Vol.2 No.4 2009
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研究論文:誰でも作れて携行できる長さの国家標準器(石川)−287−Synthesiology Vol.2 No.4(2009)不確かさを軽減するためには、レーザチューブ放電管の幾何形状を厳密に製作する必要があり、そのようなレーザチューブは現実的には入手不可能です。ヨウ素純度の影響に関しては、ヨウ素セル充填プロセスの改良により、ビート周波数計測不確かさについても計測技術の改良により小さくすることができました。議論5 校正事業者が持っている標準器の精度質問(小野 晃) 国内数社の校正事業者がそれぞれの標準器としてヨウ素安定化ヘリウムネオンレーザを保有しているとのことですが、それらは定期的な校正のために産総研に持ち込まれると思います。そのときに産総研の国家標準器と波長(周波数)を比較して、差はどの程度ありましたか。それは新型レーザに対して評価した不確かさの範囲内に入っていましたか、あるいは中にはそれを超えるようなものもありましたか。回答(石川 純)新型レーザは全て産総研で、筆者の技術指導のもと組立調整を行いました。したがって、出荷時には特定標準器との周波数差は5 kHz以下を確認しています。また、光学窓の汚れなどにより発振が止まった場合を除いて、ほぼ初期性能を維持していることを再校正時に確認しています。表a 国際度量衡委員会が勧告するヨウ素安定化ヘリウムネオンレーザ不確かさ表b 新型ヨウ素安定化ヘリウムネオンレーザ不確かさ合成標準不確かさ10.05.0ビート周波数計測不確かさ5.0<1.0 kHz/mW10 mW共振器内一方向光強度-10 kHz/MHz周波数変調深さ 3.05.0ヨウ素純度の影響3.0-15 kHz/℃0.2℃15 ℃コールドフィンガー温度2.50.5 kHz/℃5 ℃25 ℃壁面温度ヨウ素セル関連不確かさ(kHz)比例係数推奨値パラメータ許容範囲6 MHz0.3 MHz5 mW6.3合成標準不確かさ5.0ガスレンズ効果・ガスプリズム効果0.0ビート周波数計測不確かさ2.0<1.0 kHz/mW10 mW共振器内一方向光強度-10 kHz/MHz周波数変調深さ 2.02.0ヨウ素純度の影響1.5-15 kHz/℃0.1℃15 ℃コールドフィンガー温度1.00.5 kHz/℃2 ℃23 ℃壁面温度ヨウ素セル関連不確かさ(kHz)比例係数推奨値パラメータ許容範囲6 MHz0.2MHz2 mW議論6 海外の研究者のその後の展開質問(小野 晃) ニュージーランドの研究者は著者に対してアイディアを顕在化させる貴重なきっかけを与えてくれたと思います。その研究者はその後どのような研究の展開をたどったのでしょうか。差し支えない範囲でお答えいただければと思います。回答(石川 純)その後、ニュージーランドの行政改革により多くの研究所が縮小・統廃合され、その際にDr. Hurstも民間企業に転出したと後任の方から聞きました。ニュージーランドのヨウ素安定化ヘリウムネオンレーザも、現在はアメリカの製品を利用していてDr. Hurstが国際比較に用いたレーザは使われることなく、研究室の片隅に置かれているという少し寂しい話でした。議論7 海外の国立標準研究所が行った製品化研究の事例質問・コメント(小野 晃) 著者が今回行った国家標準器の汎用化の研究は製品化研究と解釈できることはすでに述べたところです。産総研の計量標準グループの中でも製品化を明確に意識して研究に取り組む例は従来あまり多くなかったように思いますが、校正事業者を巻き込んだトレーサビリティの中流域においては「遠隔校正」などすでにいくつか研究が行われており、製品化研究の重要性はより強く認識されているように見えます。世界的に見て、著者の知る限りで結構ですので、ニュージーランド以外に今回のような製品化研究を国立標準研究所が行った事例はあるでしょうか。回答(石川 純)ヨウ素安定化ヘリウムネオンレーザ製品化の試みはごく初期の段階(1980年頃)から行われていましたが、研究所の研究開発品を基にして、メーカーでほぼそのままコピーし製品化するというものでした。その結果、価格、大きさ、操作性に問題があり、製品としての完成度は高くありませんでした。ニュージーランドのレーザは、研究者が国際比較に使用するという目的で、ユーザーの立場で開発したものであり、当時としては突出した携行性・操作性を有するものでした。実際にニュージーランドのレーザが製品化されることはありませんでしたが、ユーザーの立場で汎用化の研究を進めるというプロセスは、製品化を成功させるために不可欠であると思います。ヨウ素安定化ヘリウムネオンレーザといったような特定目的の機器について、ユーザーの立場での汎用化研究を進めた例はあまり知りませんが、より一般的な機器類(ミラーホルダー等)では、国立標準研究所の開発品を基に製品化を実現し、従来のメーカー製品を超える優れた性能を有するものが存在します。

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