Vol.2 No.4 2009
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研究論文:誰でも作れて携行できる長さの国家標準器(石川)−279−Synthesiology Vol.2 No.4(2009)発振波長はI (λ)のピークの位置に留まる。しかし、ヨウ素安定化ヘリウムネオンレーザでは、ヨウ素分子の飽和吸収による小突起はレーザ出力曲線I(λ)の上に重畳して存在するので、ベースラインの傾斜の影響が避けられない。この影響を除去し純粋にヨウ素分子の飽和吸収の中心を検出するために、実際には3次微分検出が行われる。3次微分の信号I’’’(λ)は、位相敏感検出の復調参照信号に変調信号(周波数f )の3倍波(周波数3f )を用いることで得られる。レーザ出力曲線は飽和吸収による小突起と比較して遙かになだらかなので、3次微分によりその影響は十分除去される。図5はオシロスコープで観察したヨウ素安定化ヘリウムネオンレーザの出力の、ヨウ素分子吸収成分付近の3次微分信号I’’’(λ)である。この3次微分信号がゼロになるように発振波長が制御され、安定化される。レーザの波長λは、先に述べたようにモードホップが発生しない範囲では光共振器長Lに比例する。したがって発振波長λを制御や変調のために変化させるためには、Lを変化させればよい。例えば3次微分信号検出のための変調として、発振波長λには光の周波数に換算して6 MHz p-pの変調が掛けられる。Lが0.3 mの場合、6 MHzの変調に対応するLの変化は3.8 nmである。つまり平面鏡の片方を光軸方向に振幅3.8 nmで振動させれば、3次微分検出に必要なλの変調が実現できることになる。また、発振波長の制御に用いる3次微分信号(図5)の幅は、光の周波数に換算して5 MHz程度である。振動や衝撃などにより発振波長の変調範囲がこの幅を超えると制御は不能となる(これを周波数ロックが外れるという)。レーザの波長安定化をうまく行うためには、Lの変動をこの幅の1/10程度、すなわち500 kHz程度に抑えることが必要である。500 kHzのレーザ周波数変動に相当する共振器長Lの変動は0.32 nmである。これは原子の直径に相当する長さである。ヨウ素安定化ヘリウムネオンレーザを安定に動作させるためには、振動による平面鏡の間隔の変動を原子の直径程度に抑えるという難しい技術が必要になる。図6は筆者が最初に使用したヨウ素安定化ヘリウムネオンレーザの共振器の機構である。平面鏡の1枚はそのままの状態で、もう片方はリング状の積層ピエゾアクチュエータに取り付けた状態で、それぞれ精密な角度調整機構付の端板で保持される。2枚の端板は熱膨張がゼロに近い4本のスーパーインバー製のスペーサロッドで向かい合わせに固定される。共振器の中にはレーザチューブとヨウ素セルをセットし、実際のオペレーションに際しては、防音ケースをかぶせ空気バネで支えた防振定盤上に設置することにより、振動の影響を上記の500 kHzの条件内に抑えた。図6において積層リングピエゾアクチュエータは1個であるが、変調信号と制御信号の両方をこのピエゾアクチュエータに印加し、変調と制御を同時に行った。4 目標達成のための道筋ヨウ素安定化ヘリウムネオンレーザの各機構に要求される性能・特性には、前章で述べたようにかなり特殊なものが多い。特殊な要求に対しては、汎用部品を普通に使用したのでは対応できない。特殊な性能・特性を、汎用部品を用いて実現するためには新しい特殊な使用法を考案・採用することが必要となる。特殊な使用法といっても、危険を伴うもの、寿命の著しい短縮を伴うものなど無理のあるものは採用できない。つまり、今まで使われたことのない利用法で理にかなったもの、さらに必要とされる性能・特性を実現できるものを考案・実現することにより、汎用部品の採用範囲を広げることができる。一例として、制御装置の新しいバイアス調整回路につい××I (λ)λI'I'''0ff3fx3f図4 飽和吸収によるレーザ出力I(λ)上の小突起とその1次微分I’および3次微分I’’’の 信号図5 オシロスコープで観察した実際の3次微分信号スーパーインバーロッド (4本)リング状積層ピエゾアクチュエータ角度調整機構付端板角度調整機構付端板図6 ヨウ素安定化ヘリウムネオンレーザの共振器機構(従来型)

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