Vol.2 No.4 2009
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研究論文:誰でも作れて携行できる長さの国家標準器(石川)−282−Synthesiology Vol.2 No.4(2009)対する剛性は、明らかに不足していることが分かった。無限ストロークの転がり機構では、ボールは循環する。本体・スプライン軸の間隔は仕様によればボール径より小さい(−6~−2 μm)ので、ボールがこの隙間に進入すると大きな抵抗力が発生し、スムーズな動きを妨げることが考えられた。しかしボールスプラインではボールの出入に伴う抵抗力変化はほとんど検知されない。つまり、両端付近ではボール進入時の抵抗力発生を防ぐために間隔が広げてあって、実際に予圧がかかっているのは中央部に限定されるものと推測される。その結果シフトに対する剛性は確保できてもティルトに対する剛性は不十分となる。メーカーの説明でも、モーメントのかかる場所では、2個直列に使用することが推奨されている。5.1.2 クロスローラガイドよる直進移動機構有限移動距離転がり機構では、支点位置の移動に伴う姿勢変化が避けられないことは先に述べた。この姿勢変化は、原理的にストローク全域にわたり徐々に進行していくものと考えられる。一方でレーザの波長安定化に必要な移動量は、熱膨張によるレーザ共振器長の伸縮を補正することが目的なので、高々0.05 mm程度である。これは代表的な有限移動距離転がり機構であるクロスローラガイド[5]、その小型のものに対しても、最大ストロークの1/100以下である。クロスローラガイドのストローク全域での姿勢変化は、ヨウ素安定化ヘリウムネオンレーザ用直進機構に要求される性能を満足しないとしても、1/100ストロークの移動量に対する姿勢変化は十分に小さいのではないか、ということが期待できる。さらに、有限移動距離転がり機構では、回転体のガイド間への出入りがないので、無限移動距離転がり機構のようにガイド両端で間隔を広げる必要はない。したがって、ティルトに対する高剛性を有することも期待できる。共振器長制御の直進移動機構の使用条件・必要とされる性能と、その条件で使用したときの直進移動機構の性能を熟慮した結果、クロスローラガイドが最適なメカニズムとして浮上してきた。クロスローラガイドの形状は移動ステージに適しており、円筒形状メカニズムへの対応は難しい。クロスローラガイドの採用に伴い、レーザ共振器構造を端板とロッドといった従来の構造から図10に示したような板状の部材を組み合わせた箱状筐体へと大幅に変更した。さらに、平面鏡の移動量制御と直進性保持を別機構に分離したという特徴を活かし、図11に示したようにリニアピエゾアクチュエータをスーパーインバーロッドに固定し、さらにスーパーインバーロッドの反対側を、他方の平面鏡面の位置で箱形筐体に固定するという構造を考案した。この構造により、共振器長はピエゾアクチュエータとスーパーインバーロッドで決定されるので、箱形筐体板材の熱膨張を考慮する必要はなくなり、アルミニウムの採用が可能となった。アルミニウムは熱膨張率が大きいので、従来レーザ共振器筐体に用いられることはなかった。しかし熱伝導率も高いので、温度勾配に起因する熱歪みは発生しにくいという優れた特徴を持つ。スーパーインバーロッドと比較するとアルミニウムの熱膨張係数は50倍にもなるが、熱伝導係数も20倍近くあるので熱歪みの影響は3倍以内に収まると考えた。クロスローラガイド、アルミニウム箱形筐体、リニアピエゾアクチュエータ+スーパーインバーロッドによる共振器長の制御機構を有する新型レーザは、平面鏡の角度変化が極めて少なく、経時変化・環境依存性の小さい安定動作を実現した。現在、日本の国家標準器として保有している5台のレーザ(本新型レーザ)では適切な調整を行うことにより、それぞれの間での発振波長の差が光の周波数換算で±3 kHzと、国際度量衡委員会の勧告の不確かさ±10 kHzの1/3に収まっている。また周囲温度の変化に対しても安定性が高く、25±5 ℃という大幅な温度変動に対してレーザミラー端面位置クロスローラーガイドスーパーインバーロッド図11 共振器長の制御機構図10 ヨウ素安定化ヘリウムネオンレーザの箱形共振器機構(新型)

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