Vol.2 No.4 2009
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シンセシオロジー 研究論文−288−Synthesiology Vol.2 No.4 pp.288-298(Nov. 2009)1 はじめに我々は日常、何らかの音に曝されて生活している。会話の妨げになる音、不快さをもたらす音は騒音とみなされる。騒音は、睡眠の妨害や作業効率の低下をはじめ様々な形で我々の日常生活に悪影響を及ぼし、場合によっては聴力損失という重大な健康被害を招く。我が国の環境基本法では、国民の健康かつ文化的な生活の確保と、人類の福祉への貢献を目的とし、環境保全の基本理念と、その実現に必要な施策が定められている。騒音は、大気汚染などとともに取り組むべき公害の一つに挙げられ、環境騒音の規制や基準値が定められている。騒音規制法では特定の工場や建設機械、自動車から出される騒音が規制の対象となっている。また道路交通騒音、航空機騒音、新幹線騒音については、政府の達成目標値である環境基準が定められている。環境騒音の観点から我々の日常生活の安全・安心を維持するために、産総研に求められてきたことは環境騒音の計測における信頼性の確保であり、そのために必要な技術的課題の解決である。音を物理現象として捉えると、音波とは音源の振動によって周囲の媒質(空気)が振動し、その振動が空間的に伝播していく現象のことである[1]。振動の伝播に伴なって媒質の密度は時間的・空間的に変化し、圧力変化をもたらす。音波の発生による、静圧からの圧力変化を音圧という。音圧は音に関する主要な物理量であり、音圧の計測が音響分野での計測の基本になっている[2]。多くの場合、音圧の大きさは音圧レベル用語1で表され、音圧レベルの単位はデシベル、記号はdBである。人間の聴覚は周波数特性をもつため、音圧レベルが同じであっても周波数(音の高さ)が違えば違う大きさの音に聞こえる。聴覚の特性を模した周波数重み付け特性をA特性といい、A特性で補正した音圧レベルをA特性音圧レベル、あるいは一般に騒音レベルという。騒音レベルの単位も音圧レベルと同じデシベルである(騒音レベルの単位として従来はホンも使われていたが、現在は国際的にデシベルに統一されている)。騒音レベルは環境騒音や機器から発生する騒音の評価に用いられる[3]。堀内 竜三騒音計測をはじめ音響分野での計測結果に対する信頼性を確保するため、産総研は必要となる要素技術を開発し、我が国の計量法に基づいて標準マイクロホンを頂点としたトレーサビリティ体系を整備した。この体系のもとで、新たな音の標準の供給サービスを開始したことにより、我々の日常生活の安全・安心を支えるために社会が必要としている、不確かさの小さな騒音計測が可能となった。騒音計測の信頼性をいかに確保するか− 音の標準の開発と新しい供給体制 −Ryuzo HoriuchiHow the reliable environmental noise measurement is ensured- Development of acoustic standards and a new calibration service system -To ensure the reliable results in acoustic measurement such as environmental noise measurement, NMIJ/AIST has developed essential calibration techniques and established a traceability system based on the Japanese Measurement Law with acoustic standards at the highest level of accuracy. A new calibration service for reliable acoustic measurements under this system realized a minimum uncertainty in the environmental noise measurements, indispensable to sustain high quality of our daily life.キーワード:騒音計測、標準マイクロホン、音圧感度、カプラ校正法、計測用マイクロホン、騒音計、自由音場感度、無響室Keywords:Environmental noise measurement, laboratory standard microphone, pressure sensitivity, coupler reciprocity method, measurement microphone, sound level meter, free-field sensitivity, anechoic chamber産業技術総合研究所 計測標準研究部門 〒305-8563 つくば市梅園1-1-1 中央第3National Metrology Institute of Japan, AIST Tsukuba Central 3, 1-1-1 Umezono, Tsukuba 305-8563, Japan Original manuscript received June 18, 2009, Revisions received September 24, 2009, Accepted September 25, 2009

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