Vol.2 No.4 2009
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研究論文:誰でも作れて携行できる長さの国家標準器(石川)−284−Synthesiology Vol.2 No.4(2009)し、高調波歪の低減と動作安定性の向上を図った変調用アクチュエータである。図12の変調用アクチュエータと大きく異なる点は、真鍮の固定台の質量である。この真鍮の固定台の質量はおよそ200 gであり、平面鏡とその保持具をあわせた振動部質量4 gのおよそ50倍である。この大きな質量比により、リング状ピエゾ素子が高速で伸縮しても平面鏡/平面鏡保持具のみが動き、真鍮の固定台はほとんど動かない。真鍮固定台・リング状ピエゾ素子・平面鏡保持具・平面鏡の間の接触面の仕上げには特に留意し、仕上げはとも擦り研磨を行って接触面積を増大させ、高調波歪を低減させた。さらに、組立前に真鍮固定台にリング状ピエゾ素子・平面鏡保持具を乗せる。接触面にアルコールを垂らしてから真鍮固定台を逆さにして、リング状ピエゾ素子・平面鏡保持具が貼り付いて落下しないことで、良好な平面接触を確認した。平面鏡保持具は、リン青銅の薄肉円筒バネと真鍮丸ナットにより予圧が与えられ、リング状ピエゾ素子、真鍮固定台に密着させた。真鍮固定台とリン青銅薄肉円筒バネ・真鍮丸ナットはナイロンインシュレータにより電気的に絶縁した。ピエゾアクチュエータの駆動電圧は、真鍮丸ナット(+)と真鍮固定台(G)間に印加した。ナイロンインシュレータは、設計時には電気的絶縁を目的としていたが、それ以外にも重要な働きのあることが明らかとなった。ナイロンインシュレータに替わる絶縁部品として、絶縁アルマイトコーティングしたアルミインシュレータを試用したときに、絶縁機能には問題はないが変調機構の動作が不安定になった(著しい振幅の経時変化が起きた)。原因は、平面鏡保持具の振動がリン青銅薄肉円筒バネ、非線形性の強いねじ接触を経て真鍮丸ナットに伝わり、複雑に共振したことにある。柔らかいナイロンインシュレータはダンパーとして働き、この共振を大幅に低減する重要な機能を担っていることが判明した。5.3 防振機構先に述べたように、ヨウ素安定化ヘリウムネオンレーザの安定動作を実現するためには、外部環境の振動・音響によるレーザ共振器長変動を、原子の直径(0.3 nm)以下に抑えなければならない。また、防振機構の開発の前提として、このような共振器長の微少な変動を検知・評価する手法の確立も必要である。以下に、共振器長の微少変動、および防振機構について簡潔に紹介する。発振波長の安定化のためにレーザ出力光の強度変動を検出しているが、これを増幅してスピーカーに接続する。すると周波数f(3 kHz)の波長変調(光の周波数換算で6 MHz)がもたらす強度変化が音として聞こえる。これは波長変調による波長の変化を、レーザ波長−出力曲線I(λ)で強度変化に変換して音として聞いているのであるが、同様に、外部振動による共振器長変動も波長変動をもたらし、それを音として聞くことができる。音の振幅は波長変化、すなわち共振器長の変化に比例するので、外部振動による音を波長変調による音の振幅の1/10(強度では1/100、−20 dB)に抑制できれば、ヨウ素安定化ヘリウムネオンレーザの安定動作が実現できる。ハニカム構造の光学定盤上(表面は厚さ5 mmのステンレス板)にヨウ素安定化ヘリウムネオンレーザの金属筐体を直に置き、定盤を貨幣等で引っかく・軽くたたくなどしたときにスピーカーから聞こえる音は、ちょうど人間が耳を定盤に押し当てたときに聞こえる音と類似している。防振ゴム等の性能評価を行うために、厚さ1 cmのアルミニウム板(レーザ筐体の底板と同等)を用意した。この板を定盤上に置き、耳を押し当てながら定盤を引っかく・軽くたたくなどしたときの音の聞こえを確認した。次に、評価対象の防振ゴムを金属板の下に置き、音がどの程度低減したかを確認した。新型のヨウ素安定化ヘリウムネオンレーザの箱形筐体の底面には、この簡単な試験で音の遮蔽に優れた効果を示した直径14 mmの半球型ポリウレタン製のゴム足を3個配置した(図14)。筐体に直置にすると定盤上で光軸調整等の操作を行うと振動の影響で波長安定化のロックが外れ1: 薄肉円筒バネ2: ミラーホルダー3: リング状ピエゾ素子4: 真鍮固定台5: ナイロンインシュレータ6: 真鍮丸ナット123456ポリウレタンゴム足図14 サブナノメータ防振機構(ゴム足)図13 変調用アクチュエータ(改良後、低高調波歪構造)

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