Vol.2 No.4 2009
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研究論文:騒音計測の信頼性をいかに確保するか(堀内)−293−Synthesiology Vol.2 No.4(2009)に変動するため、それが校正の不確かさの要因になる。一方、並置法では両マイクロホンを並べて配置し、同時に音場に曝す。両マイクロホンの出力電圧比をとれば音圧変動の影響はキャンセルされるため、スピーカーの不安定性の問題はなくなり、測定時間も半分で済む。しかし二つのマイクロホンが音場内の異なる位置にセットされるため、音圧分布の影響や他方のマイクロホンの存在によって音場が乱される影響が生じ、後述の音場に関係する不確かさが増大してしまう不都合がある。置換法の問題点である発生音圧の変動は、変動をモニタするための第三のマイクロホンをスピーカーの前面に設置して補正することで解決できる。モニタ用マイクロホン導入のメリットを生かして、本研究では不確かさの評価がより確実に行える置換法を採用した。図6に置換法による計測用マイクロホンの二次校正法の概念図を示す。4.3 反射音の影響の可視化反射音は直接音とは異なるパスを経由してマイクロホンに到達し、干渉するので、周波数によって音圧に強弱が生じる。このためマイクロホンに反射音が作用すると、直接音だけであればなめらかであるはずの周波数特性に、細かな波打ちが現れるようになる。反射音の影響の大きさはスピーカーとマイクロホン、反射物体の相対的な位置関係に依存し、マイクロホンに一番近い物体からの反射音が支配的になる。基準マイクロホンと被校正マイクロホンの感度比を測定すると、マイクロホンの形状や設置位置のわずかな差によっても反射音の影響は異なるため、例えば図7のようになる。波打ちの振幅は反射音の存在による不確かさに相当し、また波打ちの周波数間隔は反射物体とマイクロホンの距離に対応する。感度比の周波数特性を調べることで、影響の大きな反射物体を特定し反射音の低減対策を行うことが可能になる。従来は、周波数軸上において測定周波数の近傍で感度比を平均化し、反射音の影響を低減させる方法が用いられる場合もあったが、校正値、不確かさのどちらの観点からも適切な方法とはいえなかった。4.4 反射音の影響の低減-吸音材の適用-反射物体の周囲に吸音材を取り付けることにより、簡便に反射音を低減した。基準マイクロホンと被校正マイクロホンの型式が同じであれば、吸音材によって反射音を効果的に低減できたが、型式が違うと吸音材の効果は限定的であった。4.5 反射音の影響の低減-信号処理技術の適用-反射音が直接音よりも時間的に遅れてマイクロホンに到達することを利用して反射音を時間軸上で分離・除去できれば、反射音による不確かさを低減できる。しかし持続時間の短いパルス波形を用いたのでは、波形の性質上、測定周波数以外にもエネルギーが分散されてしまうため、十分なS/Nの確保が難しいという問題があった。そこで本研究では十分なS/Nを確保できる連続波形を用いた測定結果から、計算機シミュレーションによってパルス信号を入力したときに得られるはずの時間応答を求めるという仮想パルス法を考案した[25]。仮想パルス法は、FFTアナライザによるデジタル信号処理の導入によって実現可能となった技術である。仮想パルス法では、図7の青色のグラフで表される伝達特性をもった系に、仮想的なパルス信号を加えたときの時間応答を計算する。得られたパルス応答波形から、時間スピーカースピーカーの出力変動モニタ用マイクロホンマイクロホン 支持棒網床吸音くさび基準または被校正マイクロホン 051015200.00.51.01.5周波数 (kHz)感度比 (dB)図6 置換法による計測用マイクロホンの二次校正法の概念図無響室の内壁(図では測定系を囲む太枠)には、音の反射を防ぐために多数の吸音くさびを取り付けてある。しかし高性能な無響室であっても、全く反射音のない空間を実現することは極めて難しく、後述するように基準または被校正マイクロホンに一番近い物体からの反射音の影響が支配的になる。本測定系では、マイクロホン支持棒の垂直部分の上端(斜線で表示)からの反射音の影響が支配的である。図7 基準マイクロホンと被校正マイクロホンの感度比の周波数特性青色のグラフにおける、縦軸方向の細かな波打ちが反射音の影響を表す。桃色のグラフは後述する計算機処理によって反射音を除去したものであり、なめらかな周波数特性になっている。

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