Vol.2 No.3 2009
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研究論文:活断層からの地震発生予測(吉岡)−199−Synthesiology Vol.2 No.3(2009)執筆者略歴吉岡 敏和(よしおか としかず)1986年東京都立大学大学院理学研究科地理学専攻修士課程修了。同年、通商産業省工業技術院地質調査所入所。1995年博士 (理学)(神戸大学)取得。2001年独立行政法人産業技術総合研究所活断層研究センター主任研究員、2002年から活断層情報研究チーム長、2004年からは活断層調査研究チーム長となる。自ら活断層の地形・地質学的調査の現場に立つとともに、その調査結果から将来の地震発生を予測する研究に一貫して取り組んでいる。2005年には「全国主要活断層活動確率地図」を筆頭著者として執筆・出版した。査読者との議論 議論1 本格研究としての位置付けと「構成学」を意識した記述について質問・コメント(持丸 正明:産総研デジタルヒューマン研究センター)本格研究としての位置付けが「1研究の目的と背景」に明瞭に記載されています。地形学・地質学としての活断層研究が第1種基礎研究であり、それに続いて地震予知としての活断層研究が第2種基礎研究。そこに「カスケード地震モデル」を適用して活断層を活動セグメントに分けたことが、一つのブレイクスルーとなり、近畿地方を例に検証したというあたりまでが第2種基礎研究と考えられそうです。そして、全国規模で調査を実施しそれを出版・公表することで社会につなげたことが製品化研究と位置付けられるということと理解しました。ただし、Synthesiologyという学術誌としては、「どういう社会を実現したいか」という研究者としての夢を掲げ、それを具現化するために、基礎研究を実用につなげた手段を「どうして選んだのか」、また選ばれた手段は目標を達成するに「有効であったか」を、是非とも科学的に記述していただきたいと思います。たくさんの本格研究事例を集めることで「構成学」をつくっていくのがSynthesiology誌の狙いです。それにはただ集めるだけでなく、個々の論文が「構成学」を意識して書かれている必要があります。質問・コメント(富樫 茂子:産総研評価部)活断層の地質学的研究に基づき、第2種基礎研究として地震活動確率予測を実施し、地震災害の軽減に資する成果を公表して社会に貢献することにより、本格研究を実践しており、Synthesiology掲載論文として推薦できます。ただし、内容については以下の議論2にSeismic hazards in southern California: probable earthquakes, 1994 to 2024, Bull. Seism. Soc. Amer., 85, 379-439 (1995).J. P. McCalpin: Application of paleoseismic data to seismic hazard assessment and neotectonic research, McCalpin ed. Paleoseismoligy, Academic Press, 439-493 (1996).粟田泰夫:日本の地震断層におけるセグメント構造とカスケード地震モデル(試案),平成10年度活断層・古地震研究調査概要報告書,地質調査所速報,EQ/99/3,275-284 (1999).地質調査所活断層研究グループ:近畿三角地帯における活断層調査−主要活断層の活動履歴と地震危険度−,第四紀研究,39,289-301 (2000).吉岡敏和,粟田泰夫,下川浩一,杉山雄一,伏島祐一郎:全国主要活断層活動確率地図,産総研地質調査総合センター (2005).Y. Kase and S. M. Day: Spontaneous rupture processes on a bending fault, Geophysical Research Letters, 33, L10302 (2006).[5][6][7][8][9]指摘するように説明不十分な点やSynthesiologyとしての観点から追加すべき点があります。また、当初論文に記述されていた活断層、断層、起震断層など言葉の定義を記述してください。回答(吉岡 敏和)本文冒頭に、地震防災における本研究の意義に関する記述を加えました。また、末尾に以下のように、筆者としての考え方を記述しました。「活断層の活動予測をできるだけ正確に、かつ、網羅的に社会に提示し、地震に対する備えとして活用してもらえる知的基盤を整備することが、筆者の社会的責務であると考えている。十分な正確さで、完全に網羅的な情報を提示することがいきなり実現できるわけではないが、全国規模での調査結果の出版はその第一歩として意義のあるものだと考えている。この研究手段が有効であったかどうかについては、今後、この研究成果に対して社会がどう動いたかによって、評価されていくと考える。」また、「活断層」という用語は一般的にも使用される用語のため、定義は人や場面によって異なることもありますので、定義を明確にして追加しました。当初記述されていた起震断層等の表現は用語の混乱をさけるために削除しました。議論2 研究手段の選択とその有効性検証質問・コメント(持丸 正明)研究手段の選択とその有効性検証を、できるだけ科学的に記述してください。この論文で構成学的に重要なポイントは2点あると思います。第一は、カスケード地震モデルの適用、第二は全国規模での調査と出版です。たとえば、最初のカスケード地震モデルですが、なぜ、このモデルを適用しようと考えたのか、他の選択肢はなかったのか、というあたりが構成論的に重要なポイントです。当然、そのカスケード地震モデルを適用したことの検証も重要です。同様に、全国調査と出版という手段を選択した理由、ほかに方法はなかったか、近畿圏を全国に拡げたことで社会的にどういう効果を期待し、その結果はどうだったか、また、学術的な副産物はあったのか、委員会を構成しコンセンサスをとることよりも一研究所としてのデータにこだわったのはなぜか、そのような手段はどういう「いいこと」をもたらしたか、などなど。そして、はじめに掲げた目標(夢)がどこまで達成できたのか、どういう限界があり、それにどう立ち向かっていくのか、をまとめて頂ければよいと思います。質問・コメント(富樫 茂子) カスケード地震モデルについて、原理を簡潔に記載し、カスケード地震モデルを選択した理由や、数値シミュレーションへの展開の実際、他のモデルとの関係を具体的に記述してください。予測の限界に関しては、現状では、他のモデルによる予測の精度が、社会の要請に追いついてきていないのは事実ですが、長期的にみれば、地震のメカニズムにまで迫った研究は、予測精度を高めるためには必須です。これらのモデルとの関係を客観的に述べてください。一方、地震災害の軽減による社会への貢献に関する課題としては、著者らが行ってきた「全国主要活断層活動確率地図」の発行のように、予測信頼性の低い場合も含めて単純で汎用性のあるモデルによる結果を提起していくことは今後も非常に有効な考え方だと思います。その有効性検証として、社会での反響をより明示的に示すべきです。回答(吉岡 敏和)カスケード地震モデルでは、複数の活動セグメントの連動性について固有の規則性は問いません。全くランダムに連動することもあり得ます。ただ、連動には何らかの要因があると考え、数値シミュレーション等で検討しています。説明を追記しました。動的破壊の数値シミュレーションについては、活断層・地震研究センターとして、さまざまな断層形状を想定した動的破壊シミュレーションにより複数の断層破壊の連動性を検討しています。ただし、本論
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