Vol.2 No.3 2009
7/74
研究論文:活断層からの地震発生予測(吉岡)−197−Synthesiology Vol.2 No.3(2009)のモデルの適用が必要不可欠であった。そこで、著者が中心となって「全国主要活断層活動確率地図」[8]の作成作業を開始することになった。まず、活動セグメントの区分の基準を図4のようにまとめ、これにしたがって全国の活断層分布図を基に活動セグメントの区分作業を行った。また、全国の活断層をカバーするとなると、当然のことながら、多くの調査がなされデータの充足度の高い活断層と、ほとんど具体的なデータが得られていない活断層が混在することになる。この地図では、このような場合にも全国統一的な値を得ることを重視し、全くデータが得られていない場合でも、原則として「不明」とはせず、暫定値、経験値などを使って何らかの評価値を求めるという方針で、全国をカバーすることを優先させて作業を進めることで、本格研究における「製品化」を目指した。評価の対象とした活断層は、全国の長さ20 km以上の活断層で、区分した活動セグメントの数は547にのぼる。このうち、長さ10 km以上で一定以上の活動度を持つ295の活動セグメントについて、既存データ等に基づいて平均変位速度や1回の地震時のずれの量、過去の活動時期などのパラメータを推定し、将来の活動確率を計算した。そして、この活動確率の値によって色分けした活動セグメント位置を日本地図上に図示した(図5)。この「全国主要活断層活動確率地図」は2005年9月に産総研地質調査総合センターより、無事出版に至った。この地図により、全国に分布する活断層について、地域によるデータの粗密に起因する信頼度の差はあるものの、全国統一的な基準による比較が可能となった。全国統一的な基準での比較が可能になったことにより、たとえば損保業界や広域インフラ関係におけるリスク評価などへの活用が進展してきており、個々の活動セグメントの評価基準を明示したことで、たとえば異なる基準での評価が必要なユーザーにも対応可能とした。この評価は、当然のことながら、一研究機関が一つの研究成果として作成したもので、製品としては一つのプロトタイプである。したがって、委員会の合議によって判断された一つの公式見解である政府の地震調査研究推進本部の長期評価とは、明らかに性格を異にするものである。結果として示された数値についても大きく異なっている場合もあり、一部には社会の混乱を懸念する声も聞かれた。また、暫定値や経験則を用いて推定した数値に基づく結果であることから、個々のデータを重視する研究者(特に地形・地質分野の研究者)からは、データが不十分な活断層まで無理に評価すべきでないという意見も多く聞かれた。136°E35°N136°E050 km凡例BPT分布モデルによる今後30年以内の活動確率(色による区分)0.3 %以上、3 %未満0.03 %以上、3 %未満0.03 %未満3 %以上不明平均活動間隔(太さによる区分)3,000年以下3,001-10,000年10,001年以上更新世後期以降に活動がみられない活動セグメント活動確率算定対象外の活動セグメント図5 全国主要活断層活動確率地図[8](近畿地方の拡大図部分) 数字は活動セグメント番号を示す。
元のページ