Vol.2 No.3 2009
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−252−Synthesiology Vol.2 No.3(2009)報告:学問と技術の統合- 横幹連合・統数研・産総研合同ワークショップ -定もできます。近くにビジネス街があれば曜日によって、あるいは天気によって売上げが変わるだろうという店長の勘もパラメータの導入で数値的に出すことができます。普通、雨が降るとレストランの売上げは減りそうですが、レストランがビジネス街のビルに直結していると、雨の日にはわざわざ外に出ないでランチを食べたいという人がいますからかえって売上げが伸びる、そういう結果が得られます。ただし、予測能力が上がるといっても、外れる場合もなくはありません。近くに有名人が来てお客の流れが変わったとか、試食コーナーや弁当販売のあるイベントが開かれてランチを食べに来る人がいなかったとか。もう1つ売上げに関連するのはマーケティング関係のコーザルデータのうち、セールスやチラシなど自らの意思で行える意思決定情報です。店内に商品を大量陳列したかどうか、書籍なら平積みしたのか、チラシを配ったのか、いろいろあります。スーパーマーケットで出口近くに商品がいっぱい並べてあると何となく安いように思ってつい買ってしまう、そんな効果が明らかにあります。実際に店に行って調べなくても、過去のやり方や周りのデータを総合的にみて、自分が持っていない情報を推論し、そして戦略を立てる。逆に言えば、価格と売上げのデータから、店がどんな販売方法をとったかを統計的に推測できます。さて、天気予報や地球科学の分野でデータ同化という手法が使われています。データ同化とはシミュレーションとデータ解析をつなぐ技術で、ベイズモデルの枠組みでやれば自然な循環構造が達成できます。例えば、生命体データ同化というプロジェクトでは多様なタンパク質や発現のデータと生命のいろいろなレベルでのシミュレーションとをベイズモデルで統合します。さらに、それらを全部ベイズの統計モデルで書き下していますので、幾つものシミュレーションモデルが考えられる中で、どれが良さそうかを最尤法で評価・選択できます。他に、物理の分野で使われるシミュレーションで、境界条件がよくわからないが、だいたいこの辺かといったデータ自体の不確実性を推察することもデータ同化から行うことができます。データ同化はベイズモデルに則っていますから循環構造があり、データ取得、パラメータ推定、モデルの作り直し、新しい実験計画の立案、仮説の提示、データの再取得と先へ進められます。とにかく循環が重要です。知識の循環やモデルの改良についてお話してきましたが、最後に個別科学での人材養成がとても重要であることを指摘しておきます。専門が1つのT型、2つあるπ型、横向きのπ型と幾つかあります。雇用という観点からも人材養成は大事で、受益者・生活者の視点と目線を持ち、そして現場に興味ある人材ならば産業界にとっても魅力的ではないでしょうか。絶え間ないイノベーションとデータ価値創造知識発展のスパイラル知識発展のスパイラル既存の知識直感やセレンディピティ研究の種類研究実績実験・観測計画調査法データ設計知識発見制御シュミレーション既存のモデルを利用した分析統計モデルの開発学習検証予測満足感研究開発環境研究開発環境既存の知見リスク解析研究開発環境研究開発環境
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