Vol.2 No.3 2009
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研究論文:活断層からの地震発生予測(吉岡)−196−Synthesiology Vol.2 No.3(2009)異なることが判明してきた[2][3]。つまり、過去のある時期においては、温見断層と根尾谷断層、根尾谷断層と梅原断層は同時に動かなかったことがわかってきたのである。ここで一つの問題が生じる。地震のたびに断層が破壊する範囲(すなわち断層の長さ)が異なるのであれば、断層の長さとずれの量は比例するので、ある地点でのずれの量は毎回大きく異なるということになる。さらに、断層の平均的なずれの速度(平均変位速度)は長期間にわたりほぼ一定と考えられるので、仮に毎回のずれの量が大きく異なるのであれば、それに伴い断層の活動間隔(地震の発生間隔)も毎回異ならなければならない。ところが、先に述べたように地形学的、地質学的な研究からは、ある地点に限れば過去の毎回のずれの量は大きくは変化しないという結果が得られている。また、もし仮に毎回の地震のたびに断層のずれの量と活動間隔が異なるとすると、最初に述べた活断層の活動の周期性の本質そのものが覆されることになり、将来の地震発生予測が困難となってしまう。このことを矛盾なく合理的に説明するモデルとして、著者らはカスケード地震モデルに着目した。このモデルは、長さ数百キロメートル以上という長大な活断層での地震発生モデルとして、米国カリフォルニア州の活断層で採用されたものである[4]。連続する長大な活断層を固有のずれ量と活動間隔を持つ複数の活動セグメント[5]に分割し、それらのセグメントが固有の繰り返しを保ちながら、あるときは隣接するセグメントと連動し、活動するというモデルである。カスケード地震モデルの最大の特長は、大規模な断層活動を活動セグメントの連動と捉えることで、断層活動の範囲値に関係なく、活動セグメントの長さを固定できることである。そうすることにより、断層長と地震時の変位量、地震規模の比例関係を保ったままで、ある地点での地震時変位量を一定にすることができ、ある地点での断層活動の繰り返しをきわめて単純に説明できる。したがって、現時点では地形学的、地質学的な研究結果を適用して予測を実現するための最も現実的なモデルとして、カスケード地震モデルを採用することにした。カスケード地震モデルの模式的な図を図3に示す。従来、活断層は地理的な分布形状から特に基準もないままに「○○断層」という名称が与えられ、区分されてきた。ただし、この名称が与えられた範囲が必ずしも次回の地震を発生させるとは限らないため、断層の長さから地震規模を推定することもできない。そこで、これらの活断層を従来の断層名にとらわれることなく、過去の活動履歴や分布形状などの一定の基準で、地震を発生させる「単位」としての活動セグメントに区分(ここではA〜Dに4区分)する。そして、それらが単独で、あるいは隣接するものが連動することにより地震を発生させると考えることにより、個別の断層(活動セグメント)の長さとその連動性から地震の規模を予測することができるということである。このモデルを日本の小規模で複雑な活断層に適用するため、まず過去に活動した記録のある地震断層のデータを整理し、活動セグメント区分の基準と地震規模との関係についての試案をとりまとめた[6]。そして近畿地方を例に、活動セグメント毎の将来の地震発生確率を試算し、公表した[7]。この試算結果はあくまで一つの研究結果に過ぎないが、あるモデルに基づく論理的推論によって得られた評価結果として意味づけられるものである。3 全国主要活断層活動確率地図の出版この研究をさらに発展させ、地震災害リスクの軽減のために実際に社会に活用するためには、全国的な規模でのこ活動セグメントABCDs : 分布間隙異なる活動履歴○○断層△△断層○○断層××断層2 km

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