイクロホンの供給を直接受ける以外に、上位の校正事業者を介して国家標準にトレーサブルな音響測定器の供給を受けることも可能である。また校正事業者は、標準マイクロホン以外の音響測定器を日常の校正業務に用いる基準器として管理を行うことも可能である。・校正事業者が認定を受ける際に要件となる技術的な要求事項を随時見直すことにより、新しい技術の導入にも比較的迅速に対応できる体制とした。・検定では騒音計の試験周波数範囲は20 Hz~12.5 kHzに限られていたが、計量標準供給制度では、可聴周波数範囲(20 Hz~20 kHz)全てで音響測定器の性能を担保することとした。・校正事業者には、トレーサビリティ体系の担い手としてふさわしい技術力を備えていることを要求する。現在登録されている校正事業者は、騒音計の指定検定機関、あるいは指定製造事業者として長年の実績がある。6 測定能力の妥当性検証6.1 国家標準の国際的同等性の検証1999年に計量標準の国際相互承認協定が結ばれ、我が国も署名した[27]。この協定では各国の国家計量標準研究所が、互いの開発した国家計量標準の同等性を認め合い、各々が発行する校正証明書を相互に承認しようとするものである。署名国の研究所は自らの測定能力を客観的に示すため、国際的に共通のルールであるISO/IEC 17025[28]を満足する品質システム用語7を構築し、かつ国際比較(いわゆる持ち回り試験)に参加して測定能力を証明することが求められるようになった。産総研は、自らが開発した音響標準について品質システムを構築し、独立行政法人製品評価技術基盤機構の実施するASNITE-NMI(国家計量標準研究所認定サブプログラム)によって、規格適合性の審査を受け2003年1月に認定を取得した。国際比較については、国際度量衡委員会音響・超音波・振動諮問委員会(CCAUV ; Consultative Committee for Acoustics, Ultrasound and Vibration)が標準マイクロホンに関する4つの国際比較を計画し、産総研はそれら全てに参加した。Ⅰ形およびⅡ形標準マイクロホンの音圧感度の国際比較はすでに終了したが、主要研究所の宣言する不確かさ(95 %信頼区間)は主要周波数範囲で0.03~0.05 dBの範囲にあり、産総研も同様の不確かさである[29][30]。また測定結果に関しては、産総研の校正値は他研究所とも不確かさの範囲内で一致しており、国家標準の同等性を実証できた。音響・超音波・振動諮問委員会が行う国際比較に参加できる機関の数は10前後に限定されており、世界中の国立標準研究所を網羅できない。このため世界をいくつかの地域に分割して、地域ごとに同種の国際比較が行われた。我が国が属するアジア太平洋地域(APMP ; Asia Pacific Metrology Programme)内では、Ⅰ形標準マイクロホンの音圧感度の国際比較が最初に行われたが、産総研が幹事研究所を務め国際比較のプロトコルの策定、仲介器(標準マイクロホン)の安定性の確認、校正結果の分析、ならびに対応する音響・超音波・振動諮問委員会の国際比較の結果とのリンク方法の開発を行った[31]。Ⅰ形標準マイクロホンの音圧感度の国際比較の結果を図8に示す。図8は、全ての参加研究所の測定結果が、各研究所が宣言する不確かさの範囲内で一致していることを示しており、このデータをもとにして参加各国の音響標準が相互に同等であることが確認された。6.2 校正事業者の測定能力の検証産総研は、ISO/IEC 17025に規定された技術的要求事項を音響精密計測に適用するための指針[32]の策定を技術的にサポートしており、校正事業者はこれをもとに品質システムを整備している。また校正事業者の測定能力を担保するために技能試験が実施され、産総研は判定の基準となる参照値を提供している。製品評価技術基盤機構による

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