Vol.2 No.4 2009
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研究論文:誰でも作れて携行できる長さの国家標準器(石川)−286−Synthesiology Vol.2 No.4(2009)執筆者略歴石川 純(いしかわ じゅん)1982年東京工業大学大学院総合理工学研究科修士課程修了。1983年通商産業省工業技術院計量研究所入所。精密干渉計開発の研究に従事し、波長基準光源としてのヨウ素安定化ヘリウムネオンレーザに接する。2001年産業技術総合研究所計測標準研究部門。2006年デジタルものづくり研究センターに異動、以後製造現場における熟練技能可視化の研究に携わる。現在、同センター計測分析技術研究チーム長。2006年市村学術賞((財)新技術開発財団)。2007年文部科学大臣表彰。査読者との議論 議論1 研究目標とシナリオの追記コメント(小野 晃:産業技術総合研究所) シンセシオロジー誌としては「研究の目標」と「目標の達成のためのシナリオ」を追加して書いていただきたく思います。回答(石川 純)ご指摘のとおりと考え、「研究の目標」と「目標の達成のためのシ時間を忘れて作業に没頭した。筆者は、研修を終えた参加者が、自ら組立調整を行ったヨウ素安定化ヘリウムネオンレーザを持ち帰る際に「このレーザは単なるモノであって標準ではありません。標準とは、あなたの身につけた技術と、標準を維持するという意志に他なりません」と伝えている。注1)現在の長さの国際単位はメートルであり、光が真空中を1/299 792 458秒間に進む距離を1メートルとしている。注2)現在の長さの一次標準としては、ヨウ素分子の特定の吸収線に発振周波数(波長)を安定化したヘリウムネオンレーザが多用されており、その周波数ν=473 612 353 604 kHzが勧告されている。波長λは光速度c(299 792 458 m/s)をνで割ることにより算出される。λ = c/ν。参考文献R. B. Hurst, N. Brown, V. D. Dandawate, G. R. Hanes, J. Helmcke, H. P. Layer, L. Zhongyou, W. R. C. Rowley, T. Sakurai and M. S. Chung: International intercomparison of iodine-stabilized helium-neon lasers at 633 nm involving ten standards laboratories, Metrologia, 24 (1), 39-44 (1987).T. J. Quinn: Practical realization of the definition of the metre, including recommended radiations of other optical frequency standards (2001), Metrologia, 40 (2), 103-133 (2003).石川 純: 633 nmレーザ波長校正と不確かさ, 産総研計量標準報告, 4 (1), 71-77 (2005).ボールスプラインシリーズ(カタログ), THK株式会社, 東京(2008).https://tech.thk.com/upload/catalog_claim/pdf/381_ballspline.pdfTHK総合カタログ, A8,B8, THK株式会社, 東京 (2008).石川 純: CIPM勧告準拠633nmヨウ素安定化ヘリウムネオンレーザの設計と製作, 産総研計量標準モノグラフ, 2 (2003).[1][2][3][4][5][6]ナリオ」について新しい章を追加・記載しました。ただ、本研究は当初シナリオ(計画)なしに開始したという経緯があり、これに関しては事実に沿って当時の状況を率直に記載しました。議論2 文献の「産総研計量標準モノグラフ」の活用質問・コメント(小野 晃) 文献6は本技術の普及という意味では大変重要なものと思います。とかくオリジナルな技術のさわりだけを研究論文に記載しておしまいとする傾向が強い中で、機器を再現的に製作するための必要かつ十分な情報をすべて開示するということは、今までなかったように思います。文献6を書くことになった著者の動機と、それの活用方法はどのようなものでしょうか。回答(石川 純)人工物であるメートル原器とは異なり、ヨウ素分子の量子力学的性質を利用するレーザ波長標準において、その本質は、量子力学的性質から光波長を取り出すプロセスの技術に存在します。したがって、標準の維持・継承とは技術の維持・継承に他なりません。産総研計量標準モノグラフは、ヨウ素安定化ヘリウムネオンレーザに関する技術の維持・継承を目的に執筆しました。本論文においても、上記の考え方を反映するように改訂しました。議論3 標準器の質量と大きさ質問(小野 晃) 国家標準器を航空機内に持ち込んで移送できるということは、国際比較をスムーズに行うために極めて有効と思いますが、開発した新型レーザの質量、大きさはどの程度ですか。これは航空機の客室に持ち込める重さ、大きさとして十分なものですか。 回答(石川 純)レーザ本体は、長さ:420 mm、幅:105 mm、高さ:95 mm、重量:5.3 kgです。制御装置は、奥行:400 mm、幅:420mm、高さ:100 mm、重量:7.5 kgです。航空機に搭乗する場合は、レーザ本体は手荷物としてキャビンに持ち込み、制御装置は預け荷物としました。小型軽量化のみに注力すれば、より小さく軽いレーザは実現できますが、製造・組立・調整等の容易性に重点を置き、この大きさに留めました。現時点における航空機内持ち込み最大の障害は、9.11以降大幅に強化された機内持ち込みの規制です。波長安定化レーザという一般になじみのない特殊機器のため、その説明には大変苦労します。議論4 発振波長の不確かさ質問(小野 晃) 新型レーザの発振波長の不確かさはどの程度と評価していますか。それは国際度量衡委員会が勧告した不確かさの値よりも小さいのではないかと想像しますが、どうでしょうか。可能であれば不確かさの要因とともに、バジェット表で示していただけませんか。回答(石川 純)表aに国際度量衡委員会が勧告したヨウ素安定化ヘリウムネオンレーザ不確かさのバジェット表を示します。筆者は、表に示された不確かさのうち、共振器内一方向光強度に起因する不確かさ見積は大きすぎると考えています。しかしこれは、制御機構の直進性に問題のある従来のヨウ素安定化ヘリウムネオンレーザでは、分離して評価することも難しかったガスレンズ効果・ガスプリズム効果の影響を含めたものであると筆者は考えています。国際度量衡局で長年ヨウ素安定化ヘリウムネオンレーザの研究に携わってきた研究者も、そのことを認めていました。新型レーザは制御機構の直進性が非常に優れているため、ガスレンズ効果・ガスプリズム効果の分離が可能であり、不確かさバジェットは表bのようになります。ガスレンズ効果・ガスプリズム効果による

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